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mFOLFIRINOX (フォルフィリノックス) 療法

mFOLFIRINOX (フォルフィリノックス) 療法は膵がんに効果を示すといわれている治療法です。

使用する抗がん剤

オキサリプラチン注

オキサリプラチンは、日本で開発されたプラチナ(白金)系の抗がん剤です。がん細胞のDNAと結合することで、DNAの歪みをつくり出し、がん細胞の増殖を抑え、腫瘍を小さくする作用を持つ薬剤です。

イリノテカン注

イリノテカンは、中国原産の喜樹から取り出した成分から合成した抗がん剤です。細胞の分裂の際DNAの分裂が進まないようにする働きがあります。その結果、がん細胞が増殖することを阻止し、やがて死滅させます。

レボホリナート注

レボホリナートは、ビタミンの一種です。この薬剤自体に抗がん作用はありませんが、この後に投与するフルオロウラシルの働きを高める作用があるため組み合わせて使います。

フルオロウラシル注

フルオロウラシルは、がん細胞の増殖に必要なDNA合成を阻害し、RNAの機能を傷害することで、がん細胞の成長を抑えたり、腫瘍を縮小する作用を持つ薬剤です。

mFOLFIRINOX療法では、フルオロウラシル急速静注を省略し、持続点滴のみ行います。

mFOLFIRINOX療法の副作用

予想される主な副作用

自覚症状があるもの

食欲不振、吐き気・嘔吐、下痢、末梢神経障害、便秘、口内炎、発熱、疲労感、発疹、脱毛、手足症候群など

自覚症状がないもの

骨髄抑制(白血球減少・赤血球減少・血小板減少など)、肝機能障害、腎機能障害 など

消化器症状

食欲不振・吐き気・嘔吐 (長く続くと脱水状態など全身状態の悪化につながります)

抗がん剤によって引き起こされる吐き気や嘔吐には、次の3種類があります。

  1. 点滴直後から数時間以内にみられるもの
  2. 点滴終了後24時間以降にみられ、数日続くもの
  3. 薬を点滴すると思っただけで起こるもの

最近では、吐き気止めの薬でコントロールできるようになっています。体調の異常を感じたら、遠慮せずに医師・看護師・薬剤師にお伝えください。

長く続くと脱水症状などから全身状態の悪化につながるので、水分補給(水・フルーツジュース・スポーツ飲料など)を心がけましょう。

末梢神経障害(冷たいものを飲む、触れるときには注意しましょう)

こういった症状は特に冷たいものに触れたり、飲食することで手足や口の周囲にしびれや痛みを感じることがあります。投与直後から1~2日以内に手足や口の周り、のどに症状がみられ、2週間のうちに症状は回復するとされています。

しかし、治療を繰り返すうちにこういった症状が2週間以上持続する場合があります。また症状が悪化することで、「ボタンをかけにくい」、「しびれで歩きにくい」などの影響が出ることもあります。このような場合には、お薬の量を減らしたり、治療の間隔を延長したり、治療を中止するといった対応をとる場合もあります。

下痢(長く続くと脱水などから全身状態の悪化に)

抗がん剤による下痢には、次の2種類があります。

  •  点滴中、あるいは直後から翌日にかけてみられるもの
  •  点滴終了後24時間以降にみられ、数日間続くもの

投与後、数日経ってから現れる下痢は、抗がん剤で腸管の粘膜が障害されることにより起こります。重症の下痢を起こした場合、粘膜の防御機構の働きが低下して感染の危険があります。また、症状が長く続く場合は、水分や栄養の補給が必要になってきます。症状が重い場合・継続する場合には、医師・看護師・薬剤師に連絡しましょう。

骨髄抑制

白血球の減少 (感染症にかかりやすくなります)

白血球は体内へ細菌が入り込まないように守り、感染症を防ぐ重要な役割があります。白血球が減少すると、体の抵抗力が低下して感染症にかかりやすくなります。一般的に薬を点滴してから1週間前後に白血球の数が少なくなるといわれています。白血球がかなり減少している場合は、白血球を増加させる薬を使うことがあります。また、発熱や感染症の可能性がある場合は、抗生剤を服用したり、点滴を受けたりすることもあります。感染症を引き起こさないようにするため、感染しても悪化させないためにも、早めの対策を心がけましょう。

赤血球減少 (貧血症状につながります)

めまい・立ちくらみ、冷え、だるさ、息切れ、動悸などの症状があります。貧血の程度が著しい場合は、輸血を行うこともあります。

血小板減少 (出血しやすくなります)

血小板は、血液を固まりやすくする働きがあります。血小板の数が少なくなると、出血しやすくなります。血小板の数が少なくなり、出血傾向がみられる場合は、輸血を行うこともあります。身に覚えのない内出血や血便・血尿・鼻血などが見られたら、すぐに連絡してください。

脱毛(治療が終われば回復し始めます)

治療開始後2週間から3週間過ぎたころから髪の毛が抜け始めます。朝起きた時に枕についた髪の量や、洗髪した時に抜ける髪の量の変化で気づくことが多いようです。

口内炎(食べ物がしみる、痛みや歯ぐきの腫れ)

