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第2回 薬薬連携を充実させるための研修会 開催報告

コンセプト紹介(薬薬連携を支える薬剤部スタッフにインタビュー!)
講演内容1)初歩から分かる薬薬連携 乳がん治療中の患者さんが来局したらどうする?乳がん治療のマネジメント ~AC療法~
講演内容2)よくある疑義照会にお答えします
参加者の声

コンセプト紹介

TULIPプロジェクト~薬薬連携を支える薬剤部スタッフにインタビュー! 
第2弾 薬剤師 吉野 麻結 

今回のインタビューでは、薬薬連携チームのスタッフであり、第2回の研修会で医師に対する質問コーナーの司会を務めてくれた吉野さんに、研修会の感想と薬薬連携への展望をお聞きしました。
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齋藤:
第2回の研修会お疲れさまでした。今回は300名を超える薬局薬剤師さんにご参加いただきましたね。内容は、前回からさらに工夫をされたと聞きました。

吉野:今回のテーマは乳がんでした。今回は前回と違って、事前に薬局薬剤師さんたちから質問内容を集めました。そこに普段の疑義紹介内容を加えて、答えられる質問には全部答えよう!という気持ちで開催しました。いただいた質問にはほぼ答えられたと思います!

齋藤:質問コーナーでは、様々な視点の質問が集まっていましたね! 

吉野:私自身、以前当院の門前の調剤薬局に勤めていました。その当時を思い出して、実際に患者さんに聞かれた内容や疑問も盛り込みました。

齋藤:会を重ねるごとに成長していっていますね! 今後の研修会はどんな会にしていきたいと思いますか? 

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吉野:患者さんの状態をいち早く理解できるような、気づけるようになれるような、研修会がそこに役立てたらいいなと思います。そのためにも、病院では当たり前のように使っている副作用基準やPSなどの基礎知識を実臨床でどう使っているのかを学べる機会になれればと思います。

齋藤:では、吉野さんにとっての薬薬連携とは?! 

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吉野:
大きい病院に問い合わせるって、薬局にとって勇気がいる時もあると思います。けれど、薬剤部の雰囲気を知ってもらえたら話しやすいですよね。薬局が重視している問題点と病院が重視している問題点は違う。そこを理解し合っていけるような薬薬連携になれればいいなと思います。
保険薬局は、患者さんが病院でなかなか言えないことを話したり、時に本音を見せてくれる場所でもある。今後はこちらからの発信だけでなく、保険薬局からの情報も教えていただけたらと思います。

齋藤:薬局での経験ある吉野さんだからこその目線や思いをたくさん感じました!今後の薬薬連携をさらに盛り上げていってください!ありがとうございました。

講演内容

講演(1):
初歩から分かる薬薬連携 乳がん治療中の患者さんが来局したらどうする?
乳がん治療のマネジメント ~AC療法~
講師:乳腺・腫瘍内科担当薬剤師 宇田川 涼子 先生

内容のサマリー

切除可能な乳がんでは、根治を目指した治療が行われます。

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乳がんの周術期化学療法には、術前化学療法と術後化学療法があります。

<ポイント>

  • 術前化学療法:切除範囲を小さくすることで乳房温存率が向上する
  • 術前化学療法と術後化学療法では、予後に差はない
  • 全摘手術を行った場合でも、人工乳房を用いた乳房再建は保険適用

今回は、乳がんの術前術後で実施されるAC療法をテーマとしました。
AC療法は、ドキソルビシンとシクロホスファミドの併用療法です。投与スケジュールは、3週間を1サイクルとして合計4サイクル投与となります(レジメン情報「AC60/600療法」)。

当院ではいくつかのレジメンについてオリジナルの患者説明用パンフレットを作成しており、それに沿って初回指導を行います。AC療法のパンフレットを使った説明では、特にドキソルビシンによる着色(投与後の尿が赤くなる等)や血管外漏出、心毒性についてと、シクロホスファミドによる出血性膀胱炎についての説明も行います(がん種別化学療法について 使用薬剤とその副作用「AC60/600療法」)。
心毒性については、心不全の初期症状(動悸・息切れ・浮腫み)について説明をします。血管外漏出については、点滴中の注意事項を事前に説明します。なお、血管外漏出が起きてしまった場合は、デクスラゾキサン(サビーン®)の適応となるかどうかについて、医師・看護師と相談します。

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出血性膀胱については、予防のために飲水を積極的に行うように説明をします。ただし、抗がん薬による吐き気が早期に出現している場合に飲水をノルマにしてしまうと患者さんに苦痛を与えるおそれがありますので、「頑張りすぎない」範囲で普段より多めに摂取するように伝えています。

支持療法の理解を深めるには、まずガイドラインを参考にしましょう!!

