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胆道疾患と膵臓疾患における内視鏡検査・治療

胆道疾患や膵臓疾患は早期発見が難しく、さらに悪性腫瘍は根治が困難な疾患です。
当科ではCTやMRIに加え超音波内視鏡(EUS: Endoscopic Ultrasonography)、超音波内視鏡下穿刺吸引法(EUS-FNA)、内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP: endoscopic retrograde cholangiopancreatography)を用いて迅速かつ正確な診断を心がけています。また、閉塞性黄疸などの治療では内視鏡的胆道ドレナージ、Interventional EUSを行い低侵襲治療を目指しています。

1 超音波内視鏡(EUS)について

超音波内視鏡(EUS: Endoscopic Ultrasonography)とは先端に高解像度の超音波が備わった内視鏡です。この超音波内視鏡(EUS)もいわゆる「胃カメラ」と同じで口から挿入します。超音波内視鏡(EUS)の先端を胃壁や十二指腸壁にあてて観察を行うことで、消化管壁のすぐ向こう側にある膵臓や胆嚢などを至近距離で詳細に観察することができます。CTやMRIにて膵臓や胆道の病気が疑われる場合にさらに詳しく調べるのが超音波内視鏡(EUS)の主な役目です。外来にて受けていただくことが可能な検査です。

コンベックス型超音波内視鏡

コンベックス型超音波内視鏡

この超音波内視鏡を用いて
超音波内視鏡下穿刺吸引法(EUS-FNA)を行います。

大きさ10mmのSolid pseudopapillary neoplasm(SPN)

  • 大きさ10mmのSolid pseudopapillaryneoplasm(SPN) 図1

    CTでは淡い低吸収域(黒い部分:黄色矢印)がかろうじて認識できます。

  • 大きさ10mmのSolid pseudopapillaryneoplasm(SPN) 図2

    超音波内視鏡では小さな病変(黒い部分:黄色矢印)でもはっきりと認識できます。

2 超音波内視鏡下穿刺吸引法(EUS-FNA)について

超音波内視鏡下穿刺吸引法(EUS-FNA)とは、超音波内視鏡(EUS)を用いて腫瘍に対して細い針を刺し、腫瘍細胞を回収する検査です。この回収された検体を用いて組織診を行い腫瘍の診断を行います。この超音波内視鏡下穿刺吸引法(EUS-FNA)での正確な組織診断は腫瘍の治療方針決定に非常に有用です。この検査では鎮痛剤と鎮静剤の静脈投与を行いますので、苦痛は伴わず受けることができます。また検査の翌日より食事も可能です。超音波内視鏡下穿刺吸引法(EUS-FNA)を受けていただくためには入院していただく必要があります。

大きさ13mmの膵体部癌

  • 大きさ13mmの膵体部癌 図1

    CTでは膵体部に腫瘍(黒い部分:黄色矢印)を認めます。

  • 大きさ13mmの膵体部癌 図2

    超音波内視鏡を用いて超音波内視鏡下穿刺吸引法(EUS-FNA)を行っています。
    白い線が穿刺針です。EUS-FNAにて膵癌と診断でき切除可能でした。

穿刺針 イメージ図

3 Interventional EUSについて

胃や腸などの消化管を経由して超音波内視鏡(EUS)で腹腔内を観察し、腹腔内の病気に対して治療を行う手技をInterventional EUSと呼びます。対象とする主な病気は閉塞性黄疸(胆管が腫瘍などで閉塞して黄疸となっている状態)、腹腔内の感染した嚢胞、腹腔内の膿瘍(のうよう=うみ)などです。超音波内視鏡下胆道ドレナージ(EUS-BD)、超音波内視鏡下膵仮性嚢胞ドレナージ(EUS-CD)、EUS下膵管ドレナージ(EUS-PD)、EUSガイド下ランデブー法などがその代表で近年急速に発達している低侵襲治療です。当科でも力を入れて取り組んでいる医療行為の一つです。これらの治療のほとんどは超音波内視鏡下瘻孔形成術として保険収載されています。

EUS-choledochoduodenostomy(EUS-CDS)

EUS-CDS略図

総胆管と十二指腸に瘻孔を形成する胆道ドレナージ術

注:超音波内視鏡下胆道ドレナージ(EUS-BD)の一つです。

EUS-hepaticogastrostomy(EUS-HGS)

EUS-HGS略図

肝内胆管と胃に瘻孔を形成する胆道ドレナージ術

注:超音波内視鏡下胆道ドレナージ(EUS-BD)の一つです。

EUS-cyst drainage (EUS-CD;のう胞ドレナージ)

EUS-cyst drainage略図
のう胞と胃に瘻孔を形成する胆道ドレナージ術

4 内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)について

 内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP: endoscopic retrograde cholangiopancreatography)は、内視鏡(カメラ)を口から入れて食道・胃を通り十二指腸まで進め、胆管や膵管に直接細いチューブを介して造影剤を注入して、胆嚢や胆管及び膵管の異常を詳しく調べる検査です。
本検査は1970年に開発されて以来、これらの臓器に関する病気の診断と治療に大きな貢献をしてきた検査法です。腹部エコー検査、CT、MRIの結果より病気(腫瘍)が疑われる場合、病理検査にて確定診断をつけなければいけません。ERCPでは病気の部分から組織を採取して病理診断を行えることから、最終的な精密検査法として位置付けられています。ERCPは胆管癌の診断や閉塞性黄疸の治療(内視鏡的胆道ドレナージ)、早期膵癌の診断などで威力を発揮します。

主乳頭の写真

主乳頭を経由して造影チューブが胆管内に入っています。

肝門部胆管癌の胆管造影と胆道ドレナージ

肝門部胆管癌の胆管造影と胆道ドレナージの写真

 1. 左右肝管から上部胆管に狭窄(黄色矢印)を認めます。左右の肝内胆管は拡張しています。
 2.3. 手術を予定しており、左枝、右枝に2本の胆管プラスチックステントを留置しました。ドレナージ後、速やかに黄疸は改善しました。