口内炎が感染症の原因にもなることがあります。口腔内を清潔に保つためにうがいをこまめにしましょう。歯ブラシは毛の柔らかいものを使い、やさしくブラッシングしましょう。食べ物は熱いものを避け、なるべく柔らかいものを食べるとよいでしょう。症状によっては、うがい薬や塗り薬を用いることがあります。

手足症候群(手足の症状が出たらお知らせください)

治療開始後数週間過ぎたころから、手のひらや足の底の皮膚が赤くなったり、ヒリヒリ・チクチクした感じ、知覚過敏、ほてりや腫れといった症状が見られることがあります。このような場合には、保湿剤やステロイドの入った軟膏剤を塗ったり、治療までの期間を延長したり、抗がん剤の量を減らしたりする場合もあります。気になる症状がありましたら担当医にご相談下さい。

色素沈着(直射日光は避けましょう)

治療後数週間してから、皮膚にしみができたり、爪が黒くなることがあります。直射日光にあたるところに出来やすいとの報告もあるので、日差しの強い場所を避け、外出時は帽子や衣類で直射日光を避ける事で予防になるかもしれません。

味覚への影響(食べ物が苦い・金属の味がする)

味覚への影響として、味が感じにくくなったりすることがあります。普段食べ慣れている味に違和感を感じたりすることもあります。

便秘(早めの対応を)

長期になると、食欲不振や吐き気の原因にもなります。水分を十分に取りましょう。排便を我慢せずに十分に時間をかけて排便する、毎日同じ時間帯にトイレに座ってみるようにする、など心がけるとよいでしょう。体調がよければ適度な運動(散歩など)も効果的です。連日排便がない場合は、状況に応じて下剤を用いることもあります。

アレルギー反応(気が付いたらすぐお知らせください)

オキサリプラチンの点滴中や終了後に、発疹、痒み、息苦しさなどの症状が現れることがあります。特に点滴開始から30分以内で症状が現れることが多いようです。点滴を繰り返し、5コース目以降になると出やすくなります。上記の症状が出た場合には、すぐに医師、薬剤師、看護師などにお知らせください。

発汗(気になる場合はお知らせください)

イリノテカン点滴中や終了後に、汗をかきやすくなることがあります。この症状は、時間の経過とともに和らぐことが多いので、心配はいりません。ハンカチなどを用意するのもよいでしょう。症状が気になる場合には、医師、薬剤師、看護師などにご相談ください。

mFOLFIRINOX療法の重大な副作用

「重大な副作用」と呼ばれるものには次のようなものがあります。どんな薬にもそれぞれ「重大な副作用」があり、まれではあるものの起こると重篤になってしまうものをいいます。

間質性肺炎(咳、息切れ、発熱など)

日頃から自分の体調に変化がないか意識し、風邪に似た症状がないかどうかをチェックするようにしてください。

間質性肺炎は、頻度はごく少ないものの、ときに重い症状になる恐れがあり、特に注意すべき副作用です。肺が炎症を起こし、機能が低下するので、息切れ・咳・呼吸困難などの症状が現れます。初期には、軽度の発熱や咳など、風邪とよく似た症状が現れることが多く、ただの風邪と見過ごされやすいことがあるので、このような症状がある場合は、自分で判断せずにすぐに相談してください。疑いがあるときには、速やかに必要な検査を行い、適切な治療を行います。

その他の重大な副作用

  • アナフィラキシー症状:発疹、蕁麻疹、呼吸困難、血圧低下
  • 呼吸器感染:発熱、咳、痰
  • 敗血症:悪寒、発熱、倦怠感
  • 腸炎:下痢、腹痛、嘔吐
  • 胆管炎・胆嚢炎、胆汁うっ滞:発熱、黄疸、右上腹部痛
  • 肝膿瘍:発熱、腹痛
  • 播種性血管内凝固症候群: 出血傾向、意識障害、呼吸困難
  • 白質脳症、精神・神経障害: ふらつき、しびれ感、舌のもつれ
  • うっ血性心不全、心筋梗塞、不安定狭心症: 疲労感、胸痛
  • 心室性期外収縮:動悸
  • 急性腎不全:食欲不振、嘔気、倦怠感
  • 高アンモニア血症:意識障害、倦怠感、吐き気 
  • 肺塞栓症、血栓塞栓症:胸痛、息切れ、呼吸困難
  • 脳梗塞:顔や手足の麻痺、呂律不良、めまい
  • 消化管出血、胃潰瘍、腸管狭窄:吐き気、胃痛、吐血、血便
  • 深部静脈血栓症:下肢むくみ、疼痛
  • 胸水:息切れ、胸痛、咳
  • 血糖上昇:のどの渇き、疲れやすさ
  • 肝酵素上昇・血中ビリルビン増加 
  • 嗅覚脱失
  • うつ症

その他、気になる症状がありましたら、医療スタッフにご相談ください。

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