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十二指腸乳頭部(じゅうにしちょうにゅうとうぶ)がん

胆管と膵管が十二指腸につながる部位を「十二指腸乳頭部(にゅうとうぶ)」といいます。
この部位にできた「がん」が「十二指腸乳頭部がん」で「胆道がん」の1つに分類されます。その他の十二指腸内にできるがんは「十二指腸がん」になります。「十二指腸がん」についての治療法(縮小手術など)については「十二指腸の病気と治療について 」をご覧ください。
肝外胆管がんと同様に原因不明なことが多く、明らかな因果関係は報告されていません。

症状について   

早期がんの場合、全く無症状です。通常の胃カメラでは、食道、胃だけでなく十二指腸乳頭部まで観察しますので、検診の胃カメラで早期発見されることが多くあります。一方、進行がんとなると胆道を閉塞(へいそく)するため、採血による肝機能異常や黄疸(おうだん)で発見されるようになります。

診断について

十二指腸乳頭部がんは、胃カメラにより直接観察可能と言う最大の特徴があり、胃カメラが最も基本となる検査です。その他、CTMRI、超音波内視鏡などの精密検査などによって診断します。

治療について

第一選択の治療は切除です。切除が根治の可能性(がんが治る可能性のこと)のある唯一の治療法となります。

がんになる手前のポリープの状態で発見された場合、内視鏡で切除することがあります。

ごく初期の早期がんの場合、またお体の状態が十分でなく膵頭十二指腸切除術のような大きな手術が困難な場合には、小さな開腹創により十二指腸乳頭部のみを切除することがあります。

一方、ある程度進行した場合には、「膵頭十二指腸切除術」を行います。数週間の入院を要し患者さんの負担が大きな治療となりますが、手術で十二指腸乳頭部がんを取り除くことができれば、根治の可能性(がんが治る可能性のこと)が高くなります。一方、がんの進行度やお体の状態により手術が不可能と判断される場合は、全身化学療法(抗がん剤)を行います。

治療成績

手術後の経過について

手術当日は、集中治療室に入室します。術後1日目に水分、3日目にお食事を開始します。術後1日目から立つ練習、歩く練習を開始します。また、ドレーンという管がおなかの中に入っており、体内に残った出血や体液を体外に排出します。ドレーンの排液は、経過が良いか判断する重要な目安となります。経過が良い場合、ドレーンは3日から7日程度で抜去します。

術後入院期間は、膵頭十二指腸切除術で2週間程度です。

起こりうる術後合併症

胆汁漏(たんじゅうろう)

胆管と小腸を吻合した部位や、肝臓の切離面から胆汁が漏れることがあります。漏れた胆汁は手術の時に入れた管(ドレーン)により体外に排出され、また胆汁が漏れていた穴は時間とともに自然と閉鎖するため致命的となることはありませんが、胆汁漏が止まるまでドレーンを留置する必要があり入院期間が延長する原因となります。

膵液漏(すいえきろう)

膵臓と腸のつなぎ目から膵液が漏れることを膵液漏といいます。漏れた膵液は消化液や胆汁と混じることにより活性化され、周囲の組織を溶かしたり膿を作ったりして炎症を引き起こします。まれですが近くの動脈を溶かして出血を引き起こし(2パーセントから5パーセント)、生命にかかわる深刻な状況になることがあります。多くの場合、手術の時に入れた管(ドレーン)から漏れた膵液を回収することにより深刻な状況には至りませんが、膵液漏が収まるまで、ドレーン腔を洗浄したりしながら慎重に経過を見る必要があります。

腔内膿瘍(ふくくうないのうよう)

おなかの中に膿(うみ)がたまる状態です。敗血症につながることもある深刻な合併症です。腹水に細菌が感染したり、膵液漏や縫合不全から感染が広がったりして起こります。38度以上の発熱や痛みを伴うことがあります。抗生剤の投与や、手術の時に入れた管(ドレーン)から膿を排出して治療します。場合により膿を効率よく排出するために追加のドレーンを入れる処置を行います。

胆管炎

胆管内に腸内の細菌が入り込むことにより、胆管で起きる炎症のことです。膵頭十二指腸切除では胆管と腸を直接つなぎ合わせるので、術後は腸液が胆管内に逆流しやすくなります。便秘やおなかの中の炎症で腸液の逆流がしやすい時は胆管炎にかかりやすくなります。38度以上の発熱や右の脇腹の痛みを伴うことがあります。栄養状態が悪かったり、体調が悪い時は胆管炎から敗血症になることもありますので注意が必要です。抗生剤で治療しますが、胆汁の流れを良くする薬や便秘薬を併用します。

吻合部狭窄(ふんごうぶきょうさく)

胆管と小腸の吻合部が狭窄(狭くなりつまること)し、胆汁の流れが悪くなることがあります。黄疸(おうだん)が生じるような場合には、内視鏡的治療が必要になる可能性があります。

退院後の生活について

退院後は通常3か月毎に採血と造影CT検査を行い、再発やその他の不具合がないか確認します。再発予防のための抗がん剤投与をお勧めする場合があります。食生活は、脂肪分の消化吸収が弱くなり下痢を起こす可能性がありますので、下痢をする場合には脂肪分を減らします。アルコール摂取は肝臓の負担となりますので、控えた方が良いでしょう。

また、特に注意すべき点は胆管炎による発熱です。胆管炎を放置すると肝臓に膿(う)みがたまってしまい(肝膿瘍(のうよう)、と言います)ドレナージが必要となる可能性があります。発熱時は自己判断せずに担当医か、かかりつけ医にご相談いただくことが大事です。

受診をご希望の方へ

東病院肝胆膵外科への外来受診についてはこちらをご確認ください。

更新日:2021年10月26日