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肺切除術の説明

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肺切除術の説明文書では、手術の概要と合併症について解説をいたします。

 

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このような内容について、説明します。

 

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はじめに、今回、肺の手術を行うにあたり、手術の方法や合併症などについて、お話します。

肺切除術は、原発性肺がんや、転移性肺腫瘍に対して行われます。
原発性肺がんは、肺に発生した悪性腫瘍で、臨床病期 IAからIIBおよびIIIA期の一部が対象です。
転移性肺腫瘍は、肺以外の臓器に発生した悪性腫瘍が肺に転移したもので、その状態や転移した個数で、手術にするか抗がん剤や放射線治療にするかを患者さんごとに決定します。
お手元の説明文書をよくご確認の上、手術に関して不安や疑問などがありましたら、いつでも担当医にご相談ください。

 

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肺切除術について説明します。

肺切除術は切除範囲の広い順に次の4種類があります。

  • (1)目は、片側の肺全体を切除する肺全摘術です。
  • (2)目は、1つの肺葉(注)を切除する肺葉切除です。
  • (3)目は、肺葉よりもさらに小さな区画である肺区域を切除する区域切除です。
  • (4)目は、肺の外側の一部を部分的に切除する楔状(けつじょう)切除(部分切除)です。

注:肺は左右一対の臓器で、右肺は3つ、左肺は2つの部分に分かれており、そのひとつひとつの部分を肺葉といいます。

 

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手術前後の流れについて説明します。

手術前は、腫瘍の大きさ、呼吸機能の状態を考慮して肺切除範囲の決定を行います。
手術日は、麻酔で2時間、手術では1時間から3時間かかります。
手術後は、手術日から退院まで最短で3日から4日です。
持病や術後の経過によって延長する可能性があります。

 

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気管支形成・肺動脈形成について説明します。

病変が中枢側に拡がっている場合は肺全摘術が考慮されます。
片肺を摘出すると肺活量が損なわれ、心臓の機能も影響を受けます。
特に高齢の患者さんや肺気腫を合併している患者さんでの肺全摘術は負担が重く、術後生活の質の低下が考えられます。
このようなケースでは、気管支形成・肺動脈形成を行うことで、病変の切除と肺機能の温存を図ることが可能となります。
気管支形成術後の縫合不全にならないよう、慎重に経過観察を行って、患者さんの術後をフォローしています。

 

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予想される合併症とそれらへの対応について、説明します。

どのような合併症が現れるかは、ある程度予測できますが、それぞれの患者さんに起こる合併症を完全に予測することはできません。
もし重い合併症が認められたときは、それぞれの症状が改善する治療を行います。
患者さんの身体の様子をみながら慎重に進めていきます。

注:ごくまれに合併症によって死亡するケース(術後1ヵ月以内の死亡率0.4%)があります。

早めに合併症に対する治療を行うことが大切です。

注:何か身体に異常を感じた場合には、担当医や看護師にできるだけ早くご連絡ください。

 

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時として起こる合併症について、説明します。

この合併症は、全体の5%くらいの患者さんに起こる可能性があります。

  • (1)目は、肺胞瘻で、肺を切除した部分や縫合した部分から空気が漏れる状態のことです。
    通常は自然に治りますが、まれに治らないケースでは、胸腔内に抗生物質や免疫賦活剤などの薬を注入します。場合によっては手術が必要となることもあります。
  • (2)目は、不整脈です。
    通常、心臓が脈打つリズムは一定ですが、手術の影響でこのリズムが乱れる状態です。
    自然に治る場合もありますが、点滴や内服薬による治療が必要となることもあります。

注:何か身体に異常を感じた場合には、担当医や看護師にできるだけ早くご連絡ください。

 

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まれにしか起こらない重い合併症 (その1)について、説明します。

この合併症は、全体の1%から3%くらいの患者さんに起こる可能性があります。

  • (1)目は、術後肺炎で、手術後に起こることがあります。
    咳や発熱、呼吸困難、胸の痛みなどの症状がみられ、抗生剤による治療を行います。
  • (2)目は、乳糜胸水です。
    これは、手術によって胸管が傷つき、腸から吸収された脂肪成分が胸腔内に漏れてしまう状態です。
    軽症の場合、食事制限を行いますが、もう一度手術をして、
    漏れている部分をふさぐこともあります。
  • (3)目は、気管支断端瘻で、気管支に穴があいて空気が漏れる状態です。
    緊急手術が必要となることがあります。

