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国立がん研究センター 中央病院

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第4回 薬薬連携を充実させるための研修会 開催報告

講義内容1)悪性リンパ腫の初回治療について(R-CHOP療法)
講演内容2)よくある疑義照会にお答えします
参加者の声

講演内容

講演(1):悪性リンパ腫の初回治療について(R-CHOP療法)
講師:担当薬剤師 中島 寿久 先生

1.悪性リンパ腫について

悪性リンパ腫はリンパ系腫瘍の一つで、リンパ球が「がん化」した病気です。国立がん研究センターがん情報サービスの「がん登録・統計」による悪性リンパ腫の本邦における発症数は 2015 年で年間約3万人、実罹患率は人口 10 万人対 23.7 人と報告されています。年齢調整罹患率でみると、悪性リンパ腫の発症は 1975 年と比較して 2015 年では約 3 倍に増加していることがわかります。組織学的には、ホジキンリンパ腫と非ホジキンリンパ腫に分類されますが、本法における非ホジキンリンパ腫の頻度は、全悪性リンパ腫の 90~95 % とされています。また、病型別に見た場合、本邦で多いリンパ腫病型は、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫 (diffuse large B-cell lymphoma:DLBCL) や濾胞性リンパ腫 (follicular lymphoma:FL)、成人T細胞白血病・リンパ腫 (adult T-cell leukemia-lymphoma:ATL) が挙げられます。このうち、DLBCL と FL は B 細胞リンパ腫に、ATL は T 細胞リンパ腫にそれぞれ分類されます。

2.R-CHOP 療法について

アグレッシブリンパ腫の代表病型である CD20 陽性の DLBCL に対する標準治療は、R-CHOP 療法です。R-CHOP 療法はリツキシマブ、シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、プレドニゾロンの併用療法になります(レジメン情報「CHOP療法(シクロホスファミド+ドキソルビシン+ビンクリスチン+プレドニゾロン)」(PDF:342KB))。

R-CHOP療法の副作用について~病院薬剤師の視点から~ 
R-CHOP 療法中に起こりうる副作用の中から、infusion reaction、悪心・嘔吐、感染症について解説します。(がん種別化学療法について 使用薬剤とその副作用「CHOP (チョップ)療法」) 
Infusion reaction 

リツキシマブは、 B 細胞表面の CD20 抗原に結合し、抗原抗体反応が活性化され、マクロファージや NK 細胞が B 細胞を攻撃する抗体依存性細胞介在性細胞障害作用 (antibody-dependent cellular cytotoxicity:ADCC) と補体依存性細胞障害作用 (complement-dependent cytotoxicity:CDC) を有しています。  

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リツキシマブの特徴的な副作用としては infusion reaction があります。Infusion reaction は特に初回投与時が起こりやすく、初回導入時は入院で行います。Infusion reactionの予防は、当院ではアセトアミノフェンとdl-クロルフェニラミンが使用されます。それでも症状が出現する場合は、ヒドロコルチゾンコハク酸エステルナトリウム注の投与が行われます。2 回目以降からの投与では infusion reaction のリスクは低下するため、外来で継続されることがほとんどです。

悪心・嘔吐

抗がん剤治療の制吐剤に関しては、ASCO、ESMO、NCCN、日本癌治療学会等が作成したガイドラインが存在します。R-CHOP療法は、投与している薬剤の組み合わせとしては高度催吐リスクに分類されます。高度催吐リスクで推奨されている制吐療法は、ニューロキニン1 (NK1) 受容体拮抗薬、5-HT3受容体拮抗薬、デキサメタゾンの3剤併用療法になりますが、R-CHOP 療法ではプレドニゾロンが治療として5日間投与されるため、デキサメタゾンは併用されません。また、高用量のプレドニゾロンが投与されることから、NK1 受容体拮抗薬については、患者さんのリスクを確認の上、投与の要否を検討していくことになります。予防的制吐療法が不十分な場合は、予防的制吐療法の強化や追加の制吐剤を併用することがありますので、患者さんのコース毎に症状の出現状況を確認することは大切です。

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骨髄抑制・感染症 

R-CHOP 療法の代表的な副作用は、骨髄抑制です。骨髄抑制として、白血球・赤血球・血小板といった血液成分が少なくなります。CHOP療法の場合では特に、白血球減少が最も強く出ます。白血球は好中球、好酸球、好塩基球、単球、リンパ球の5つの分画により構成されますが、その大部分を占めるのは好中球であり、白血球減少では、好中球分画の減少による場合がほとんどです。好中球減少により身体の抵抗力が低下し、感染症が発症しやすい状況になります。これまでの固形腫瘍に対する化学療法における解説と同様で、好中球減少自体は特に自覚はなく、感染を起こさなければ大きな問題はありません。ただし、発熱を認めるような場合 (発熱性好中球減少症:FN) は、注意が必要になります。FN 時は、治療の早期開始が重要となりますので、当院では多くの場合、発熱時の初期治療としてシプロフロキサシンまたはレボフロキサシンが処方され、発熱時に1週間を目安に服用を継続してもらいます。また、これら抗生剤を3日間服用継続しても解熱しない場合は、他の治療を検討することになります。

