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HPV関連がん予防・治療プロジェクト

ほとんど全ての子宮頸がんは高リスク型HPV感染によって引き起こされます。肛門がん、陰茎がん、中咽頭がんなども高リスク型HPVによって引き起こされます。HPV関連がんは、全世界のがんの約5%を占め、女性のがんに限れば約11%を占めています。これらのがんはHPV感染がなければ発症しなかったがんであり、HPV感染を防ぐ事ができればHPV関連がんは予防する事ができます。HPVワクチンはがんを起こすHPVの感染を予防する画期的なワクチンです。ワクチン接種率の高い国ではHPV感染による前がん病変の減少が疫学調査で明らかになってきています。しかし、日本では先進諸国では例外的にHPVワクチン接種率が低迷しており、感染予防が期待できない状況が続いています。また、HPV関連がんでは、全てのがん細胞中にHPVゲノムが残っており、そこからE6とE7というウイルスがん遺伝子が発現して、がん細胞の生存と増殖を支えています。E6とE7はそれぞれp53とRBを不活化するため、p53やRBには変異がなく、RB経路を活性化するp16INK4Aは高発現しています。そのため、HPVの感染した前がん病変からHPVゲノムを排除できれば、がんは予防できます。また、がん細胞からE6とE7の発現をなくす事ができれば、HPV関連がんは完治できると考えられています。私たちは、HPV関連がんの新たな予防・治療法の開発を進めています。

HPVによる子宮頸がんの発生機構

HPVワクチンについて

日本ではHPV16とHPV18の感染を主に予防する2価ワクチンとこれらに加え尖圭コンジローマを引き起こすHPV6とHPV11の感染を予防する4価ワクチンが認可され2013年4月より小学校6年生から高校1年の女子を対象に定期接種化されています。しかし、接種後の副反応がワクチンの副作用であるかのような報道が相次ぎ、厚生労働省は「積極的な接種勧奨の一時差し控え」を決定し現在も続いているため接種が必要な世代での接種率が低迷しています。さらに、日本人に多いHPV52やHPV58感染も予防できる9価ワクチンが開発され世界中の多くの国で接種されており、この先数年は供給が需要に追いつかなくなると予測される中、日本でも2020年7月に9価ワクチンが製造承認され定期接種化が議論されています。