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国立がん研究センター 東病院

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肝細胞がん

目次

  1. 肝臓について
  2. 肝がんとは
  3. 病気の原因
  4. 症状
  5. 検査・診断
  6. 病期(ステージ)
  7. 治療
  8. 治験・臨床試験

肝臓について

肝臓はお腹の右上にあり、成人で800から1,200gと体内最大の臓器です(図1)。

肝臓の主な役割は、食事から吸収した栄養分を取り込んで体に必要な成分に変えることや、体内でつくられた有害物質や体外から摂取された有害物質を解毒し、排出することです。また、脂肪の消化を助ける胆汁もつくります。胆汁は、胆管を通して消化管に送られます。

 肝臓の図

肝がんとは

肝がんは大きく2つに分かれます。

  • 肝臓そのものから発症した「原発性肝がん」
  • 他の臓器のがんが肝臓に飛んできて腫瘍を形成する「転移性肝がん」

原発性肝がんは、肝臓の細胞ががん化した「肝細胞がん」と、肝臓の中を通る胆管ががん化した「肝内胆管がん」があり、治療法が異なることから区別されています。一般的には「肝がん」というと「肝細胞がん」のことを指します。

病気の原因

肝がんは日本でも多くの方が命を落としているがんのひとつです。国立がん研究センターがん対策情報センターの2020年度のがん死亡予測でも年間約2万5000人が肝がんで死亡していると考えられており、死亡数でも5番目に多いがんとなっています。

日本では基礎疾患としてウイルス性肝疾患が約90%を占め、中でもC型肝炎の感染者からの発生例が多くを占めていましたが、近年の抗ウイルス治療の普及や新規感染例の激減によりC型肝炎の感染者が減少し、肝細胞がんも減少傾向にあります。

肝炎ウイルス感染以外の要因としては、多量飲酒、喫煙、アフラトキシン(カビから発生する毒素の一種)、肥満、糖尿病などが知られています。また最近では、肝炎ウイルス感染を伴わない肝細胞がんが増加してきており、その主な要因として、メタボリック症候群の肝病変である「非アルコール性脂肪性肝障害」が注目されています。

症状

肝細胞がんは多くの場合自覚症状がなく、医療機関での定期的な検診や、ほかの病気の検査のときなどに、検査異常により発見されることも少なくありません。症状の出現は病状が進んでから認められることが多く、慢性肝炎・肝硬変に伴うものと肝細胞がんそのものによる症状があります。具体的には倦怠感、浮腫、腹水、黄疸(おうだん:皮膚や白眼が黄色くなること)、腹部圧迫感、疼痛(とうつう)などがいずれの場合にもみられます。また肝臓外に転移している場合、転移部位により症状の出方が異なります。

検査・診断

肝細胞がんの検査は、腹部超音波(エコー)検査や、CT検査、MRI検査の画像検査と、腫瘍マーカー検査を組み合わせて行います。

造影剤を用いたCT検査・MRI検査は、腫瘍部分が素早く白く染まり、その後造影剤が抜けて黒くなる特徴的な造影パターン(図2)を示すことから、多くが画像検査で診断可能です。しかし、画像検査のみでは肝細胞がんとその他のがん、悪性か良性かの区別が難しい場合、肝臓内の腫瘍に針を刺して細胞を採取する検査(針生検)を行うこともあります。

治療方針の検討には、血液検査で肝機能を調べたり、食道や胃の静脈瘤の有無を評価するために内視鏡検査を行ったりすることもあります。

図2. 造影CTとMRIでの造影パターン

(造影CT 左:造影早期、右:造影後期)
 造影1

(造影MRI 左;造影早期、右:造影後期)

 造影2

病期(ステージ)

肝細胞がんの病期は、がんの大きさや個数、がんが肝臓内にとどまっているか、ほかの臓器まで広がっているか(転移)によって決まります。病期の分類にはいくつかの種類があり、日本の「臨床・病理 原発性肝癌取扱い規約(日本肝癌研究会編)」(表1)、もしくは、国際的に使われている「TNM悪性腫瘍の分類(UICC)」(表2)が用いられています。分類法によって、同じステージでも内容が異なることもあるため、注意が必要です。

 肝細胞がんの病期分類の図

日本肝癌研究会編「臨床・病理 原発性肝癌取扱い規約 第6版(2015年)」(金原出版)より作成

 肝細胞がんの病期分類2の図

UICC日本委員会TNM委員会訳「TNM悪性腫瘍の分類 第8版 日本語版(2017年)」(金原出版)より作成

治療

肝細胞がんの多くが慢性肝炎・肝硬変を背景として発生するため、肝機能の状況(肝予備能)と腫瘍の状況の双方を踏まえて治療方法を選択します。治療選択は、一般社団法人日本肝臓学会(外部サイトにリンクします)の「肝癌診療ガイドライン」(図3)などが参考となります。

治療アルゴリズム

治療は、手術(肝切除)、穿刺(せんし)局所療法(ラジオ波焼灼療法・マイクロ波焼灼療法など)、肝動脈化学塞栓療法、薬物療法(分子標的薬治療)が中心となります。肝予備能やがんの進行具合により肝移植、放射線療法、肝動注化学療法が選択されることもあります。