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また、R-CHOP 療法に伴う血液毒性としてリンパ球減少が起こることが多いため、Pneumocystis jirovecii による肺炎が惹起される可能性があります。そのため、これに対しても ST 合剤などの予防投与が行われます。 
この他に、リツキシマブ投与により B 型肝炎ウイルス (HBV) の再活性化が報告されており、治療開始前に HBV の感染状況の確認も重要となります。感染状況に応じて HBV に対してエンテカビルなどの抗ウイルス薬の予防投与や、継続的なモニタリングを実施することは重要です。

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末梢神経障害

ビンクリスチンは軸索障害を引き起こす薬剤になります。ビンクリスチン投与に伴う末梢神経障害は、両側性が特徴的で、便秘や嗄声等も起こることがあります。また、下肢よりも上肢で症状が早く出現することが多く、治療中止後も症状が遷延することがしばしばあります。このような末梢神経障害には、確立された予防法や治療法がありません。症状の悪化が生活の質に影響を及ぼすことが予測されることからも、治療効果を含めて、適切な減量と休薬を考慮することがオキサリプラチン同様、大切になります。

3.まとめ

R-CHOP 療法は、主に外来で実施される治療になります。この治療では定期的な副作用モニタリングが非常に大切となります。院外処方箋が発行されている場合には、保健薬局に必ず立ち寄ると思いますので、外来治療を受けている患者さんにとって、保健薬局の皆さまは重要なサポーターの一人になります。是非、協働して、患者さんの治療をサポートしていきましょう。

講演(2):よくある疑義照会にお答えします
回答者:血液腫瘍科 病棟医長 棟方 理 先生
質問者:薬剤師 吉野 麻結 先生

血液腫瘍科 病棟医長 棟方 理 先生をお招きし、対談形式にて薬剤師からの質問にお答えいただきました。当日のQ&Aの一部を紹介します。

Q:R-CHOP療法のkey drugとなるプレドニゾロンに関して、どのような患者さんで減量を考慮しますか? また、糖尿病を有する患者さんで、処方において工夫をされることがあれば教えてください?。
A:悪性リンパ腫の治療において、プレドニゾロンは抗腫瘍効果を有するお薬として主に処方します。治療強度を維持するために、できれば減量しないことを検討しますが、当院の血液腫瘍科の指針としては、閉経後の女性では60mg/日として3~5日間に減量を考慮します。ステロイドの服用による骨強度の低下は必発であり、骨折のリスクを考慮しての対応となります。糖尿病の患者ではやはり血糖コントロール不良となることを懸念して、コントロール状況によっては半量に減量するケースもあると思います。糖尿病を診てもらえるかかりつけ医をお持ちの患者さんの場合には、定期的なフォローが前提になりますが、できるかぎり減量せずにフルドーズでの実施を心がけます。

Q:悪性リンパ腫の場合、腫瘍崩壊症候(TLS)に注意するようにと教わったことがありますが、TLSはどのような方で起こるリスクがあるのでしょう?
A:まず、TLSは抗がん薬や放射線治療によって大量のがん細胞が短期間で壊された場合に、がん細胞の「死がい」などによって、高尿酸血症、高リン酸血症、低カルシウム血症、代謝性アシドーシス、高カリウム血症、腎不全、呼吸不全などのいろいろな状態が生じる病態です。TLSは早急な治療介入が必要で時として致死的であるため“oncologic emergency”の一つとされています。どのような腫瘍がTLSを引き起こすリスクがあるのかと言いますと、いわゆる「腫瘍量が大きく、しかも薬物感受性が高い腫瘍」になります。この点からわかると思いますが、TLSを起こしやすい疾患には血液がんが多く、悪性リンパ腫であれば、中高悪性度に分類される疾患において一定の割合でTLSが起こり得ると言われています。悪性リンパ腫においては、検査値のLDH(乳酸脱水素酵素)が腫瘍量を反映した指標として用いられることがあり、LDH高値の場合、TLS発現リスクが上がると考えられています。TLSは、一般的に治療開始後 12 時間から 72 時間以内に起こります。したがって、最近では外来での化学療法が増えていますが、TLS発現リスクが高い患者さんでは、初回治療を入院下で行うようにします。そして、TLSリスクが下がってから外来治療に移行します。 

Q:R-CHOP療法のkey drugであるビンクリスチンの副作用として、末梢神経障害が代表的ですが、どの程度のしびれが生じるのでしょうか?また、治療終了後にもしびれは継続するものでしょうか?
A:しびれの程度には個人差がありますが、投与回数が増えるにつれ、しびれは増強すると言われています。症状の程度は、Common Terminology Criteria for Adverse Events (CTCAE)を用いて行い、Grade3(身の回りの日常生活動作が制限される程度)以上ではビンクリスチンの投与を中止するか否かを判断します。ビンクリスチン投与中止後以降も症状はしばらく続くことがあり、症状の軽減にかかる期間は、年単位から月単位まで個人差があります。

