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国立がん研究センター 中央病院

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第3回 薬薬連携を充実させるための研修会 開催報告

講義内容1)膵がんの初回治療について(mFOLFIRINOX療法)
講演内容2)よくある疑義照会にお答えします
JASPO研修生にインタビュー
参加者の声

講演内容

講演(1):膵がんの初回治療について(mFOLFIRINOX療法) 
講師:肝胆膵内科担当薬剤師 西渕 由貴子 先生

内容のサマリー

切除可能な膵がんでは、根治を目指した治療が行われます。

1.切除不能膵がんの化学療法について

膵がんの治療は、他のがん種同様、手術の有無によって大別されます。切除可能~切除可能境界型膵がんでは術前・術後化学療法を、局所進行、遠隔転移のある切除不能膵がんでは予後延長を目的とした全身化学療法が行われます。
今回は、切除不能膵がんに対する全身化学療法がテーマとなります。

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切除不能膵がんに対する治療は、フルオロウラシル関連レジメンとゲムシタビン関連レジメンに大別されます。フルオロウラシル関連レジメンには、mFOLFIRINOX、S-1、オニバイド+5FU/l-LVが含まれ、ゲムシタビン関連レジメンには、GEM+nabPTX、GEM、GEM+エルロチニブが含まれます。膵がんガイドラインでは、全身状態の良い遠隔転移を有する切除不能膵がんに対する一次治療として、mFOLFIRINOX(レジメン情報「mFOLFIRINOX療法」PDF:384KB)またはGEM+nabPTX(レジメン情報「ゲムシタビン+パクリタキセル アルブミン懸濁型 併用療法」PDF:316KB)が推奨されています。
mFOLFIRINOX療法を施行している患者さんは、皮下埋込み型の中心静脈カテーテルを留置して治療を行っています。また、5FUの持続静注に使用されるインフューザーポンプは温度センサーが付いており、肌に固定することで一定の速度で持続投与が可能となります。これらの管理については、看護師より、温度センサーは固定されているか、時間の経過とともに薬液が減っているかなどを確認するように患者さんに指導しています。その際に、何かトラブルがあれば、病院へ連絡するようにも指導しています。

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2.mFOLFIRINOX療法の副作用について~病院薬剤師の視点から~

mFOLFIRINOX療法中に起こりうる副作用の中から、悪心・嘔吐、下痢、末梢神経障害、骨髄抑制について解説します。(がん種別化学療法について 使用薬剤とその副作用「mFOLFIRINOX (フォルフィリノックス) 療法」)

悪心・嘔吐

抗がん剤治療時の制吐剤に関しては、ASCO、ESMO、NCCN、日本癌治療学会などが作成したガイドラインが存在します。mFOLFIRINOX療法は使用する薬剤を個別に見ると催吐性リスクは中等度ですが、複数の薬剤を併用して行う治療ということもあり、高度催吐性リスク(90%以上に症状が発現)に分類されています。制吐療法は、悪心・嘔吐の発現の予防が目標となります。高度催吐性リスクで推奨されている制吐療法は、ニューロキニン1(NK1)受容体拮抗薬、5-HT3受容体拮抗薬、デキサメタゾンの3剤併用療法になります。この予防的制吐療法でコントロールが不十分な場合、当院では次のような薬剤を追加の制吐剤として併用することがあります。

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オランザピンに関しては、糖尿病症例に対して禁忌であるため、特に膵がん患者では事前に既往歴の確認が必要です。消化器症状を評価するポイントとして、発現時期、頻度、持続期間に加えて、腸管閉塞や電解質異常などの合併症、併用薬についても聴取し、総合的に判断する必要があります。

血糖管理

膵がん患者においては、血糖管理が大切になります。化学療法継続によるステロイドの繰返し投与により、糖尿病が顕性化する可能性が予測されます。しかし、ステロイドの安易な減量は、消化器症状の悪化を招き、治療効果に影響を及ぼす可能性があります。当院では、mFOLFIRINOX療法の初回導入を入院で行うため、インスリンのスライディングスケールを併用して対応しています。その推移を確認した上で、必要であれば糖尿病専門医に介入依頼し、患者さんに合わせた血糖管理目標の設定を行なっています。
化学療法を継続している患者さんは、悪心・嘔吐などの消化器症状、食事量の変動、発熱などの体調不良をきっかけにシックデイを発症しやすい状況にあります。発症時の対応としては、脱水の予防、低血糖、高血糖への対処法、食欲不振時の使用薬の調整が大切になります。よって患者さんには、食事摂取不良時の服用薬やインスリンの使用について、また低血糖症状やその対処法について理解しているかを確認していただければと思います。

