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国立がん研究センター 中央病院

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令和3年度 第1回 薬薬連携を充実させるための研修会 開催報告

講義内容1)免疫チェックポイント阻害薬の副作用マネジメント
講演内容2)よくある疑義照会にお答えします

講演内容

講演(1):免疫チェックポイント阻害薬の副作用マネジメント
講師:消化管内科・頭頸部食道内科担当薬剤師 大塚 亮 先生

1.irAEの特徴

irAEとは、免疫関連有害事象(immune-related Adverse Events)のことで、主に免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の投与により引き起こされる副作用を指します。irAEは従来の殺細胞性抗がん剤による副作用と大きく異なり、その多くは正常組織に対する過剰な免疫反応に由来します。そのため、全身の多臓器に渡って出現する可能性があります。下痢や皮膚障害など自覚症状がはっきりしているものもありますが、内分泌障害など自覚症状に乏しく検査によってわかるirAEもあるのが特徴です。

2.発現時期について

抗PD-1抗体であるニボルマブでは皮膚障害が5~6週からみられ、次いで消化管、肝機能、内分泌系に対する障害が生じ、投与開始後10~20週前後で発現する傾向にあります。

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抗CTLA-4抗体のイピリムマブによるirAEでは、皮膚障害が2~3週後に、次いで消化管および肝障害が5~6週後に、内分泌障害が9週後以降に生じる傾向があり、大部分が治療開始後12週までに出現を認めます。抗PD-1抗体よりも抗CTLA-4抗体のほうが早期に発現する傾向があります。

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一方で、irAEは治療中だけでなく終了後も起こりうることを認識することが重要です。ICI終了後から遅発性irAE発現までの期間中央値は6ヵ月というデータがあります(J Immunother Cancer.2019;7時16分5)。そのため、ICI治療終了後もirAE発現の可能性に注意する必要があります。

3.irAEのマネジメント

本来は、ICI治療を中断させることなくirAEの管理を行うことが一番望ましいのですが、軽症の皮膚障害や内分泌系irAEを除いて多くの場合、一時的なICIの休薬、もしくは永続的な中止が必要となることを念頭においたマネジメントが重要です。
irAEの重症度Grade1では、一般的には治療的介入を必要せず多くの場合ICI継続は可能です。しかし、肺障害などでは、必要に応じて一時的な休薬の上、経過観察を必要とする場合があります。
Grade2以上では、ICIの休薬または中止を必要とし、症状改善目的にステロイド投与を検討します。ステロイド内服を開始したにも関わらず改善しない場合は、ステロイドパルス療法など高用量ステロイドを実施する場合があります。なお、内分泌系irAEの中でも甲状腺機能障害、劇症1型糖尿病に対する治療には、ステロイドは使用せずホルモン補充療法を行います。
Grade3以上になると、ステロイドの反応性に乏しい場合には、ステロイドに加えてインフリキシマブやミコフェノール酸モフェチルなどのステロイド以外の免疫抑制剤が治療の選択肢になります(*インフリキシマブとミコフェノール酸モフェチルは保険適応を有していない点に注意が必要です)。

irAEの治療の基本はステロイド投与であり、ステロイド投与により症状が軽快するも多いです。ただし、速やかにirAEの症状が軽快したからといって、短期間でステロイドを中止してしまうと再燃するリスクが高くなります。したがって、ステロイド治療が開始になった場合には、症状軽快後も1ヵ月以上かけてステロイドを漸減する必要があり、患者さんにはステロイドを自己判断で中断しないように指導することが大切です。

一方で、ステロイドの長期内服となる患者さんにおいては、ステロイド由来の合併症に注意が必要です。代表的な合併症は下記のとおりです。

● ニューモシスチス肺炎(Pneumocystis pneumonia:PCP)

ステロイドの合併症として全身性免疫の低下によるPCPが発現することがあり、発現により治療の障害となることから、その予防は重要と考えられます。これまでの報告では、プレドニゾロン20 mg/日以上、4週間以上の投与を受ける場合にスルファメトキサゾール・トリメトプリム(ST)をPCPの予防目的に投与することが推奨されております(Arch Intern Med 1995;155: 1125-8.)。標準的な予防投与量は、ST合剤(sulfamethoxazole 400 mg/trimethoprim 80 mg)1日1~2錠連日投与、または2錠を週3回投与とされています。

●消化性潰瘍

健常成人における14日以内の短期ステロイド使用においても消化管出血の頻度が上昇したとする報告があります(Ann Intern Med. 2020;173:325-330.)。そのため、リスクを考慮した上でPPI併用などの適切な予防策を講じることが必要です。