Q:感染予防としてスルファメトキサゾール・トリメトプリム(ST合剤)を使用する場合、どれくらいの期間服用を継続するものでしょうか?また、ST合剤の用法用量について、連日投与や週2回投与がありますが、使い分けはありますか?
A:ニューモシスチス肺炎予防としてST合剤を処方する場合の継続期間は、化学療法終了後半年ぐらいが目安になると思います。治療継続の可否を検討する上で、実臨床ではCD4 リンパ球数を指標にしています。 
ST合剤の用法用量については、服薬アドヒアランスを第一に考慮すると、飲み忘れがないように連日投与にしています。腎機能障害を有する患者さんの場合には、選択肢のひとつとして、例えば、週3回投与、あるいは1回半量へ減量するなどして調節しています。

Q:ST合剤の同種同効薬として、アトバコンやペンタミジン吸入がありますが、使い分けについて教えてください。
A:ST合剤は、ニューモシスチス肺炎予防に対する有用性のエビデンスが確立しており、また、薬価が安く、患者さんの経済的負担も少ないというメリットがあります。ただし、副作用として、皮疹あるいは腎機能低下を惹起することがありますので、副作用により使用困難と判断した際には、当院ではペンタミジン吸入を選択することがあります。ペンタミジン吸入ができない場合には、アトバコンの内服へ切り替えることになりますが、ST合剤と比較して薬価が高い分、処方しにくいというのが現状です。

Q:日常生活の中で、化学療法中の患者さんが注意すべき点があれば教えてください。
A:食事に関して、化学療法中に生ものを控えてくださいなどのコメントを耳にすることがありますが、一般的に、食事制限を行う必要のある対象者は、例えば、入院加療となる白血病治療のように重度の骨髄抑制が生じる治療中の患者さんになります。一方で、外来治療をされている患者さんには、特に食事制限はかけていません。公共交通機関の利用に関しても、感染予防対策を行っていただければ、特に制限はありません。ただし、R-CHOP療法を実施される患者さんに対しては、リツキシマブによるinfusion reaction予防目的で当日に抗ヒスタミン薬を服用してもらうことから、ご本人の運転での通院は控えるように説明しています。

Q:R-CHOP療法を実施している患者さんが、受診日から次の受診日までの期間の自宅療養中に心がけてほしい点があれば教えてください。
A:感染症には十分に注意をしてほしいです。その点で、できるかぎり体温を決められた時間に測るようにお願いしています。もし、38度以上の熱を認めた場合には、抗菌薬が事前に処方されていれば、抗菌薬をすみやかに服用してほしいと思います。化学療法期間中の発熱では、発熱性好中球減少症(FN)を発症しているおそれがありますので、緑膿菌活性を有するニューキノロン系抗菌薬が選択肢になります。抗菌薬を服用後2,3日経過しても解熱しない場合には、必ず医療機関へ連絡するようにお願いしています。

Q:R-CHOP療法により脱毛が生じることがあると思いますが、脱毛への対症療法として、育毛剤の使用についてはいかがでしょうか?
A:抗がん剤により皮膚障害が出現することがありますし、皮膚への刺激により炎症を引き起こすおそれがあると思いますので、基本的には、育毛剤の使用は控えるように説明しています。

Q:サプリメントの摂取について先生のご意見をおきかせください。
A:基本的には、サプリメントの摂取はおすすめしていません。患者さんには極力控えるように説明しています。サプリメントによる肝障害・腎障害や皮疹などの発現を疑う事例があります。保険薬局の薬剤師さんに対して、患者さんからサプリメント摂取に関する質問があった際には、どうしても摂取したいと言う人には主治医に必ず相談すること、隠れて服用しないように指導してほしいと思います。

Q:保険薬局薬剤師の方々にコメントがありましたら、是非お願いします。
A: 処方せんに疑義がある際には、これまでどおり疑義照会を是非してほしいと思います。CHOP療法に関していえば、プレドニゾロンは5日間服用のスケジュールですが、患者さんの理解が不十分で1日しか服用していなかったというケースを経験したことがあります。是非、おくすりを患者さんにお渡しする際に、是非、治療スケジュールの理解度や服薬状況を確認していただきながら、服薬指導を行なっていただきたいと思います。また、薬剤師さんの目線から得られた情報を是非、我々にフィードバックしていただければと思います。 

参加者の声

研修会当日にご回答いただきましたアンケートを一部ご紹介させていただきます。 

  • 悪性リンパ腫の患者と接する機会がなく、なかなか勉強できない部分を研修でやっていただけるのが助かります。 
  • 医師への質疑応答がとても勉強になりました。 
  • 医師が質問に丁寧に答えてくれるので、とても勉強になります。 
  • 毎回非常に勉強になる内容のテーマであり、WEB講習会でこのような貴重な経験ができることは嬉しい限りです。今後も定期的な開催を期待いたします。 
  • 講義内容をホームページに公表していただけるので、薬局のみんなで知識を共有でき、とてもありがたいと思っています。 
  • 非常に勉強になりました。自分の地域での薬薬連携でも活かせていければと考えています。