当院では、肝胆膵内科だけでなく、手術経験が豊富な外科医(肝胆膵外科)、画像診断と血管造影・カテーテル治療を得意とする放射線診断科、定位放射線治療や陽子線治療に秀でた放射線治療科が、密に連携しカンファレンスを経て最適な治療法を提案しています。

手術

手術の適応は、肝予備能の評価が良好な場合、切除後に肝臓の量をどれだけ残せるかによって判断します。肝硬変が進行し肝機能が低下している場合には肝移植が勧められることもあり、日本では主に近親者から肝臓の一部を提供してもらう「生体肝移植」が行われています。

穿刺(せんし)局所療法(ラジオ波焼灼療法・マイクロ波焼灼療法など)

腹部超音波やCTなどの画像を見ながら体の外から直接腫瘍に特殊な針を刺し、局所的に治療を行う方法です。ラジオ波焼灼療法ではラジオ波、マイクロ波焼灼療法ではマイクロ波で熱を発生させ、腫瘍を熱凝固壊死させて治療を行います。

手術に比べて体への負担の少ないことが特徴です。肝予備能が比較的良好で、がんの大きさが3cm以下、かつ、3個以下の場合に行われることがあります。

 穿刺(せんし)局所療法の画像

肝動脈化学塞栓療法(かんどうみゃくかがくそくせんりょうほう)

血管造影に用いたカテーテルの先端を肝動脈まで進め、がんを栄養している動脈から抗がん剤を注入し、さらにその動脈を塞栓することで、がん細胞を壊死させる治療法です(TACE)。がんが肝内に多発し、手術や穿刺局所療法が困難な場合などが対象となります。

 肝動脈化学塞栓療法の画像

薬物療法

肝細胞がんの薬物療法では、腫瘍の血管新生注:1を抑える薬剤(分子標的薬)が中心となっています。

肝細胞がんに対してソラフェニブの有効性が示されて以降、同等な効果を有するレンバチニブ、またそれらの治療の効果が乏しくなった場合に、レゴラフェニブ、ラムシルマブ(腫瘍マーカーAFP値が400ng/ml以上)、カボザンチニブなどが有効性を示しており、広く用いられています。

また2019年には免疫療法(免疫チェックポイント阻害薬注:2)と分子標的薬の併用療法(アテゾリズマブ+ベバシズマブ療法)がソラフェニブより高い有効性を示したことが報告され、今では進行肝細胞がんの初回治療として使用されるようになっています(表3)。

対象は肝切除や肝移植、穿刺局所療法、肝動脈化学塞栓療法で効果が期待できない進行性の肝細胞がんで、全身状態と肝予備能がともに良好な患者さんになります。

注:1 がん細胞が自分の環境に必要な栄養や酸素を供給するために新たに血管を作ること
注:2 「免疫細胞であるリンパ球が活性化することを制御・抑制する仕組み」を抑えて、がん細胞に対してリンパ球が攻撃できるようにする薬剤のこと

表3. 各治療法の特徴

治療方法 治療ライン 適応 機序 スケジュール 参考文献

アテゾリズマブ
+ベバシズマブ

一次治療 切除不能な肝細胞癌 免疫チェックポイント阻害+血管新生阻害 アテゾリズマブ :1回1200mgを60分かけて点滴静注ベバシズマブ:1回15mg/kgを90分かけて点滴静注2回目以降は30分まで短縮可能3週間に1回投与 Finn RS, et al. N Engl J Med 2020
ソラフェニブ 一次治療 切除不能な肝細胞癌 血管新生阻害を含む複数チロシンキナーゼ阻害 1回400mgを1日2回連日経口投与 Llovet JM, et al. N Engl J Med 2008
レンバチニブ 一次治療 切除不能な肝細胞癌 血管新生阻害を含む複数チロシンキナーゼ阻害 体重60kg以上の場合は12mg、体重60kg未満の場合は8mgを1日1回連日経口投与 Kudo M, et al. Lancet 2018
レゴラフェニブ 二次治療以降 がん化学療法後に増悪した切除不能な肝細胞癌 血管新生阻害を含む複数チロシンキナーゼ阻害 1日1回160mgを食後に内服3週間連日経口投与しその後1週間休薬 Bruix J, et al. Lancet 2017
ラムシルマブ 二次治療以降 がん化学療法後に増悪した血清AFP値が400ng/mL以上の切除不能な肝細胞癌 血管新生阻害 8mg/kgを初回60分かけて点滴静注2回目以降は30分まで短縮可能2週間に1回投与 Zhu AX, et al. Lancet Oncol. 2019
カボザンチニブ 二次治療以降 がん化学療法後に増悪した切除不能な肝細胞癌 血管新生阻害を含む複数チロシンキナーゼ阻害 1日1回60mgを空腹時内服連日経口投与 Abou-Alfa GK, et al. N Engl J Med 2018

放射線療法

主に肝細胞がんは1ヶ所のみに発生し、手術や局所穿刺療法の効果が期待されますが、肝機能やがんのある場所などの理由でそれらが困難な場合に行われることがあります。重粒子線、陽子線といった粒子線治療や定位放射線治療の効果が高く、当院でも陽子線治療や定位放射線治療を実施しています。肝細胞がんが転移するなどして、症状がある場合にも症状の緩和を目的として放射線治療を行います。

治験・臨床試験

当院ではよりよい治療法の確立を目指して、積極的に治験・臨床試験を実施しています。参加可能な試験の有無については、担当医にご相談ください。