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下痢

イリノテカンは便排泄の薬剤です。イリノテカンは肝内のカルボキシエステラーゼによって活性代謝物であるSN-38へ変換されます。SN-38はグルクロン酸転換酵素により抱合体に変換され、胆汁から腸管内へ排泄されます。腸管内では、一部の抱合体が脱抱合され、再度、活性代謝物であるSN-38へ変換されます。腸管内で変換されたSN-38が腸管粘膜を傷付けることで、遅発性の下痢が出現することが知られています。したがって、mFOLFIRINOX療法を行っている患者では、次の2パターンの下痢が考えられます。1つは早発性の下痢で、これはイリノテカンによるコリン作動性の下痢です。イリノテカン投与中~24時間以内に出現し、腸管蠕動が亢進することが原因です。流涙、発汗、鼻汁などの症状を伴うこともあり、抗コリン薬で対応します。2つ目は遅発性の下痢で、これはイリノテカンや5FUによる腸管粘膜障害が原因です。投与数日後に出現することが多く、ロペラミドなどの止瀉薬で対応します。

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末梢神経障害

オキサリプラチンは神経細胞体障害を引き起こす薬剤です。オキサリプラチンの末梢神経障害には、急性期のものと遅発期のものが存在し、急性期症状としては一過性の感覚障害や冷感刺激症状、咽頭の絞扼感があります。これは、投与数日で回復する症状と言われており、有症状時には、冷たい飲み物を避けること、皮膚を露出しないことなどを指導しています。また、慢性期症状としては蓄積性の感覚障害があり、酷くなると治療終了後も症状が持続すると言われています。このような末梢神経障害には、確立された予防法や治療法はありません。よって、症状が悪化するとQOLに影響を及ぼすことが予測されるため、治療効果も含め、適切な減量と休薬を考慮することが大切です。ここに示すように症状緩和として使用される薬剤もありますが、積極的に使用を推奨している訳ではありません。

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骨髄抑制

抗がん剤の影響で好中球が減少すると、病原体と戦う身体の抵抗力が低下して感染症が発症しやすくなります。好中球減少自体は、特に自覚症状はなく、感染を起こさなければ大きな問題はありません。しかし、発熱を認めるなど感染を併発した場合は、要注意です。
発熱性好中球減少症(FN)は、がん化学療法により好中球が減少している時期に発熱する状態をさします。FNは致死的になり得るため、適切な抗菌薬治療を速やかに開始することが必要です。FNの原因微生物の1つである緑膿菌などのグラム陰性桿菌による感染症は死亡率が高いことから、FNの初期治療として、抗緑膿菌活性を有する抗菌薬を選択することが必須とされています。当院ではシプロフロキサシンまたはレボフロキサシンが処方されることが多いです。

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このような抗菌薬が処方されますが、他の要因(胆管炎、胆嚢炎、肝膿瘍など)との鑑別を意識することはとても重要となります。

3.外来でがん治療を受ける患者さんに安心して治療を受けてもらうための取り組み

外来でがん治療を実施するにあたり、治療中の患者に対する副作用の把握と対策が必要です。しかし、患者さんは大半を在宅で過ごしていることから、在宅時の副作用を正確に、そして、随時把握することは容易ではありません。
当院では、がん治療に伴う症状について困りごと・相談したいことがある場合は、通院で治療を受けている患者さん専用の相談ダイアル(外来化学療法ホットライン)があります。ここでは、支持療法薬の使用法や服薬方法に関する相談を医師、薬剤師、看護師が受け、適切な対応を行っています。このような相談窓口を設けることで、患者さんにできるだけ安心して治療を受けてもらえる環境づくりを行っています。
一方で、保険薬局薬剤師さんだからこそできることがあると考えています。改正薬機法施行で服薬フォローが義務化されました。がん治療を受けている患者さんへのフォローアップでは、体調の変化や副作用の確認、処方されている支持療法の適切な使用方法の提供などが求められると思います。保険薬局のみなさまと協力しながら、患者さんのサポートをしていくことが、安心・安全な薬物治療につながると信じています。
今回の講義が外来でがん治療を受ける患者に対する副作用マネジメントの一助になれば幸いです。

