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中央病院 婦人腫瘍科 子宮体がんの治療について
1. 子宮体がんとは
子宮体がんとは、子宮の奥にある『子宮体部』と呼ばれる部分に発生するがんです。閉経後の不正出血など、早期発見のきっかけとなる症状があることも多く、その原因には肥満やホルモンバランスの乱れなど様々なものが考えられます。
国立がん研究センター中央病院 婦人腫瘍科では、子宮体がんに対し、手術、化学療法、放射線療法を組み合わせた集学的治療を実践しています。患者様一人ひとりの病状やライフスタイルに合わせた治療計画を立案し、根治を目指すとともに、治療後のQOL(生活の質)維持にも最大限配慮しています。
2. 診断について
子宮体がんの治療は、がんの進行度合い(ステージ)、組織型、遺伝子異常の有無によって大きく異なります。
治療方針を決定する上で最も重要なのが、がんの進行度合いを示す「進行期(ステージ)」です。この進行期は、がんの広がりや転移の有無によって細かく分類されます。
- 正式な進行期は、手術によって確定します。 手術でがんの広がりを直接確認し、病理検査を行うことで詳細な診断が可能です。
- 手術を含めた詳細な治療方針を立てる前段階として、CTやMRIなどの画像検査を行い、進行期を判断・推定します。
当科では、これらの情報に加え、がんゲノム医療連携病院としての知見も活用し、患者様にとって最も効果的かつ負担の少ない個別化医療を提供しています。
3. 治療について
手術:身体への負担を軽減する低侵襲手術とリンパ節郭清
子宮体がんの初回治療は主に手術です。当科では、患者様の身体的負担軽減と確実な治療の両立を目指しています。
基本術式と低侵襲手術の積極的導入
子宮体がんの基本的な手術は、腹式単純子宮全摘術+両側付属器切除術です。
当科では、早期子宮体がん(IA期かつ術前の組織診断で類内膜腺癌G1/G2)の方を対象に、患者様の身体的負担を軽減するため、ロボット支援手術および腹腔鏡手術といった「低侵襲手術」を積極的に導入しております。
これらの手術は、従来の開腹手術に比べて大きなメリットがあります。
- 創(きず)が小さい
- 術後の痛みや回復期間の短縮
- 早期の社会復帰が期待できる
患者様一人ひとりの状態や希望を考慮した術式を選択できるよう、担当医が丁寧に説明し、十分なご相談の機会を設けています。
リンパ節郭清の方針:リンパ浮腫予防への配慮
子宮体がんの治療において、リンパ節への転移の有無は重要な情報です。当科では、リンパ浮腫などの合併症を予防しつつ、がんの根治性を高めるためのリンパ節管理を行っています。
術前の組織診断が特殊型の方や、がんの進行が疑われる方、またはリンパ節転移が確認された方には、がんの正確な広がりを把握し、再発リスクを低減するために、骨盤内および腹部大動脈周囲(上腹部)のリンパ節郭清を適切に行っています。進行がんに対しては、他臓器合併切除も視野に入れた広範囲な手術も実施可能です。術後における集学的治療について
手術後の治療は、病理診断で確定したステージ、組織型、リスク因子に基づき、化学療法や放射線療法を組み合わせた集学的治療を検討します。
ステージ1期(低リスク群):経過観察が基本
当科では、術後の病理診断でステージIA期かつ類内膜腺癌G1/G2でリンパ節転移陰性の方には、術後治療を行わずに経過観察を基本としています。
その他のステージ1期、2期:リスク因子に応じた個別化治療
上記以外のステージ1期やステージ2期と診断された患者様には、個々のリスク因子(組織型、筋層浸潤度、リンパ管・血管浸潤の有無など)を詳細に評価し、術後治療の必要性を慎重に検討します。
ステージ3期以上:積極的な薬物療法・放射線療法
一方、ステージ3期以上と診断された方には、がんの再発リスクを低減するため、術後化学療法や放射線療法を積極的に行います。
化学療法
アドリアマイシンとシスプラシンの点滴投与(AP療法)もしくはパクリタキセルとカルボプラチルの点滴投与(TC療法)を、標準的な治療プロトコルに基づき実施します。当院では、がん薬物療法に特化した専門部署である腫瘍内科が、これらの抗がん剤治療を専門的に担当しており、患者様が安心して治療を受けられる体制を整えています。
放射線療法
子宮体がんでは単独治療はまれですが、術後補助療法や再発治療として、放射線治療科と密に連携し、放射線治療計画を立案・実施しています。妊孕性温存について
当科では、妊孕性温存治療としての高用量黄体ホルモン療法は行っておりません。
4. 療養中について
子宮体がんの治療は、手術や薬物療法、放射線療法など多岐にわたり、治療後も患者様の生活に様々な影響を及ぼすことがあります。婦人腫瘍科では、患者様が治療を終えた後も安心して日常生活を送れるよう、多角的なサポート体制を整え、生活の質(QOL)の維持・向上に努めています。
- リンパ浮腫の予防とケア: リンパ節郭清を行った患者様には、術後に足のむくみ(リンパ浮腫)が生じるリスクがあります。当科では、リンパ浮腫の予防のための指導を行うとともに、発症した場合には、専門の理学療法士やリンパ浮腫外来と連携し、適切なケアを提供しています。
- 治療に伴う症状への対応: 化学療法や放射線療法による倦怠感、吐き気、食欲不振、消化器症状など、様々な副作用や症状に対し、症状緩和のための薬剤調整を検討し、また、生活の中でできるケアをお伝えします。
- 遺伝性腫瘍への対応: 遺伝カウンセリングやリスク低減手術など、遺伝性がんに対する包括的な診療体制も整っています。
- 心理的サポート: がん治療は、身体的な負担だけでなく、精神的なストレスも伴います。不安や抑うつ、気分の落ち込みなどに対し、臨床心理士や精神腫瘍科の専門家と連携し、心のケアにも力を入れています。
定期的なフォローアップについて
治療終了後も、再発の早期発見や合併症の管理のため、定期的な診察と検査(画像検査、腫瘍マーカーなど)が非常に重要です。当科では、患者様の状態に応じたきめ細やかなフォローアップ計画を立て、長期にわたる健康管理をサポートします。
5. 婦人腫瘍科を受診される皆様へ
国立がん研究センター中央病院 婦人腫瘍科では、日々の診療に加え、臨床研究を通じて、子宮体がん治療のさらなる発展にも貢献しています。
セカンドオピニオンも受け付けております。現在の診断や治療方針について、別の専門医の意見を聞きたい方は、お気軽にご相談ください。
私たちは、患者様が安心して治療に専念できるよう、最新の知見に基づいた標準治療を提供し、常に患者様中心の医療を心がけています。