AC療法は高度催吐性リスクレジメンに分類されます(日本癌治療学会;がん診療ガイドライン 制吐療法)。
当院のレジメンでは、アプレピタント内服(1日目の抗がん薬投与前:125mg、2,3日目:80mg)+デキサメタゾン内服(2,3,4日目:8mg)と、点滴でグラニセトロン1mg+デキサメタゾン9.9mgを抗がん薬の前に投与します。

また、吐き気出現時の支持療法として「メトクロプラミド錠5mg 1回4錠(=20mg/回)」が処方されることがあります。1回量として多いと思われるかもしれませんが、NCCNガイドライン(←アカウント登録しましょう)では、Breakthrough Treatmentの1つとして「メトクロプラミド10~20mgを4~6時間毎」との記載があります。ただし、この量で継続すると、メトクロプラミドの代表的な副作用である錐体外路症状が出現する可能性が懸念されますので、まずは1回2錠から使ってみるように指導することが多いです。
また、患者さんの中には、予防制吐薬のアプレピタントやデキサメタゾンを内服している間はメトクロプラミドを使用してはいけないと誤解する方もいますので、点滴当日からいつでも使用可能であることを伝えておくことがポイントです。

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なお、副作用を評価するツールとして、「重症度の尺度」の世界共通言語であるCTCAE (Common Terminology Criteria for Adverse Events)が用いられています。
連携充実加算に伴う化学療法情報提供書にもCTCAE v5.0で副作用が評価されますので、日本語版をダウンロードしておくことをおすすめします。

外見の変化を不安に思っている患者さんに対して、不安の傾聴とそれに対する情報提供ができる薬剤師を目指しましょう!!

乳がんの治療は、多くの外見変化を伴います。手術によって乳房を失うこと、リンパ浮腫によるむくみ、化学療法による脱毛や色素沈着など、女性にとっては精神的にも辛い治療となります。当院のアピアランスセンターでは、脱毛などの外見変化に対する心のケアをはじめ、ネイルやウィッグの試着、個別相談ができる環境を整えております。

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また、患者さんがさまざまな相談ができる場所として開設された患者サポートセンター内では、術後のボディイメージ教室やリンパ浮腫教室を実施しており、事前に外見変化をイメージすること、対処方法を知ることで安心して治療に臨めるようにサポートしています(現在は、新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため、開催中止となる場合があります)。
リンパ浮腫については、発赤や熱感を伴う場合は蜂窩織炎を合併している可能性があり、重篤な感染症に繋がる場合があります。症状を発見した場合には、病院へ連絡するように患者さんに指導しています。

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継続的にフォローアップできることが保険薬局の強み!!

当院では毎月40人前後の患者さんが通院治療センターでAC療法を行っています。病院薬剤師は、初回指導と数回のフォローアップを行いますが、来院ごとに患者さんに介入できていないのが現状です。
そのような中、患者さんは院外処方箋を発行されている場合には、かならず保険薬局に立ち寄りますので、外来で治療を受けている患者さんにとって、保険薬局のみなさまのサポートがとても大切になります。

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乳がんではAC療法以外にもホルモン薬やCDK4/6阻害薬等の内服薬での治療も行われています。患者さんが安心安全の薬物治療を受けるためには保険薬局のみなさまの協力が不可欠であり、かかりつけ薬剤師による精神的ケアを含めたサポートを期待しています。

講演(2):よくある疑義照会にお答えします
回答者:乳腺・腫瘍内科医長 野口 瑛美 先生
質問者:薬剤師 吉野 麻結 先生

当院乳腺・腫瘍内科 医長 野口 瑛美 先生をお招きし、対談形式にて薬剤師からの質問を野口先生にお答えいただきました。
当日のQ&Aの一部を紹介します

1.乳がんの化学療法における心毒性について

Q:抗がん剤による心毒性として、どのような症状がありますか?
A:初期では、非特異的ではありますが、息切れ、体重増加、浮腫などが生じます。心不全症状を早期に発見できるように、患者さんに注意してほしい症状をお話するようにしています。例えば、浮腫は抗がん剤自体の影響で生じることがあります。浮腫を認めた際には、診察時にその他の症状を確認した上で、心毒性を疑う場合には、心エコー検査を行います。

Q:乳がんの化学療法中において、モニタリング目的での心エコー検査はどのくらいのペースで実施していますか?
A:HER2陽性乳がんに適応を有する分子標的治療薬トラスツズマブの投与期間中では、適正使用ガイドに準じて治療前、治療後3ヶ月ごとに行っています。

Q:血圧が高い人や心血管疾患の既往がある患者さんでは、抗がん剤による心毒性が生じやすいでしょうか?
A:心血管疾患の既往がある患者さんでは、心毒性の発現頻度が高まると考えられています。がん以外の基礎疾患の管理もとても重要です。複数の病院を併進されている患者さんでは、がん以外の合併症を有していると思います。是非、保険薬局の薬剤師さんには、当院からの処方薬を含め、その他の併用薬について把握していただき、適宜情報提供いただきたいと考えています。

