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食道胃接合部がんについて
食道と胃のつなぎ目を食道胃接合部と呼びます。その位置はほぼ胸部と腹部の境である横隔膜の高さに一致します。食道胃接合部の食道側、胃側それぞれ2cm以内にがんの中心があるものを食道胃接合部がんといいます。食道胃接合部は、胸部と腹部の境界であり、手術方法の選択が難しいことが知られています。また食道胃接合部が切除されると、胃から食道への逆流防止機構である“噴門”が失われます。従って手術を行う際には、術後に逆流が起こらないような術式(逆流防止)を行う必要があり、一般的に手術は複雑で難易度が高く、縫合不全など合併症の発生率も普通の胃がん手術よりも高いとされています。そのため専門的な施設での治療が望ましいとされています。
手術の方法
手術方法は、腫瘍がどの程度、食道側に及んでいるかによって、お腹からのアプローチのみで行えるか、あるいは胸からのアプローチも併用しなければならないかが、ガイドラインで示されています。また同時に、食道が位置する縦隔にあるリンパ節をどこまで切除するかもガイドラインで示されています。また胃の切除範囲は、基本的には上部3分の1程度におさえる(噴門側胃切除)が推奨されていますが、がんが胃側にも大きく浸潤する場合は胃全摘が必要となる場合もあります。基本的にはこの指針によって術式が決定されますが、腫瘍のステージ、患者さんの体型、食道裂孔ヘルニアの有無(食道胃接合部の位置が頭側に移動する場合があります)などの要素も含めて総合的に判断されます。東病院胃外科では大部分の手術をロボット手術で行っており、胸からのアプローチが必要となる場合は食道外科と協力しながら手術を行っています。
食道側への浸潤が2cm以内の場合
お腹からのアプローチのみでの噴門側胃切除が基本となります。さらに食道を数cm切除する術式となります。再建方法はとうかでは、食道と残った胃を直接つなぎ、逆流しないような工夫を施した吻合法を行っています(噴門形成)。この吻合は奥まった部位での操作となり難易度が高いため、関節機能を有したロボット手術が有用であると考えられています。当院での標準的な手術時間は4時間半です。

食道側への浸潤が2.1cmから4.0cmの場合
食道をさらに数cm長めに切除する必要があるとともに、縦隔の下の方(下縦隔)にあるリンパ節も同時に切除します。お腹からのアプローチのみでの噴門側胃切除できれいに切除できる場合もありますが、状況によっては胸からのアプローチが必要となる場合もあります。これは胸から操作を行った方が、食道と残った胃を安全に吻合できると考えられた時に選択されます。一方で、胸からのアプローチを併用した場合は、手術時間は約7時間と長くなってしまい、体への負担はやや大きくなってしまいます。東病院胃外科では食道外科と協力し、胸からのアプローチの代用となる方法として、頸部から挿入する縦隔鏡を併用した手術も行っており、手術時間短縮や体への負担軽減に取り組んでいます。
食道側への浸潤が4.0cmを超える場合
縦隔のリンパ節を広い範囲で切除する必要があり(上中下縦隔リンパ節郭清)、食道の大部分を切除する必要があります。したがって、一般的な食道がんに対する手術とほぼ同様な術式となります。この術式の場合、東病院では食道外科が担当となります。
集学的治療(薬物を組み合わせた治療)
食道胃接合部がんは解剖的にも複雑な位置にあり、胸部と腹部の両方に進展する可能性があるため、より慎重な診断と治療方針の選択が必要となります。高度なリンパ節転移や浸潤が見られる場合は、より確実な治療を目指して術前化学療法を行う場合もあります。東病院では消化管内科と連携をとり、このような治療も多く行ってきました。
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