トップページ > 診療科・共通部門 > 内科系 > 肝胆膵内科 > 病気と治療について > 神経内分泌腫瘍 > NETに対する治療
NETに対する治療
神経内分泌腫瘍
目次
6. NETに対する治療
手術
神経内分泌腫瘍のなかでも、転移がない場合や、転移があっても数が限られている場合など、病変が完全切除可能と考えられる場合には手術が行われます。また、転移などがあって病変が完全に取りきれなくても、手術によって腫瘍の量を減らすことで、症状や経過の改善が期待できると考えられる場合には、可能な範囲で病変を切除することがあります8。
ラジオ波焼灼術(ラジオはしょうしゃくじゅつ)・肝動脈塞栓術(かんどうみゃくそくせんじゅつ)
ラジオ波焼灼術とは、超音波装置で観察しながら腫瘍の中に電極のついた針を挿入し、電流を流して腫瘍の周囲に熱を発生させ、腫瘍細胞を凝固し死滅させる治療です。また、肝動脈塞栓術とは足の付け根の動脈からカテーテルを挿入し、腫瘍へ流れ込む細い血管まで進め、先端から塞栓物質を注入して腫瘍への血流を遮断する治療であり、しばしば腫瘍に対する「兵糧攻め」に例えられます。
いずれの治療も主に肝細胞がんに対して行われる治療ですが、機能性NETでは主に肝転移がホルモン産生を促し、様々なホルモン症状を引き起こすため、症状や経過の改善を期待して、可能な範囲で肝転移に対してラジオ波焼灼術や肝動脈塞栓術を行うことがあります。
薬物療法
転移をきたすなど進行した状態で発見された場合や手術後の再発に対しては、一般的に薬物療法が行われます9,8。
ホルモン製剤(ソマトスタチンアナログ)
ソマトスタチンは脳の視床下部や膵臓、消化管の内分泌細胞から産生されるホルモンの一種で、ソマトスタチン受容体に結合することで、他のさまざまなホルモンの働きを抑える働きがあります。ソマトスタチンアナログは人工的なホルモン製剤であり、NETに高頻度で認められるソマトスタチン受容体に結合することで、ソマトスタチンと同様にさまざまなホルモンの働きを抑える働きがあり、以前から機能性NETでみられるホルモン症状を改善するために使用されてきました。しかし、近年になってこのソマトスタチンアナログには神経内分泌腫瘍の増殖自体を抑える効果があることが明らかになり10,11、神経内分泌腫瘍の進行抑制のために使われるようになってきました。近年では薬剤の改良が進み、4週に1度の皮下注射あるいは筋肉注射で効果が得られることから、身体への負担も小さく、その使用頻度はますます増えてきています。
分子標的薬(エベロリムス、スニチニブ)
腫瘍細胞にはさまざまなタンパクが発現しており、細胞の増殖をはじめとする多様な働きに関与しています。こうした特定のタンパクに結合することで、腫瘍細胞の増殖を抑え、腫瘍の進行を遅らせる薬剤が分子標的薬です。
NETに対しては、mTOR注3を標的とするエベロリムスの有用性が示されています13,14。また、膵臓原発のNETに対しては、VEGF注4を標的とするスニチニブの有用性も示されており15、いずれも進行したNETの治療に広く用いられています。
さらに、エベロリムスをソマトスタチンアナログ(ランレオチド)と組み合わせることで、上乗せの治療効果が得られることが示されています16。このため、細胞の増殖が活発な病変や、肝臓への転移が広い範囲にみられる病変に対しては、この併用療法が積極的に用いられています。
注3哺乳類ラパマイシン標的タンパク質。腫瘍細胞が刺激を受けると、このmTORが活性化され、細胞分裂や血管の誘導(これを血管新生と言います)、エネルギー産生などが活発になり、腫瘍細胞の増殖が促進されます。
注4血管内皮増殖因子。腫瘍細胞はVEGFを産生することで血管新生を促進し、血管から栄養や酸素を取り込もうとします。その結果として、腫瘍の増殖や転移が促進されます。
細胞障害性抗がん剤(ストレプトゾシンなど)
分子標的薬などに対して、従来から用いられている抗がん剤は細胞障害性抗がん剤と呼ばれ、NETに対しても積極的に用いられています。なかでもストレプトゾシンは広く用いられてきた薬剤の一つで、細胞に取り込まれた後にDNAの合成を阻害し、腫瘍の増殖を抑えます。細胞障害性抗がん剤は古くから用いられてきましたが、近年では改めて有用性が見直される傾向にあります15。一般に、ストレプトゾシンは他の細胞障害性抗がん剤と組み合わせることで相乗作用を期待する併用療法が主流で、なかでも5-FUとの併用は最も広く用いられている治療のひとつです。
放射性リガンド療法(Radioligand therapy: RLT)
放射性リガンド療法とは、腫瘍細胞の表面に多く発現するタンパク(受容体)に選択的に結合する化合物(リガンド)と、放射性核種(放射線を放出する物質)を組み合わせた薬剤による治療法です。
体内に投与された薬剤は、腫瘍細胞表面の受容体に結合したのち、受容体とともに細胞内に取り込まれます。細胞内に取り込まれた放射性核種から放出される放射線が、腫瘍細胞にダメージを与えます。正常細胞への影響を最小限に抑えながら、腫瘍細胞を選択的に攻撃できることが、この治療法の特徴です。
神経内分泌腫瘍に対しては、ソマトスタチン受容体を標的とする 177Lu-DOTATATE(ルタテラ®) が保険承認されています。治療の詳細については、以下のページをご覧ください。