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国立がん研究センター 中央病院

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化学放射線療法が手術療法に劣らない有効性を示し、
新たな治療選択肢に

臨床病期I期食道扁平上皮がんにおける標準治療を検証
化学放射線療法が手術療法に劣らない有効性を示し、
新たな治療選択肢に

2021年11月30日
国立がん研究センター中央病院

発表のポイント

  • 臨床病期I期食道扁平上皮がんについて、標準治療である手術療法と食道切除を行わない化学放射線療法*1での治療結果について比較試験を行いました。
  • 試験の結果、化学放射線療法においても手術療法と同程度の5年生存割合が示され、化学放射線療法を選択した患者さんの80%は、食道を温存しつつ、5年以上生存することが可能でした。
  • 一方で、化学放射線療法を選択した場合には、手術療法と比べて再発が増える可能性が示されましたが、その多くは治療が追加され、最終的な生存期間は手術を行った場合と同程度であることが示されました。
  • 今後、臨床病期I期の食道扁平上皮がんにおける標準治療として、手術療法に加え化学放射線療法も選択肢として示されます。

概要

国立研究開発法人国立がん研究センター中央病院が支援する日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)では、科学的証拠に基づいて患者さんに第一選択として推奨すべき治療である標準治療や診断方法等の最善の医療を確立するため、専門分野別研究グループで全国規模の多施設共同臨床試験を実施しています。

JCOG食道がんグループでは、臨床病期I期の食道扁平上皮がん患者さんに対して、標準治療である手術療法と、食道切除を行わない化学放射線療法とを比較する「JCOG0502『臨床病期I(clinical-T1N0M0)食道癌に対する食道切除術と化学放射線療法同時併用療法(CDDP+5FU+RT)のランダム化比較*2試験』」を実施しました。食道扁平上皮がんは、日本人の食道がんの90%以上を占めます。

本試験の結果、患者さんと担当医が選択した手術療法または化学放射線療法において、5年以上治療経過を詳細に観察したところ、5年以上生存する患者さんの割合はほぼ同じであり、手術による侵襲や臓器温存という観点から、臨床病期I期の食道扁平上皮がんにおいて化学放射線療法が標準治療の一つとできると結論付けました。

臨床病期I期の食道扁平上皮がん患者さんに対しては、今後は、標準治療である手術療法のみではなく、化学放射線療法の説明も行った上で、治療法を決める必要があると考えます。

本試験の成果は、米国学術雑誌Gastroenterology誌WEB版に2021年8月10日付で掲載されました。

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背景

従来の食道がんの標準治療は食道切除を伴う手術療法で、近年では胸腔鏡下手術などの技術の進歩により、術後の合併症は少なくなっていますが、食道を温存しないことで、体力の回復が遅くなったり、回復した後も、一度に食べることのできる量が少なくなったりすることによって、体重が減少してしまうといった問題点がありました。

過去にJCOG食道がんグループで行われたJCOG9708「Stage I(T1N0M0)食道癌に対する放射線と抗癌剤(CDDP/5-FU)同時併用療法の第II相試験」では、化学放射線療法を行った87.5%の患者さんで目で見えるがんが消失し、75.5%の患者さんが5年以上生存し、手術療法に引けをとらない結果が示されたことから、食道を温存しつつ、治癒を見込める治療方法となることが期待されました。しかし、手術療法と直接比較を行った結果ではなかったため、JCOG食道がんグループでは2003年頃から、臨床病期I期食道扁平上皮がん患者さんに対する手術療法と化学放射線療法を比較する目的で、JCOG0502を計画しました。

研究方法・成果

2つの異なる治療をより正確に評価するため、臨床病期I期の食道扁平上皮がん患者さんを、手術療法群と化学放射線療法群とにランダムに割り付けるランダム化パート、そして、患者さんと担当医で決めた治療を行う非ランダム化パートを設定しました。残念ながら、ランダム化パートは、登録が進まなかったため中止となりましたが、非ランダム化パートは登録が継続され、最終的に、手術療法群209人と化学放射線療法群159人の治療結果を比較することができました。

患者さんと担当医で決めた治療を行ったため、年齢の中央値が手術群が62歳、化学放射線療法群が65歳であるなど2つの群の患者さんの背景はやや異なりました。5年生存割合は、手術療法群で86.5%、化学放射線療法群で85.5%で、背景因子を調整して行われた比較では、化学放射線療法が手術療法に劣っていないことが統計学的に示されました。5年後に再発していない患者さんの割合は、手術療法群で81.7%、化学放射線療法群で71.6%と、化学放射線療法群では、再発を比較的多く認めました。再発した患者さんの多くは、その後に治療が追加され、最終的な生存期間は、手術を行った場合と同程度であることが示されました。化学放射線療法群では治療後に87.3%の患者さんに目で見えるがんの消失が認められ、80%の患者さんが食道を温存した状態で5年以上生存しました。

