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帯状疱疹(たいじょうほうしん)について
帯状疱疹(たいじょうほうしん)とは?
水痘・帯状疱疹ウイルスというヘルペスウイルスに初めて感染した場合は水痘(みずぼうそう)となりますが、この感染によってウイルスが後根神経節(こうこんしんけいせつ)という部分に潜伏することが知られています。この潜伏しているウイルスが、ストレスや免疫力の低下した時に再度症状を引き起こすことを帯状疱疹と言います。多くの場合ピリピリするような痛みを伴う皮疹が出現し、帯状疱疹後神経痛という強い痛みが続く場合もあります。それだけでなく、帯状疱疹は心筋梗塞や脳卒中のリスクを増加させることも知られています(参考文献1)。
参考文献
帯状疱疹はがん患者でリスクが高い
米国の研究(2001-2005年)では一般の人々と比べて固形がん患者さんで1.9倍、血液がん患者さんで4.8倍帯状疱疹のリスクが高いことが示されています。また、帯状疱疹の診断から30日後の時点でも疼痛が固形がん患者さんの14.0%、血液がん患者さんの18.9%で見られ、90日後でもそれぞれ8.6%、5.7%に見られたことが報告されています(参考文献1)。イギリスの研究(2000-15年)では、がん患者さんは一般の人々と比べて帯状疱疹のリスクが高いことが示され(オッズ比1.29注)、中でも血液がん患者さんでは特に高く(オッズ比2.46)、このリスクは少なくとも2-3年以上持続することが示されました(参考文献2)。この報告の中では特に50-60歳もしくはそれよりも若い世代で健常人よりもリスクが高いことが示されています。参考文献
- Habel LAらの報告(Cancer Epidemiol Biomarkers Prev. 2013)(外部サイトにリンクします)
- Hansson Eらの報告(Br J Cancer. 2017)(外部サイトにリンクします)
注:オッズ比:がん患者さんが帯状疱疹にかかる確率を、帯状疱疹にかからない確率で割った値をオッズと呼びます。このオッズ(がん患者さんが帯状疱疹にかかるオッズ)を一般の人が帯状疱疹にかかるオッズで割った値がオッズ比です。両者のオッズが同じ場合オッズ比が1となります。がん患者さんが帯状疱疹にかかるオッズの方が高い場合にオッズ比は1を超えます。
帯状疱疹の予防
免疫力が低下した場合に帯状疱疹にかかるリスクが高まるため、普段からバランスの良い食事、睡眠などの体調管理が大切となります。また、特に50歳以上の人へのワクチンによる予防が勧められます。ワクチンの効果
帯状疱疹のワクチンには2種類あり、現在小児への定期接種となっている生ワクチンとリコンビナントワクチンがあります。一般の60歳以上における生ワクチンの効果は61%、70歳以上では55%、帯状疱疹後の神経痛への効果は67%と報告されています(参考文献1)。一方、リコンビナントワクチンは50歳以上で97%、70歳以上でも91%、帯状疱疹後神経痛は88%と非常に高い効果を示しています(参考文献2,3)。また、リコンビナントワクチンは血液がん患者さんを対象とした研究でも87%と非常に高い効果を示しています(参考文献4)。このため米国疾病予防管理センター(CDC)は50歳以上への帯状疱疹ワクチンとして生ワクチンよりもリコンビナントワクチンを推奨しています(参考文献5)。
抗がん剤治療中やステロイドホルモン剤による治療中のような高度な免疫低下がある場合には生ワクチンの接種ができない点にも注意が必要です。
参考文献
- Oxman MNらの報告(N Engl J Med. 2005)(外部サイトにリンクします)
- Lal Hらの報告(N Engl J Med. 2015)(外部サイトにリンクします)
- Cunningham ALらの報告(N Engl J Med. 2016)(外部サイトにリンクします)
- Dagnew AF らの報告(Lancet Infect Dis. 2019)(外部サイトにリンクします)
- CDCのHP(外部サイトにリンクします)
お問い合わせ
国立がん研究センター東病院 医療安全管理部門 感染制御室電話番号:04-7133-1111(代表)
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