講演(2):よくある疑義照会にお答えします 
回答者:通院治療センター長/肝胆膵内科医長 近藤 俊輔 先生
質問者:薬剤師 田中 友紀 先生 

当院 通院治療センター長/肝胆膵内科医長の 近藤 俊輔 先生をお招きし、対談形式にて薬剤師からの質問を近藤先生にお答えいただきました。 
当日のQ&Aの一部を紹介します。 
1.血糖コントロールについて 

Q:膵がん患者さんでは、原病の影響などで糖尿病を発症されている方がいらっしゃると思います。そのような方では、抗がん剤治療の支持療法目的で使用されるデキサメタゾンの服用による血糖上昇に注意が必要だと考えますが、近藤先生はどのように対応されていますか?
A:糖尿病の患者さんでも、原則、デキサメタゾンの使用を検討します。例えば、HbA1cが8.0%以上なら減量を考えますが、それ以下なら、デキサメタゾンの減量はしないことが多いです。血糖値では200mg/dL付近でも同様に、デキサメタゾンの減量はしないことがほとんどです。

Q:血糖コントロール不良の患者さんに対して、食事療法について説明されていますことはありますか?
A:膵がん患者さんでは、食事摂取量が低下していることが多いため、食事制限をかけるケースは少ないように思います。食べられるのであれば、好きなものを食べてよいとお伝えすることが多いです。

Q:化学療法中に食欲不振で食事が摂れない場合に、経口血糖降下薬の対応について教えてください。
A:低血糖には注意する必要がありますが、基本的には、服用してもらって大丈夫だと考えています。経口摂取が全くできない場合には、患者さんの体調を確認した上で、スキップするようにお伝えすることがあります。

2.排便コントロールについて 

Q:膵がん患者さんとのお話の中で、下痢を訴える方が多い印象があります。原因は何でしょうか?また、下痢に対して、どのようなお薬を処方されますか?
A:下痢が生じる時期によって原因がある程度、予想できます。膵がん患者では、膵臓の機能が低下することで、消化液の分泌不足による消化不良を起こしやすくなります。そのため、下痢が生じることがあります。その場合は、パンクレリパーゼなどの膵消化酵素補充薬を処方することがあります。化学療法による下痢の場合は、化学療法を行った2,3日後に症状が出ることがあります。その場合は、ロペミン、コデインなどを処方することが多いです。 

Q:便秘の患者さんから、便秘薬の使い分けについて相談を受けることがあります。是非、アドバイスをお願いいたします。
A:便秘薬を処方する際は基本的に、頓服での服用指示よりも、決められた時間での服用指示で処方します。患者さんによっては、腸閉塞を発症することがあるので注意が必要ですが、慢性的に便秘を訴える患者さんの場合には、薬局薬剤師さんが考える飲み方をすすめていただければと思います。。 

3.内服抗がん剤について 

Q:膵がん患者さんに対して処方される代表的な内服抗がん剤として、S-1があると思いますが、膵がん領域ではどのような使い方をしますか?
A:術前、術後補助療法、あるいは切除不能膵がんの治療として、多くの場面で処方することがあります。S-1のスケジュールについては、添付文書を参考にされると思いますが、添付文書と異なるスケジュールにて服用するケースに遭遇したことがあるかもしれません。薬剤師さんは、処方箋内の用法用量に疑問を感じた場合に疑義照会を行うと思いますが、患者さんの全身状態やQOLを考慮しながら、スケジュールを調整していることがあります。

4.発熱ついて 

Q:患者さんから、発熱したと相談を受けることがあります。膵がん患者さんが発熱した際に、どのような点に注意するべきでしょうか?
A:発熱の原因は、いくつか考えられます。例えば、腫瘍熱、薬剤熱、発熱性好中球減少症、胆管炎など、さまざまな要因があげられます。発熱以外にどのような症状があるのかを確認することが大切です。また、発熱が生じる時期によって、原因を考えるヒントになると思います。例えば、抗がん治療1週間後であれば、発熱性好中球減少症として対応する必要があります(講義(1)2.mFOLFIRINOX療法の副作用について~病院薬剤師の視点から~「骨髄抑制」の項を参照)。
発熱を認めた場合、すみやかな治療が必要になると思いますので、発熱を有する患者さんには、主治医へ連絡するように促してほしいと思います。

