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低侵襲肝切除(腹腔鏡下手術・ロボット支援下手術)
はじめに
肝臓の手術を開腹で行う場合は下の図の様に大きな傷になります。それは、肝臓が上腹部、肋骨の後ろに隠れている臓器のため、大きくお腹を開けて肝臓を手前に持ってこないと肝切除ができないからです。一方、低侵襲手術(腹腔鏡下手術・ロボット支援下手術)は腹腔内(おなかのなか)をガスで膨らませて、数カ所の小さな傷(5~12mm)からカメラや鉗子(組織をもったり切ったりする細長い道具)を用いて行う手術です。最終的に切除検体を取り出すために1か所の傷が数cmになりますが、低侵襲手術では開腹手術に比べて小さな傷ですみますので患者さんにとっては負担が少ない治療が受けられるという利点があります。
これまでの低侵襲手術では、術者が鉗子を直接操作して行う腹腔鏡下手術が行われてきました。2022年にロボット支援下肝切除術が保険適用となり、当院でも積極的に導入しています。ロボット支援下手術では、術者は同じ手術室内にある操作装置で高精細な3D画像を見ながら手術を行います。また、ロボットの鉗子は人の手首のように自由度の高い動きが可能で、より繊細な操作が可能になります。
低侵襲肝切除の対象疾患
肝細胞癌、肝内胆管癌、転移性肝癌など肝切除を要する疾患が対象となります。一方で、肝門部領域癌、胆嚢癌など胆管(胆道)の切除と腸管との吻合を必要とする疾患は現在保険診療の適応外となっているため、当院では対象としておりません。
肝切除術は切除範囲が大きくなるほど手術が難しくなってきます。亜区域切除、区域切除、葉切除などの術式は高難度術式として保険収載されていますが、施設基準を満たして実施できる施設は限られています。当院は術者・症例数等の施設基準を満たし認可を受けていますので、高難度肝切除術を保険診療として行うことが可能です。
しかし、腫瘍が大きい場合や肝臓内の大きな血管に腫瘍が入り込んでいる場合、手術を行った既往があり高度な癒着(腹腔内で手術操作をした組織同士がくっつくこと)がある場合など、低侵襲手術で行うのに容易でない条件が重なった場合は開腹手術で行う場合があります。

(患者さんの許可をいただいています。画像の上にポインターを置く(スマホではタップする)ことで、写真の閲覧が可能です。)
低侵襲肝切除の利点と欠点
利点としては、傷が小さく低侵襲(体への負担が少ない)であることが挙げられます。また、細い血管などをカメラモニターを通して拡大して見ることができたり、腹腔内のガスで出血を抑えながら肝離断を行うことができたりするので、より緻密な手術が行えます。また、がんの治療は一度の手術では完結せずに、再度の手術や手術以外の追加治療が必要になる場合があります。低侵襲手術では、開腹手術と比べて腹腔内の癒着(腹腔内で手術操作をした組織同士がくっつくこと)が少ないことが多く、将来再手術が必要になった場合にも手術を行いやすくなる可能性があります。そして、低侵襲手術は体への負担が少ないため、術後の早期回復を促し、その後に追加治療が必要となった場合にも、次の治療へ円滑に移行しやすくなることが期待されます。
一方で、低侵襲手術は開腹手術に比べると操作性や安全性が劣る場合があります。肝臓は内部に血管が無数に走っていて太い血管もたくさんあるため開腹手術でも困難な手術ですが、それを低侵襲手術で行うためには様々な器具と高度な技術が必要になります。そのため、がんの治療として安全かつ腫瘍を残すことなく切除することが低侵襲手術では難しいと判断されれば、患者さんが低侵襲手術を希望されても開腹手術をお勧めする場合があります。逆に、私たちが低侵襲手術をお勧めしたとしても、患者さんご自身のお考えで開腹手術を希望される事も可能です。
低侵襲肝切除の術後経過
術後順調な場合の標準的な経過を示します。腹腔鏡下手術でもロボット支援下手術でもほぼ同等です。あくまで標準的な経過ですので、術式や合併症によって経過が異なることはご了承ください。

