コンテンツにジャンプ
国立がん研究センター 中央病院

トップページ > 診療科のご案内 > 肝胆膵外科 > 特色ある治療について > 精緻な術前シミュレーションによる肝切除

精緻な術前シミュレーションによる肝切除

肝切除手術の特徴は?

がんの大きさや位置、肝機能などから、安全な手術法を判断

今日、がんの治療には様々な方法が開発されていますが、肝臓がん(原発性、転移性ともに)に対して最も有効な治療法のひとつが、外科手術であることは変わりません。

肝臓は、移植なくして全部を摘出できない臓器であり、さらに、とても複雑な血管構造をしており、多くは肝臓の中に埋もれていて、表面からは見えません。ですから、それぞれの患者さんの持つ病巣の数や位置、周囲の血管との関係など多くの要素を考え、手術の計画を考えなければなりません。例えば、腫瘍がそれほど大きくなくても、太い血管(門脈・肝静脈・肝動脈)の根もとに浸潤している(食い込んでいる)場合には、その血管を根もとから切る必要があり、大きな肝容積を失ってしまいます。

さらに肝臓そのものの状態が人それぞれ異なるのも肝臓という臓器の特徴です。肝臓という臓器には、他の臓器には見られない優れた再生能力があり、正常肝であれば70%近くを切除しても、3カ月から1年の間には元の大きさに戻ります。しかし、B型・C型肝炎ウイルスや抗がん剤、アルコールの多飲によって慢性的なダメージ(肝障害)を受けている肝臓は、切除する際に十分な容積を残さなければ、致命的な術後肝不全(肝機能が著しく低下し、意識障害や腹水、消化管出血などの症状をきたす状態)を併発してしまいます。

このように、肝臓がんに対する肝切除術は、それぞれの患者さんで異なる「腫瘍と肝内血管の位置関係」と「肝予備能」という2つの要素をバランスよく考え、“最も根治度が高く、効率が良い”手術の方法(術式)を計画する必要があります。

肝臓3D解析を活用した肝切除計画

当院では、3次元(3D)シミュレーションソフトを用いて、「肝臓3D解析」を行い、肝切除の計画を立てています。具体的に、「肝臓3D解析」では、患者さんの肝臓を造影CT(コンピューター断層撮影)で撮影し、その画像からコンピューターを用いて血管や腫瘍を3次元で描きます。描き出された画像はバーチャルリアリティ(仮想空間)で、あらゆる角度から自由自在に観察し、腫瘍と肝臓の中の血管との位置関係を把握します。さらに、ある血管を切除したときに失われる部分の肝容積も計算できるので、実際に手術を行う前に、いくつかの肝切除術式をコンピューター上で行い、比較することができます。当科では、肝切除を行うすべての患者さんにこのような肝臓3D解析を行って、肝切除術のシミュレーションを行っています。

030.png
図1: 3Dシミュレーションソフトによる仮想肝切除の一例
S8dorの領域に直径3.5センチ肝細胞癌に対する肝切除術式の計画です。右肝切除、前区域切除、解剖学的亜区域切除(S8、S8dor)を比較しています。