JASPO研修生にインタビュー

保険薬局薬剤師の方へインタビューし、研修会を受けた感想をお伝えします。

今回は、令和3年1月18日から3月2日の期間に実施された日本臨床腫瘍薬学会 がん薬物療法認定薬剤師養成研修を当院で受けられた保険薬局薬剤師4名の先生方に、TULIPプロジェクト「薬薬連携を充実させるための研修会」を受講された際の感想を伺いました。

齋藤:1月21日に開催された薬薬連携を充実させるための研修会(テーマ「膵がん」)にご参加いただいた際の率直なご感想をお聞かせください!

赤嶺先生:2か月に1回の頻度で研修会を行っているとのことですが、一回の内容がとても濃く勉強になるため、1か月に1回でもやっていただきたい!大変だとは思うのですが。

一同:(笑) 

山根先生:録画で1週間見られるようにしていただけたら、振り返って繰り返し見ることができるので、尚嬉しいですね!

齋藤:長さはいかがでしたでしょうか? 

一同:ちょうど良いです!

寺越先生:業務の後なので、集中できる長さでちょうど良かったです! 

山根先生:薬局と病院では、フォローすべき点が異なると思います。薬局でも最近では処方箋に検査値などが記載されている場合もありますが、基本的には非血液毒性の副作用に対するフォローの仕方についてもっと学んでいきたいです。また、薬局では、昨年の9月から継続的な電話フォローもできるようになったため、そういった点で薬局の強みをより活かせるようなアドバイスを今後もお願いします!

吉川:今回、当院での実地研修に参加して感じたご感想をぜひお聞かせください。例えば、ご自身の薬局での業務に戻られた際に、活きてくると感じたことなどありますか?

寺越先生:薬局だと、業務の傍らで、がんについて勉強する機会がなかなか作れないのが現状です。抗がん剤のことは知っていても、疾患や治療体系に関しては、教科書だけでの知識では、患者さんを前にしてもイメージがわかないと思うのですが、実地研修を通して、レジメン、点滴や支持療法も含めて、これまで漠然とした知識だったものが、確かな知識になると感じました。

澤井先生:この研修中、病棟担当の先生方が患者さんから聞き取っている際に、色々なことを考えて評価し判断されている様子を見て、そこがとても参考になるなと思いました。そのような症例の話ももっと伺いたいです。実際にそのような内容は頭に残りますし、我々の服薬指導にも活きてくるなと感じました!

吉川:症例検討のような内容ですね!

山根先生:先生方が頭の中で考えていることを知りたいですね!そのようなお話を聞いたことは今でも記憶に残っています。

渡部:次回第4回は「悪性リンパ腫」になります。まだまだ取り上げていないがん種も控えているので、今頂いたご意見を参考に、我々もTULIPプロジェクトの研修会を積み重ねながら勉強していくことで、薬局の先生方と一緒に成長していけたらと考えております。

齋藤:貴重なご意見・ご感想をありがとうございました。

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  • JASPO研修生
    赤嶺 美奈 先生
    澤井 一 先生
    寺腰 崇志 先生
    山根 孝太 先生
  • 当院職員
    渡部 大介
    吉川 真帆
    齋藤 麻衣

インタビュー:2月25日
 

参加者の声

研修会当日にご回答いただきましたアンケートを一部ご紹介させていただきます。 

  • オンラインなので参加できました。対面であれば閉店後に駆けつけることになり、参加はできなかったと思います。コロナが終息してもオンライン開催を希望します。 
  • 膵がんは難しいと思っていましたがわかりやすかったです。 
  • 講義形式の講演だけでなくQ&A形式の講演もあ、明日からの業務にとても役立つ内容と感じました。有意義な研修でした。 
  • 患者投薬時に安全に安心して治療きるように勉強していきたいと思います 
  • 過去の内容をホームページ見られること、ありがたいです。ホームページを利用し、WEB開催終了後も学ばせていただきます。