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アロマターゼ阻害薬(ホルモン)療法

ホルモン療法で使われる薬はいくつかありますが、アロマターゼ阻害薬は閉経後の乳がん患者さんに使用される薬です。

ホルモン療法とは

乳がんには、がん細胞の増殖にエストロゲン(女性ホルモン)を必要とするものがあり、乳がん全体の6から7割を占めています。このようなエストロゲンで増殖するタイプの乳がんに対してはエストロゲンの働きを抑える「ホルモン療法(内分泌療法)」の効果が期待できます。ホルモン療法の対象となるのは乳がんの細胞に女性ホルモンの働きを感知するエストロゲン受容体(ER)かプロゲステロン受容体(PgR)のいずれかが認められる、ホルモン受容体陽性の乳がんの方です。

アロマターゼ阻害薬とは

アナストロゾール、エキセメスタン、レトロゾールなど

乳がん細胞の増殖を促進するエストロゲンが作られる場所は閉経前と閉経後では異なります。

閉経前の女性では、エストロゲンは主に卵巣で作られます。閉経後の女性では、卵巣機能が低下し、エストロゲンの量が減ります。しかし、かわりに副腎からアンドロゲンという男性ホルモンが分泌され、脂肪組織などに存在しているアロマターゼという酵素の働きによって、少量のエストロゲンが作られ続けます。このため閉経の前と後では使う薬が異なることがあります。

アロマターゼ阻害薬は閉経後の乳がんのエストロゲンの合成を抑え、乳がん細胞が増殖しないように働く薬です。

アロマターゼ阻害薬(ホルモン)療法の副作用

アロマターゼ阻害薬の作用として体内のエストロゲンの量が少なくなるために、以下に示すような更年期障害に似た症状が起こることがあります。

ほてり・多汗

顔や体が部分的または全身的にのぼせるように熱くなったり、汗をかきやすくなることがあります(4から16%)。体内のエストロゲンの量が少なくなるために起こる副作用の一つです。エストロゲンが減ると体温調節がうまくできなくなることがあり、ほてりやのぼせのような症状や、汗をかきやすくなることがあります。

関節痛、骨粗鬆症などの骨症状

指などの関節にこわばりを感じたり、肩やひじ、ひざなど体の節々に痛みを感じることがあります(1から3%)。また、骨がもろくなり、骨粗鬆症や骨折が起こりやすくなる場合があります。エストロゲンは骨量を保つように働いています。アロマターゼ阻害薬服用により体内のエストロゲン量が減少し、それに伴う骨量の減少により、骨粗鬆症や骨折を起こす可能性があります。肩やひじ、ひざなど体の節々に痛みがあり、つらい時は我慢せず医師に相談しましょう。治療前には骨密度を測定し、治療開始後は年に1回程度骨密度の測定をしましょう。(測定後は骨密度の測定結果を10ページに記録しておきましょう。)また、日頃からカルシウムやビタミンDを含んだバランスのよい食事や適度な運動を心がけましょう。骨粗鬆症の程度が強いときには治療のためのお薬を使用することがあります。

脂質代謝異常

血液中の脂質、特にコレステロールとトリグリセリド(中性脂肪)の値が高くなる可能性があります(0.2から9%)。脂質代謝異常が続くと、血管内壁に脂質が沈着し動脈の壁が厚く固くなっていきます(動脈硬化)。血栓症などの合併症につながることもありますので、定期的に診察を受け採血の結果を確認しましょう。

心血管系への影響

血圧が高くなる可能性があります。また、心筋梗塞、心不全など心血管系への影響が指摘されています。

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