2.乳がん術後のホルモン療法について

Q:ホルモン療法といえば、5年あるいは10年服用と言われていますが、使い分けなどあれば教えてください。
A:閉経前であれば抗エストロゲン薬を5~10年、閉経後であればアロマターゼ阻害薬を5年間服用することが標準的となっています。抗エストロゲン薬のタモキシフェンに関して、5年よりも10年継続して内服する方が、再発抑制効果が優れていることが示されており(EBCTCG. Lancet 2011; 378(9793): 771-84)、最近、タモキシフェンの内服期間は延長する傾向にあります。

Q:アロマターゼ阻害薬を服用している患者さんの中で、関節痛やこわばりに悩まされているという声がありますが、整形外科などの受診をお勧めした方がいいですか?
A: 対処としては、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)あるいはアセトアミノフェンなどの鎮痛薬の処方を検討します。また、副作用の原因となったアロマターゼ阻害薬を他のアロマターゼ阻害薬やタモキシフェンに変更するのもひとつの手段になります。症状が持続し、よくならない場合には、患者さんと相談し、整形外科を受診してもらうこともあります。

Q:患者さんから、副作用がつらいなどの理由で服用したくないと相談があった場合、患者さんにはどのようなお話をされますか?
A:ホルモン療法の目的は再発抑制です。ホルモン療法の効果を得るためには、しっかり内服してほしい旨をお伝えします。しっかり内服できているかを確認する目的で、残薬がないかどうかを患者さんに聞くことは大切だと考えています。副作用が出た場合でも、自己中断するということは避け、医療者にしっかり相談するようにお話しています。

3.男性乳がんの治療方法について

Q:女性乳がんの治療と何か違いなどありますか?
A:男性乳がんに対する治療の流れは、基本的には女性乳がんと同じです。術後ホルモン療法については、アロマターゼ阻害薬の有効性についてはデータが乏しいので、タモキシフェンの投与が勧められます。また、抗がん薬治療もまた、女性乳がんに準じて行います。ちなみに、男性と女性で副作用の発現に違いはありません。

4.乳がん患者のサプリメント摂取について

Q:抗がん剤治療を受ける患者さんがサプリメントを摂取されることについて、どうお考えですか?
A:サプリメント摂取が再発や生存期間に影響するか否かについて、証拠不十分であり、サプリメントの良し悪しについては結論付けられないのが正直なところです。 ただし、最近の報告において、化学療法前と化学療法中にビタミンB12を摂取していた人は、再発および生存期間が有意に短くなっており、鉄剤を化学療法中に摂取していた人は再発までの期間が有意に短くなっていたことが指摘されています(Ambrosone CB, et al. J Clin Oncol. 2020; 38(8): 804-814.)。この報告のみをもって結論付けられませんが、少なくとも現時点では、安易にサプリメントの使用を薦めることはできないと考えています。サプリメントの摂取について、患者さんにはインターネット等から得られる情報を鵜呑みにせず、まずは医療者に相談してほしいと思います。

参加者の声

研修会当日にご回答いただきましたアンケートを一部ご紹介させていただきます。 
  • レジメンは最近見る機会も多くなりましたが、非常に分かりやすく参考になりました。有り難うございました。 
  • 薬剤部さんのたくさんの資料、是非活用させて頂きます。 
  • わかりやすい勉強会でした。次回も参加させていただきます。 
  • 襟を開いて様々なお話をしていただき、ありがとうございました。町の薬局として患者さんの役に立てるよう、もっと勉強していきたいです。 
  • 貴院のHPの案内もあり、活用したいと思います。 
  • 非常にわかりやすい内容、入門的な内容でわかりやすかった。 
  • 臨床における医師、薬剤師の考え方を知ることができて参考になりました。このような気付きを得られるのはとても良い機会と感じました。ありがとうございました。 
  • 乳癌だけではなく血液癌など知識がないがんに対しても講義をしていただけたらと思います 
  • 地域を超えての研修会開催を大変ありがたく感じました。 
  • 大変分かりやすい内容でありがとうございました。医師の対応についてお話が聞けて参考になりました。また参加させていただきたいです。 
  • 内容がとても簡潔で分かりやすく野口先生への質問がとても為になりました。 
  • 実際の病院での説明方法などが知ることができ、薬局での患者様とのお話の仕方に役立てることができると感じました。オンライン型なので参加もしやすく、ありがたかったです。 
  • 病院薬剤師の方々や先生のご意見を直接聞くことができて、特にサプリメントに対する考えが聞けたのが新鮮で良かったです。
  • 聞きたい質問も選ばれていて嬉しかったです。乳がん第二弾として、AC療法に加えてタキサンに移行される方、タモキシフェンからアナストロゾールに変更する方、また逆の変更になる方などの治療説明も聞きたいです。 
  • 抗がん剤治療を少し身近に感じることができました。
  • 研修会自体も参考になりましたし、貴院のHPも今後参考にさせていただきたいと思います。