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国立がん研究センター 中央病院

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肝切除について

対象となる疾患

肝切除は肝臓にできた腫瘍に対して行う手術で、肝細胞がん、胆管細胞がん、転移性肝がんなどが主な対象疾患となります。

肝臓の機能と構造

肝臓は上腹部にあるヒトの体でもっとも大きな臓器です。右の肋骨に囲まれるようにああります。
肝臓は私たちの生命活動に欠かせない多くの働きをしています。非常に多くの働きをしているのですが、代表的なところでは、食事をとった栄養分から体に使えるようなエネルギーを合成したり、貯蔵したりしています。また、解毒や分解も行います。もう一つ、大切な役割として、食べ物の消化に必要な胆汁を合成しており、肝臓の中心から胆管(胆汁を運ぶ管)が通じて、十二指腸内へ分泌されます。

肝臓の内部はたくさんの血管が走っていて、流入血管としては肝動脈、消化管からの静脈血としての門脈、流出血管の肝静脈、また胆汁を運ぶ肝内胆管が交錯するように走行しています。ですので、肝臓を切るということは、これらの微細な脈管構造を把握して、切っている中で無数にでてくる脈管を正確に処理しながら切り進んでいかなければなりません。

図1_CTから血管を3D構築した画像

図1. CTから血管を3D構築した画像
肝臓の血管は中心から枝分かれしていきますので、それぞれの血管が担当する領域によって区域に名称があります。これまでも様々な分類が提唱されていますが、本邦で使われている代表的な分類は下記の図2の通りです。 区域に番地の様に番号が割り付けられていて、segment 5を略してS5といったように番号で呼ばれることが多いです。

図2_肝臓の区域名と場所

図2. 肝臓の区域名と場所国立がん研究センターがん情報サービスより引用)

肝切除について

  肝切除の手術実績について(リンク「手術実績」)

このように様々な機能を持った肝臓はいまだに人工臓器でかわりになるものがありません。切除を行うとその容量分だけ肝臓の機能は失います。ですので、手術を行うにあたっては、まず肝臓が切除に耐えうるかどうかを評価しなければなりません。そして、緻密な切除の計画が必要です。腫瘍を切除するために必要な脈管を切った場合を想定し、それに伴って犠牲となる肝容量をシミュレーションして、患者さん毎に切除できる許容範囲は異なりますので、そのバランスを考える必要があります。健康な肝臓であれば、一般的に60~70%の肝臓を切除しても問題ないことが多いですが、肝がんができる患者さんの場合は、しばしば肝炎ウイルスの罹患、アルコール、脂肪肝、抗癌剤治療後など肝機能が正常と比べて落ちていることが多いです。そのため、ひとりひとりの患者さん毎に肝機能を評価して、切除範囲と安全性についてを慎重に検討する必要があります。
精緻な術前シミュレーションに基づいた肝切除(リンク)

肝臓は表面から見ると一つの塊ですが、大きく右葉と左葉の2つに分かれます。右葉は前区域と後区域、左葉は外側区域と内側区域に分かれ、全部で4つの区域に分かれます。さらに、肝臓に注ぐ血管である門脈の血流の範囲によって、8つの亜区域(S1~8)に分かれます。肝切除には切除範囲によって以下のような切除方法があります。

肝部分切除

腫瘍の大きさに応じて部分的に肝切除を行う方法です。比較的小さな切除になることもありますし、複数個の腫瘍の場合には何カ所も切除することがあります。

図3a_肝部分切除

肝亜区域切除

腫瘍の存在する亜区域(S1~8)を切除します。

肝区域切除

肝臓の中の血管の支配領域に基づいて、肝臓全体の1/5~1/3程度を切除する術式です。腫瘍の存在する区域(外側区域、内側区域、前区域、後区域)を切除します。

図3c_肝区域切除

肝葉切除

肝臓の右葉(肝の右側)または左葉(肝の左側)を切除する術式です。

図3d_肝葉切除

腹腔鏡下肝切除術

当院では、可能であれば積極的に腹腔鏡下肝切除を行っています。
腹腔鏡下肝切除について(リンク)

(図は全て、日本消化器外科学会ホームページ(2015年3月)から引用)

手術後の経過について

手術の後は順調に経過した場合は、手術後1~2週間以内に退院できます。肝切除後は消化管(胃や腸など)の手術をしたわけではないので、食事の通過は問題となりません。しかし、手術後の経過は個人差があります。一般的な経過としては、手術後数日で歩行ができて食事もできます。術後の肝機能の回復、炎症の改善など全身状態が落ち着いてきたら退院の相談です。残念ながら術後の合併症が発生した場合はそれに応じて入院期間が長くなる場合があります。

手術に関係する合併症について

しばしばある合併症

  • 胆汁漏
    肝臓は胆汁を産生している臓器なので肝臓を切ったところからは胆汁が漏れてきます。漏れないように胆管を閉鎖して手術を行っていますが、それでも手術後に漏れてくることあります。ドレーン(排液管)留置を続けることによって自然に閉鎖するのを待ちます。
  • 胸水
    横隔膜のすぐ下の肝臓を手術しますので、横隔膜を介して炎症が波及して胸(特に右側)に水が溜まることがあります。通常は自然に良くなってきますが、胸水の量が多く呼吸に悪影響を及ぼしている場合は、針を刺して胸水を抜く処置を行うこともあります。
  •  腹水
    手術後にお腹の中に水が溜まることがあります。肝機能が低下している患者さんにおきやすい合併症です。利尿剤(尿をだす薬)を投与したり、ドレナージ(腹水を抜く)などする場合があります。

まれな合併症

  • 術中出血
    手術中に予期せぬ出血がある場合があります。肝臓という臓器は内部に複雑に血管が走っている血管の塊のような臓器です。とくに焼灼や塞栓などの治療後の影響がある場合や、大血管に腫瘍が近い場合など出血のリスクは高くなります。もちろん、細心の注意を払って手術に臨みますが、一定の確率で偶発的に出血することがあるのも事実です。その際は輸血などで対処し、出血を最小限に食い止めるように全力を尽くします。
  • 肝不全
    肝硬変などでもともと肝機能が悪い場合や、肝機能が比較的良くても肝臓を大量に切除した結果、肝臓が耐えられなくなって、黄疸、腹水、意識の低下などを伴う肝不全に陥ることがあります。重篤な場合は残念ながら致命的になることもあります。

以上、この手術に関する主な合併症について説明しましたが、想定される合併症はこの限りではありません。手術をお受けになる際にはあらためて説明いたします。

退院後の生活について

手術後として、特別な食事の推奨、あるいは制限は制限はありません。手術のキズの痛みは個人差がありますが、少なくとも数ヶ月間は痛みが残っていたり、ひきつれ感があったりします。日常生活の範囲内で軽作業程度なら退院後から問題ありませんが、これは年齢にもよりますし、人それぞれの経過であることをご理解下さい。

また、全ての悪性腫瘍に共通のことですが肝がんも手術後に残念ながら再発することがあります。手術の後は定期的に外来に通院していただいて検査を致します。遠方よりこられている患者さんには、お近くの病院と連携して定期検査を行っていただく場合もあります。