●骨粗鬆症

高リスク患者 (既存骨折、高齢、腰椎骨密度YAM70%未満)では活性型ビタミンDやビスホスホネートの処方を考慮するなどの適切な予防策を講じることが必要です。

上記以外にも糖尿病や真菌感染にも注意が必要となりますのでリスクに応じた対応が必要となります。

4.   irAEを早期に認識するために

当院では2021年5月より院外処方箋に検査値を記載しております。処方箋応需した際に、irAE早期発見のために調剤薬局でも確認できる事項としてGlu、TSH、AST、ALT、T-Bil、CKが挙げられます。

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●Glu

劇症1型糖尿病の発症割合は1%未満とされていますが、急激に重篤化し適切に処置しなければ死に至る可能性があるため注意が必要です。

●TSH

甲状腺に対する自己免疫が活性化され、はじめは甲状腺刺激症状が現れ、TSH低下、FT4上昇を生じますが、その後甲状腺組織の破壊により甲状腺機能低下症に転じることがあります。

●AST、ALT、T-Bil

検査値異常を認めた場合、irAEによる肝障害のほかに、併用薬による薬剤性肝障害やウイルス性肝炎、肝転移病変の増悪などの鑑別が重要です。急速に肝障害が増悪する可能性があるため注意が必要です。

●CK

重症筋無力症では、血清CKがしばしば1,000 IU/L以上の高値になります。
初期症状として多いのが筋痛 (頸部、体幹、下肢)です。

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これらの検査値は、来局時のワンポイントの値だけでなく、経時的な変化を確認することが重要です。

5.まとめ

irAEに対応するには、まずはICI治療の有無を認識することが大切です。そして、irAEの特徴(発現頻度、時期)を把握し、継続的に副作用モニタリングを行うことが重要です。また、ICI投与終了後もirAEは発現する可能性があることを念頭におき、患者さんの訴えと検査値から総合的に判断する能力が求められます。irAEの重篤化を防ぐためには、できるだけ早期にirAEを発見し、すみやかに治療を開始することが重要です。ICI治療は主に外来で行われることを考慮すると、irAEの早期発見、早期治療のためには、我々、薬剤師は医師・看護師との連携のみならず、病院薬剤師-薬局薬剤師の連携、いわゆる薬薬連携の充実がkeyになると考えます。
是非、協働して、患者さんの治療をサポートしていきましょう。

講演(2):よくある疑義照会にお答えします
回答者:消化管内科 医員 平野 秀和 先生
質問者:薬剤師 田代 亮太 先生

消化管内科 医員 平野 秀和 先生をお招きし、対談形式にて薬剤師からの質問にお答えいただきました。当日のQ&Aの一部を紹介します。

Q:irAEの治療を行いながらICIの治療を継続することは可能ですか?

A:Grade3以上の重症例では、治療中止が原則です。Grade2以下の重症度であれば、支持療法と並行して治療継続していくことを検討します。

Q:薬局薬剤師に求めるモニタリング項目はありますか?

A:irAEの治療では、ステロイドが使用されるケースが多いと思います。ステロイド治療のポイントは、ステロイドの使用によりirAEの症状が改善したとしても中止により再燃することがある点であり、一般的にステロイドは長期投与になることがしばしばあります。したがって、ステロイド長期投与による副作用、例えば骨粗鬆症などに注意する必要があります。irAEのその他の治療としては、甲状腺機能低下症に対するホルモン補充があります。このケースでは、検査値の推移のモニタリングが重要になりますので、処方箋に検査値が印字されている場合には、薬局薬剤師の方がたにも是非、検査値のモニタリングをお願いしたいと思います。
ステロイドにしてもホルモン薬にしても長期投与になることがほとんどですので、該当薬の処方が途中でなくなっている場合には、処方漏れを疑って、疑義照会をしていただきたいと思います。

Q:血糖値が高い患者に対して、ステロイドの投与量をどのように調節していますか?

A:irAEの治療では、ステロイドがkey drugになります。したがって、ステロイド治療が優先されますので、必要量を必要日数投与する中で、インスリンの調整などで血糖コントロールを図っていくことになります。

Q:irAEに対するレボチロキシンナトリウム内服の開始・終了基準はありますか?

A:irAEの症状として、甲状腺ホルモンが低下している場合や、甲状腺ホルモンが正常であってもTSHが10 μIU/mLを越えている場合に、レボチロキシンナトリウムの内服を検討します。症状が不可逆的なケースもあり、明確な終了基準はありません。一般的に、ホルモン補充療法中は、甲状腺機能検査(TSH、FT3、FT4)の定期的なモニタリングを行い、症状が軽快した際には、内分泌系の専門医と協議の上、治療継続の必要性を判断します。

Q:ICI投与患者はコロナワクチンを接種しても問題ないですか?

A:ICIを含め治療中のがん患者さんも、他の人と同じようにコロナワクチンを接種していただいて問題ないと考えております。治療中のがん患者さんなどは、様々な疑問や不安があるかもしれませんので、薬局薬剤師さんが患者さんからコロナワクチンの接種について質問があった際には、主治医に相談するようにお伝えいただければと思います。