注:何か身体に異常を感じた場合には、担当医や看護師にできるだけ早くご連絡ください。

 

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まれにしか起こらない重い合併症 (その2)について、説明します。

この合併症は、全体の1%から3%くらいの患者さんに起こる可能性があります。

  • (4)目は、膿胸で、胸腔内に膿がたまったことで起こる状態です。
    軽症の場合、胸に小さい穴を開けて洗浄します。
    また、手術による胸腔内の洗浄が必要となることもあります。
  • (5)目は、術中/術後出血で、止まっていた出血が、手術終了後に再び出血することをいいます。
    自然に出血が止まる場合もありますが、止血剤や手術による止血が必要となることもあります。
  • (6)目は、肺動脈血栓塞栓症で、手術中に生じた血栓が、肺の動脈につまってしまう状態です。
    手術後初めて起立歩行したときに急に息苦しくなる症状がみられます。
    予防法として、手術中に下肢のマッサージを行い、血液の流れをよくします。
    また、血液を固まりにくくする薬を、手術後に点滴することもあります。

注:何か身体に異常を感じた場合には、担当医や看護師にできるだけ早くご連絡ください。

 

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まれにしか起こらないその他の合併症について、説明します。

この合併症は、全体の1%から3%くらいの患者さんに起こる可能性があります。

  • (1)目は、術後無気肺で、手術後に肺の一部に空気が入らなくなった状態です。
    多くの場合、痰を十分に吐き出せないことで起こります。
    術後は早期からよく動き、咳をして痰を積極的に出すようにします。
  • (2)目は、手術創の感染で、手術した傷口に雑菌が繁殖することです。
    傷の痛みや赤み、発熱といった症状が出ます。
    傷の中の膿を出す処置や、抗生剤の投与で数日から数週間で治ります。
  • (3)目は、反回神経麻痺(注1)で、声帯を動かす反回神経が、手術で傷つくと、片方の反回神経麻痺が起こることがあります。
    声がかすれ、飲み込むときにむせたり咳き込んだりする症状があります。
    片方の反回神経麻痺は一時的な症状が多く、2ヶ月から3ヶ月で治りますが、まれに回復しないことがあります。

注1:反回神経は、首と喉の左右に1本ずつあり、反回神経のまわりにはリンパ節があります。

このリンパ節を手術で一緒に取る際に、反回神経に障害が起こることがあります。
ごくまれに両側の反回神経に障害が生じることがあります。

注:何か身体に異常を感じた場合には、担当医や看護師にできるだけ早くご連絡ください。 

 

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術後せん妄について説明します。

手術後は全身が衰弱した状態となり、昼夜が逆転する、周りの状況が分からなくなる、話のつじつまが合わなくなる、などの精神症状が出現し、幻視や幻覚を伴うこともあります。
高齢者の患者さんに多く見られますが、通常は数日から週間以内に改善します。
症状が出たときは、鎮静剤の投与、精神腫瘍科医師による診察などを行う場合があります。
また、普段から安定剤を服用される方、過度のアルコールを摂取される方は、入院中に禁断症状として同様の症状が出ることがあります。

注:何か身体に異常を感じた場合には、担当医や看護師にできるだけ早くご連絡ください。

 

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手術以外の選択肢について説明します。

手術以外に、3つの選択肢があります。

  • (1)目は、放射線治療です。
    手術による合併症はありませんが、放射線照射で皮膚炎や肺炎など、別の副作用が起こることがあります。
    放射線治療は手術と比べ根治性で劣る可能性があり、手術に耐える体力がある患者さんには標準治療である手術が多く行われています。
  • (2)目は、化学療法(薬物治療)です。
    早期の原発性肺がんの場合、治癒率の観点から、化学療法はお奨めできません。
    一方、転移性肺腫瘍で腫瘍の個数が多い場合には、手術よりも化学療法が有効な場合があります。
  • (3)目は、無治療経過観察です。
    治療に伴う合併症はありませんが、がんの進行で様々な症状が出る可能性があり、無治療では治療をした時と比べ余命が短くなるおそれがあります。

注:手術以外の選択肢は患者さんの病状により異なるため、ご不明な点は担当医にお尋ねください。

 

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セカンドオピニオンについて紹介します。

他の施設での説明を受けたい場合には、セカンドオピニオンを得ることができますので、お申し出ください。
この同意はいつでも撤回することができます。
それによって患者さんが診療上不利益を受けることはありません。