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国立がん研究センター 中央病院

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薬薬連携について

当院の取り組み

いわゆる「薬薬連携」とは、病院薬剤師と薬局薬剤師が連携することで、お薬を共通言語として患者さんの情報を共有し、安心できる薬物療法を継続して提供する体制のことです。

国立がん研究センター中央病院(当院)には、外来がん化学療法を受ける患者が全国から来られております。当院から交付した院外処方箋は、門前薬局のみならず各地の薬局で調剤されることがあり、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、全国各地の薬局で院外処方箋が応需されているケースが増えております。
これまで当院では、病院近隣の保険薬局との連携を行ってまいりましたが、今後は、広く地域の保険薬局との連携が重要になると感じております。

そこで、薬薬連携を充実させることを目的に、当院では『TULIP(チューリップ)』プロジェクトを立ち上げることにいたしました。

『TULIP(チューリップ)』プロジェクトとは

Tukiji Unit LInk Pharmacistsの頭文字をとって『TULIP(チューリップ)』にいたしました。

『TULIP(チューリップ)』プロジェクトとは、2020年度診療報酬改定で創設された「連携充実加算」の施設基準である研修会を、全国の薬局薬剤師を対象に、オンライン形式で開催し、がん薬物治療の薬薬連携を充実させる取り組みです。
コロナ禍で再認識されたオンラインの利点を最大限に活かし、これまで出来なかった薬局薬剤師向けの研修会を全国展開していきたいと考えております。当院の処方箋を受けている薬局だけでなく、全国の全ての薬局の方に、是非、がんについて勉強していただきたいです。

『TULIP(チューリップ)』プロジェクトを通じて、今後は、全国の保険薬局と連携し患者さんお一人お一人のライフスタイルに合わせた薬物療法を提供できるよう取り組むことを目標に、理想の「薬薬連携」を進めて参りたいと考えております。

第1回薬薬連携 開催報告

コンセプト紹介

薬薬連携スタッフインタビュー

講演内容

講演(1):消化器系腫瘍の経口抗がん薬+注射併用レジメン(XELOXを中心に)
講師:消化管内科担当薬剤師 大塚 亮 先生

内容のサマリー

がん薬物療法は大きく2つに分けられます。

  • 術後補助化学療法:治癒切除後の微小遺残腫瘍による再発予防と治癒率を向上させることを目的とする治療
  • 進行がんに対する薬物療法:生存期間の延長やがんによる症状の緩和、QOLの向上を目的とする治療

今回は、結腸・直腸がんの術後補助化学療法がテーマとなります。術後補助化学療法が対象となるのは、主にstageIIIの結腸・直腸がん患者です。

XELOX療法は、カペシタビンとオキサリプラチンの併用療法です。投与スケジュールは、3週間を1サイクルとして合計8サイクル投与となります。XELOX療法におけるカペシタビンの用量は1,000 mg/m2/回(C法)となります(レジメン情報「XELOX療法」)。

カペシタビンは、代謝酵素の分布に着目することで、腫瘍組織内において5-FU濃度を選択的に高めることを目的にデザインされた経口抗悪性腫瘍剤です。カペシタビンは、その代謝物の一部がCcrの低下に伴いAUCの増加を認めることから、腎機能による用量調節が必要な薬剤です。適正使用ガイドでは、Ccr<50min/mLで減量が必要、Ccr<30min/mLでは投与禁忌と記載されています。

カペシタビンの処方チェックでは、患者が受けるレジメン名(併用する抗がん剤)の確認に加えて(B法なのか?C法なのか?)、腎機能の把握に努めること!!

続いて、XELOX療法における副作用対策、支持療法について、当院の対策をご紹介します。当院ではXELOX療法初回時に下記の支持療法セットがオーダーされます。
これら支持療法セットの服用方法について、患者さんが理解できるように服薬指導することが重要となります。 

支持療法薬セット

XELOX療法の副作用のひとつに下痢があります。支持療法セット内のロペラミドの服用方法について、添付文書上では、「成人に1日1~2mgを1~2回に分割経口投与する。なお、症状により適宜増減する。」と記載があります。しかし、カペシタビンによる下痢の場合、添付文書の服用方法では制御できない場合があります。このような場合には、ASCOガイドライン(J Clin Oncol 2004; 22; 2918)が参考になります。ASCOガイドラインで推奨されているロペラミドの投与法は、「初回4mg服用し、その後4時間間隔もしくは水様便後に2mgを投与する。そして、12-24時間後に評価を行い、下痢の改善が得られない場合は2時間間隔での投与を考慮する」とされています。

支持療法の理解を深めるには、まずガイドラインを参考にしましょう!!

患者さんから副作用を聴取した際に重症度をどのように評価したらよいでしょうか?
「重症度の尺度」の基準として世界共通言語として用いられるのはCTCAE (Common Terminology Criteria for Adverse Events)です。

CTCAE

カペシタビンの場合、患者さんからGrade2以上の非血液毒性を聴取した際はカペシタビンの休薬が考慮されます。しかし、患者さんの中には「休薬が治療効果を低下させてしまうのではないか」と不安になり、無理にカペシタビンの内服を継続し、緊急入院をしてしまうケースがあります。
副作用に伴うカペシタビンの減量や休薬は無病生存期間に影響を及ぼさないことを示唆するデータがあります(J Clin Oncol 2011; 29: 1465)。このようなケースを未然に防ぐためには、この結果を参考に、患者さんに情報提供を行い、適切に休薬できるように説明を行うことが重要だと考えています。

副作用の重症度を把握して、適切な対応がとれるようになりましょう!!

