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VDC-IE療法

VDC療法は3種類の抗がん剤 (ビンクリスチン、ドキソルビシン、シクロホスファミド)、IE療法は2種類の抗がん剤 (イホスファミド、エトポシド) を組み合わせた治療法です。VDC療法とIE療法を交互に繰り返します。

使用する抗がん剤

ビンクリスチン注

ビンクリスチンは、ニチニチソウという植物に含まれる成分から作り出された抗がん剤で、細胞が分裂する際に必要な細胞構成成分のひとつである微小管に作用します。微小管を構成しているチュブリンという蛋白質の結合を阻害することによって腫瘍細胞の増殖を阻害し、死滅させます。ビンクリスチンは、短時間で静脈内に投与します。ビンクリスチンを投与すると、手や足がピリピリするなどの異常な感覚、便秘 (便通がない、便が硬いなど)や腸閉塞 (お腹が痛む、お腹が張る、嘔気・嘔吐など)などの末梢神経障害が起こることがあります。上記のような症状が出た場合は、症状が軽いうちに医師、看護師または薬剤師に報告してください。

ドキソルビシン注 (アドリアマイシン)

ドキソルビシンは、腫瘍細胞のDNAにくっつき、腫瘍細胞の増殖を止めたり、死滅させる作用を持つ薬です。薬は赤色をしているため、薬を注射してから1から2日の間、尿や汗に色 (赤色・桃色・橙色など) が着くことがあります。その後、元に戻りますので心配はいりません。心疾患の既往がある方は、治療を開始する前に医師へ報告してください。

シクロホスファミド注

シクロホスファミドは、腫瘍細胞のDNAにくっつき、腫瘍細胞の増殖を止めたり、死滅させる作用を持つ薬です。シクロホスファミドは体内で分解され、尿中に排泄されます。この分解物 (アクロレイン)が膀胱障害 (出血性膀胱炎)を誘発することがあります。水分を多めに摂取し、たくさん排尿することによって膀胱炎を予防することができます。排尿時痛や残尿感、子どもの場合、トイレに行く様子がおかしいと感じた場合には、医師、看護師または薬剤師に報告してください。

イホスファミド注

イホスファミドは、シクロホスファミドよりも有効性にすぐれ、かつ毒性の少ない化合物を探索する過程において発見された薬です。腫瘍細胞のDNAにくっつき、腫瘍細胞の増殖を止めたり、死滅させる作用を持つ薬です。イホスファミドは体内で分解され、尿中に排泄されます。この分解物 (アクロレイン) が出血性膀胱炎 (尿が赤みを帯びる、尿の回数が増える、残尿感がある、排尿時に痛みがあるなど) を誘発することがあります。出血性膀胱炎を予防するために、アクロレインを無毒化するメスナを使用します。水分を多めに摂取し、たくさん排尿することによって膀胱炎を予防することができます。排尿時痛や残尿感、子どもの場合、トイレに行く様子がおかしいと感じた場合には、医師、看護師または薬剤師に報告してください。

エトポシド注

エトポシドはメギ科の植物の根茎から抽出した結晶性成分であるポドフィロトキシンを原料とし、1966 年に初めて合成された抗がん剤です。二本鎖DNAのねじれを解消する酵素の働きを抑えることによって腫瘍細胞の増殖を阻害し、死滅させます。DNAの二本鎖はらせん構造をとっているため、そのひずみを解消しない限りDNAの複製ができないためです。
間質性肺炎を引き起こすことがあるため、咳、息苦しさなどの呼吸器症状が見られた場合には、医師、看護師または薬剤師に報告してください。

VDC-IE療法の副作用

骨髄抑制

抗がん剤を使用すると血液を造る骨髄も影響を受け、白血球、赤血球、及び血小板が減少することがあります。

白血球の減少 (感染症にかかりやすくなります)

白血球は、病原体から身体を守る (感染を防ぐ) 働きを持った血液成分の1つです。白血球が一定レベル以下に減少すると抵抗力が低下し、感染にかかりやすくなります。抗がん剤治療中は、感染予防策が大切です。また扁桃炎・虫歯・膀胱炎・おむつかぶれなどがある場合、治療開始前に担当医とご相談ください。

赤血球の減少 (貧血症状につながります)

めまい、立ちくらみ、冷え、だるさ、息切れ、動悸などの症状があります。

血小板の減少 (出血しやすくなります)

血小板は、血液を固まりやすくする働きがあります。血小板の数が少なくなると、出血しやすくなります。赤血球や血小板の輸血を必要とする場合があります。血液検査によって確認しますが、貧血症状が改善しない場合や出血傾向が続く場合は、早めに担当医へ連絡してください。

吐き気・嘔吐

VDC-IE療法では、吐気や嘔吐、食欲不振などの消化器症状が発現しやすいため、複数の吐気止め (注射薬と内服薬) を組み合わせて予防します。抗がん剤の点滴当日に現れる急性のものと、点滴終了後2から7日目に現れる遅発性のものがあります。吐気止めを使用して症状を和らげます。

脱毛

脱毛の程度に個人差はありますが、薬を点滴してから2週間から3週間が過ぎた頃より、髪の毛が抜けてきます。この脱毛は一時的なもので、治療を終了してから2か月から3ヶ月で髪が生え始めます。新しく生えてきた毛髪は、色や質が以前と変わることがあります

口内炎

VDC療法またはIE療法を行ってから1週間前後に現れることがあります。

心毒性

ドキソルビシンには、心臓に影響を及ぼす副作用があるため、生涯にわたって投与する累積量の上限が決まっています (500 mg/m2)。心機能を評価するために心電図検査や心臓超音波検査を行います。検査は治療開始時だけでなく、治療期間中や治療終了後にも行うことがあります。主な心臓への副作用症状として、息切れ、動いた時の息苦しさ、胸痛、足の浮腫み、頻脈 (脈が速くなる) などがありますので、症状が現れた場合には担当医にご相談ください。

点滴部位における皮膚障害

点滴の針を刺している場所やその付近に痛み、熱感、又は違和感等の不快感を感じた場合には、すぐにお知らせください。薬が血管外に漏れている可能性があります。点滴の際のわずかな漏れでも、放置すると漏れた部位に炎症や壊死を起こすことがあります。点滴投与後、数日してから上記症状が出現した場合にも、すぐに担当医へご連絡ください。

その他、気になる症状がありましたら、 医師・看護師・薬剤師にご相談ください。

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