副作用については、手術療法では、重篤な肺炎が7.7%、吻合部リーク(縫合不全)が6.3%認められ、手術関連死亡が2人(1.0%)ありました。化学放射線療法では、重篤な白血球減少を11.4%、食道炎を10.1%、食欲不振を10.0%に認め、数か月後に認められる晩期障害として心筋虚血(3.2%)、呼吸困難(2.5%)、胸水(2.5%)を認めましたが、両治療群ともに、安全に治療が行われたと言えます。

展望

このように、臨床病期I期食道扁平上皮がん患者さんが、初回治療として化学放射線療法を選択した場合、標準治療である手術と同等の治療結果が得られ、80%の患者さんで食道を温存することができました。一方で、食道を温存したために、食道があった部分やその周辺のリンパ節などに再発を比較的多く認め、それに対して追加で治療を行う必要がありました。しかし、再発は早期に見つけることで、有効な治療を行える可能性が高まるため、どちらの治療法を選択した場合でも、3-6か月おきに定期的なCT検査や、内視鏡検査による経過観察が必要です。

本試験の結果、臨床病期I期の食道扁平上皮がんにおける標準治療として、手術療法に加え化学放射線療法も選択肢として示されるようになりますが、食道がんの治療では、術後の食事への影響や、抗がん剤や放射線による副作用、再発などさまざまな懸念があり、2つの治療法の利点と欠点について、よく説明を受けた上で決めることが重要だと考えます。

JCOG食道がんグループでは、現在、化学放射線療法を行った場合に、放射線の照射範囲を広げるなどの工夫を行った治療法が、より再発を抑えることができるのかを評価するために、JCOG1904「Clinical-T1bN0M0食道癌に対する総線量低減と予防照射の意義を検証するランダム化比較試験」を行っています。さらなる治療結果の改善に取り組んでいます。

発表論文

雑誌名

 Gastroenterology

タイトル

Parallel-Group Controlled Trial of Surgery Versus Chemoradiotherapy in Patients With Stage I Esophageal Squamous Cell Carcinoma

著者

Ken Kato, Yoshinori Ito, Isao Nozaki, et al.

DOI

10.1053/j.gastro.2021.08.007.

URL

https://www.gastrojournal.org/article/S0016-5085(21)03352-7/fulltext (外部サイトにリンクします)

掲載日

2021年8月10日(米国時間)

研究費

厚生労働省がん研究助成金計画研究18-1
StageI食道がんに対する放射線・抗がん剤併用療法と手術単独療法の有効性の比較

国立がん研究センター研究開発費
消化器悪性腫瘍に対する標準治療確立のための多施設共同研究
20指-3, 23-A-19

国立がん研究センター研究開発費
成人固形がんに対する標準治療確立のための基盤研究
26-A-4, 29-A-3, 2020-J-3

日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)の概要

日本臨床腫瘍研究グループ(Japan Clinical Oncology Group:JCOG)は、新しい治療法の開発や検証的試験の実施を通じて、科学的証拠に基づいて第一選択として推奨すべき治療である標準治療や診断方法等の最善の医療を確立することを目的として研究活動を行っています。各種がんの治癒率の向上とがん治療の質の向上を図ることを目標としています。

JCOGは国立がん研究センター研究開発費、日本医療研究開発機構(AMED)研究費を主体とする公的研究費によって助成される研究班を中心とする多施設共同臨床研究グループで、がん診療連携拠点病院を中心とした医療機関の研究者で構成される専門分野別研究グループと国立がん研究センターが管轄する各種委員会、中央支援機構(国立がん研究センター中央病院臨床研究支援部門の一部)から構成されており、法人格を有さない任意団体です

JCOGウェブサイト

http://www.jcog.jp/index.htm(外部サイトにリンクします)

用語解説

*1 化学放射線療法

抗がん剤と放射線を併用して行う治療のこと

*2 ランダム化比較試験

対象となる患者さんを、2つ以上のグループにランダムに分け(ランダム化)、治療法などの効果を検証することです。ランダム化により検証したい方法以外の要因がバランスよく分かれるため、公平に比較することができます。

問い合わせ先

日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)
国立研究開発法人 国立がん研究センター
中央病院 臨床研究支援部門 研究企画推進部 多施設研究支援室
Eメール:webmaster●ml.jcog.jp

広報窓口

国立研究開発法人国立がん研究センター
企画戦略局 広報企画室
電話番号:03-3542-2511(代表) FAX:03-3542-2545
Eメール:ncc-admin●ncc.go.jp

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