当院では毎日50~60人の消化管がんの患者さんが通院治療センターで抗がん剤治療を行っています。病院薬剤師と保険薬局のみなさまと協力しながら、患者さんのサポートをしていくことが、安心安全な薬物治療につながると信じています。

今回の講義が抗がん剤の副作用マネジメントの一助になれば幸いです。

講演(2):よくある疑義照会にお答えします
回答者:消化管内科医長 高島 淳生 先生
質問者:薬剤師 大塚 恵子 先生

当院消化管内科 医長の高島 淳生 先生をお招きし、対談形式にて薬剤師からの質問を高島先生にお答えいただきました。
当日のQ&Aの一部を紹介します。

Q:カペシタビンが初回から1段階減量されている場合、どのような理由からですか?
A:当然、カペシタビンは腎機能に応じて、減量を考慮することがあります。それだけではなく、患者さんの見た目や元気さ、治療段階も考慮し、減量するか否かを考えています。

Q:高島先生は患者さんから副作用情報を聞き出す際に、どのようなことに注目をしていますか?
A:患者さんは治療を中止したくないという思いからか、我々の前では無理をして症状の話をしてくれないことがあります。その時はご家族等からお話をうかがっています。

Q:自宅におけるコンプライアンスや血液検査以外の有害事象について聴取する際、薬局薬剤師からも聴取・指導してほしい点はありますか?
A:我々は患者さんが診察に来た時の状況しか把握できないことが多いため、皆さまには患者さんの自宅における過ごし方や悩み等について聞き出してほしいと思います。その上で、我々医師に共有すべきと考えた情報については、ぜひ積極的に連絡してほしいと考えています。

最後に
保険薬局の薬剤師のみなさまと協力していかないと医療は成り立たないと思います。本日はこのように皆さまの顔が見られてよかったなと思います。ぜひ皆さまからも色々教えてもらって、治療ができればなと思いますので、これからもよろしくお願いします。

参加者の声

保険薬局薬剤師の方へインタビューし、研修会を受けた感想をお伝えします。 

今回は、当院の門前薬局である日本調剤築地薬局の先生方に直撃インタビューしてまいりましたので、ご紹介します。  

Q:今回の研修会をどこから参加されましたか?
A:職場のみんなと職場で聴講していました。

Q:講演(1)の内容はいかがでしたか?
A:知っておくべき点が整理できてよかったです。勉強の必要性をあらためて感じることができました。

Q:講演(2)の内容はいかがでしたか?
A:対談形式なので、医師の考えが直接聞けた点で、わかりやすかったです。

Q:振り返りグループディスカッションは有意義な場になりましたか?
A:時間が短いと感じましたが、グループ内で質問が多く出ていて話しやすい雰囲気だったと思います。

職場でアットホームな場で参加できるのはうれしい。

平野先生インタビュー

日本調剤築地薬局 平野 孝典 先生

集合型研修では少し緊張してしまい、質問しにくい雰囲気がありますが、今回は、オンライン形式だったので、一緒に参加している人と相談ができ、気楽な雰囲気で聴講できた点でよかったと感じました。このような雰囲気だと質問が出やすいのではないでしょうか。

処方箋でお名前を見ている医師が登場され、身近に感じられた点がよかった。

野々村先生インタビュー

日本調剤築地薬局 野々村 磨つ 先生

医師から直接、副作用対策で用いるお薬の処方意図をコメントしてもらい、とても勉強になりました。 そして何より、画面越しではありますが、高島先生の人柄が感じることができました。 高島先生が言われた「患者さんは、僕たち(医師)には、副作用症状がひどくならないと言ってくれないことがあるので、薬剤師さんが接する中で気づいた情報をこまめに僕ら医師に伝えてほしい。」というコメントで、薬剤師に求めていることを知る機会になった点で、とてもありがたかったです。 今回の薬機法の改正により、薬剤師による服用期間中のフォローアップが義務づけられ、電話フォローを開始していますが、どのような内容を服薬情報提供書(トレーシングレポート)を用いて、病院へフィードバックするべきなのか、とても参考になりました。

日本調剤インタビュー

急な突撃インタビューにも関わらず、快く応じていただきました日本調剤築地薬局のみなさま、誠にありがとうございました。

その他、研修会当日にご回答いただきましたアンケートを一部ご紹介させていただきます。

  • 普段知りたかったことがよくわかりました。副作用のグレード分類や初回減量の理由の謎が解けました。ありがとうございました。
  • 非常に分かりやすく、日頃の業務に役立つ内容でした。沢山質問させて戴きたいことがありましたので、ディスカッションの時間がもう少しあったらよかったです。
  • 中々疑義照会も躊躇する病院さんにこの様な会をしていただき感謝です
  • 親しみやすい雰囲気で内容も業務に直結していてわかりやすかった。
  • 初めてのZOOMによる参加講習会でしたが非常にご丁寧な進行とわかりやすいスライドで会場で受ける講習会のような安心感がありました。またこのような機会にぜひ参加をさせていただきたく存じます。
  • 疑義照会をしやすくなったと思います。
  • 意見交換の機会も非常に有意義であり、時間がもう少しあると良かったと思います。
  • がん治療、処方意図についてもお話しいただけたのがとても参考になりました。
  • とてもわかりやすかった。他の癌種についても講演をしていただければと思います。

次回開催について

第3回 薬薬連携を充実させるための研修会 ~TULIP PROJECT~
(Tukiji Unit LInk Pharmacists PROJECT)

令和3年1月25日(月曜日)19時から
第3回 薬薬連携を充実させるための研修会チラシ