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膵がんの外科治療

1. 膵がんの特徴

膵がんは早期発見が難しく、見つかった時には周囲の血管や臓器に浸潤したり、リンパ節や遠隔臓器に転移していることが多いため、治療が困難な腫瘍の一つですが、最近は手術の安全性が向上し術後早期に体力の回復が得られるようになったことや、有効な抗がん剤が登場したことなどにより、当院の治療成績は年々改善しています。

図1_膵がんの特徴・CT画像

図1_膵がんの特徴・CT画像

 

2. 膵がん治療の流れ

当院では基本的に下の図2のような方針で膵がんの治療を行っています。

図2_膵がん治療の流れ

図2_膵がん治療の流れ

 

3. 膵がんの外科治療

膵がんの外科治療では、がんの広がりを正確に診断し、手術でがんをきれいに取り除き、手術前後に補助療法をしっかり行うこと、の3つが重要です。

正確な診断:膵がんは画像で正確に範囲を捉えにくいのが特徴で、通常CT、超音波(内視鏡)、MRI、PET、生検などいくつかの画像・病理検査を組み合わせて診断を行いますが、最も正確にがんの広がりを捉えることができる検査は造影MDCT(多列検出器CT)検査です。当院では、高精細の造影MDCT検査を始めとする画像検査を行い、膵がんの広がりをできるだけ正確に評価した上で、病状に合った治療計画を立てています(上の図2)。CT造影剤アレルギーのある患者さんでは造影MRI検査など他の検査で病状を評価します。

手術:遠隔転移がなく、きれいにがんが取り除けると診断された場合には手術をお勧めします。最近、抗がん剤や放射線、その他の内科的治療による治療成績は向上してきていますが、手術以外の方法で膵がんを治すことは未だ困難であり、治癒を目指すには、手術でがんをきれいに取り除くことが必要です。ただし手術を受けるためには、心臓や肺の機能、栄養状態などが保たれていることも重要で、全身状態を評価した上で、最終的に手術できるかどうかを決定します。手術の方法については、他のページ(←「膵切除」のページにリンクを)をご参照ください。

補助療法:膵がんは、たとえ腫瘍が小さくても、血管やリンパ管を通して肝臓や肺、リンパ節などに転移しやすいという特徴があります。このため手術でがんを100%取り除くことができたと思っても、実際には目には見えない小さながんが残っていて、後で再発として現れてくることがあります。このように目には見えないがん細胞を抗がん剤(+放射線)で退治することを目的として補助療法を行います。具体的には、手術前に約1-2か月、手術後に約6か月、抗がん剤治療を行うことが一般的です。

 

4. 膵がんの手術について

膵がんに対する手術では、腫瘍がある膵臓の他に、がんが潜んでいる可能性のある周囲のリンパ節や他臓器も含めて切除します。膵がんの手術ではがんをきれいに切除すると共に、残った膵臓の機能をできる限り温存することが手術後のQOL(Quality of Life; 生活の質)を保つためには重要です。膵臓の重要な働きとして、1. 血糖値を調節する(内分泌機能)、2. 膵液をつくる(外分泌機能)の二つがあります。術後は通常1日3食、手術前と同じような食事が可能ですが、術後糖尿病になった場合には、入院中および外来で内服薬あるいはインスリン注射を用いた治療を行います。また外分泌機能低下に伴う下痢、脂肪肝などを認めた場合には膵消化酵素剤を飲んでいただくこともあります。

 

5. 膵がんのステージ分類

膵がんは病理診断により以下のステージ(病期)に分類されます(UICC TNM分類第8版による)。

表1_膵がんのステージ分類

ステージ 膵局所進行度(T) リンパ節転移(N) 遠隔転移(M)
0 Tis(非浸潤癌) なし(N0) なし(M0)
0 2cm以下(T1)
IB 2cm超4cm以下(T2)
IIA 4cm超(T3)
IIB T1, T2, T3 あり(N1時3分個以下)
III T1, T2, T3 あり(N2時4分個以上)
  腹腔動脈または上腸間膜動脈または総肝動脈に浸潤あり(T4) 問わず
IV 問わず 問わず あり(M1)

膵がんの治療について、さらに詳しくお知りになりたい場合には、日本膵臓学会のホームページ(http://www.suizou.org/gaiyo/guide.htm)の膵癌診療ガイドラインなどもご参照ください。