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国立がん研究センター 中央病院

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ロボット支援下手術(ロボット手術)

泌尿器がん領域の手術について

泌尿器科の扱う腎臓・膀胱・前立腺などの臓器は、腹部の背側や狭い骨盤内にあります。また、それらの臓器の周囲には腸管や大血管・神経など大切な臓器が存在しています。泌尿器科の手術は対象となる臓器や周辺臓器をできるだけ傷つけず、かつ根治性を保つ手術を行うため、高い技術が必要とされるのです。
加えて、病気の性質上、ご高齢の方が対象となることが多く、手術の負担が大きすぎると術後の日常生活への復帰が困難となる可能性があります。そのため、根治性と侵襲のバランスをとることが重要です。

これまでの手術の問題点とは?

これまでの開腹手術では、前立腺がんや膀胱がんなど骨盤内の手術を行う際に大きく皮膚を切って、病巣にアプローチする必要がありました。そのため、術後の回復に時間がかかり、社会復帰が遅れることもありました。また骨盤内の狭いスペースでは正確で繊細な操作が時に困難となり、出血量が増加して輸血が必要となったり、機能温存という面でも不利に働いたりすることがありました。

泌尿器系の手術はなぜ難しいのか?

泌尿器科の扱う腎臓・膀胱・前立腺などの臓器は、腹部の背側や狭い骨盤内にあるため、限られた狭いスペースで手術を行う必要があります。その中で、周囲の腸管や大血管・神経などをできるだけ傷つけず、かつ根治性を保つ手術を行うため高い技術が必要とされます。また、病気の性質上、ご高齢の方が対象となることが多く、手術の負担が大きすぎると術後の日常生活への復帰が困難となる可能性があるため、根治性と侵襲のバランスをとることが重要です。

低侵襲手術とは?

低侵襲手術の特徴
出血量 手術に伴う出血量が少なくて済む
術後疼痛 術後の痛みが少ない
傷口の大きさ 傷口が小さく目立たない
術後回復 術後早くから食事がとれ、回復が速い
入院期間 入院期間が短縮され、早期に社会復帰ができる
合併症 腹部の傷が小さく、運動などへの支障が少ない

低侵襲手術とは、従来行われていた開腹手術に比べて、患者さんの身体に対する侵襲を減らした、いわゆる体に優しい手術のことです。そのため、体力がなく従来の手術が難しかった方、合併症をお持ちの方、ご高齢の方でも治療が可能になる場合があります。当院では、低侵襲手術として、大部分の手術をロボット支援下手術と腹腔鏡手術で行っており、患者さんの病状にあった術式を提案させていただいております。

ロボット支援下手術とは

ロボット手術とは、医療用ロボットを使って、患部を摘出し病気を完治させる治療です。本院では、その先駆けである手術支援ロボット(ダ・ヴィンチ)を、2012年10月から導入しロボット手術を推進してきました。

ロボット支援下手術の長所について

手術支援ロボットでは、供えられた7つの多関節を生かして、執刀医の指・手の動きの通りに機具を操ることが可能となります。また、執刀医の手の震え(カメラで言う手ぶれ)が自動的に取り除かれて手術機器に伝達されます。これにより、従来の腹腔鏡よりもさらに複雑で繊細な手術操作が可能となりした。さらに、3次元による正確な画像情報を取得できるため、狭いスペースでもより安全かつ侵襲の少ない手術が可能となります。特に骨盤の深いところを操作するような泌尿器科の手術では有効性が報告されています。

ロボット支援下手術に必要な設備と診療体制について

ロボットの操作には熟練が必要なため、執刀はダ・ヴィンチ手術の認定ライセンス受けた医師(当科では6名)とロボット手術チーム(看護師・ME)が担当します。すべての患者さんの手術ビデオは術者・助手が術後毎回チェックして、技術の向上に努めています。

ロボット支援下手術にかかる待機期間および費用について

待機期間について

手術待機期間は、その時々で変化する可能性がありますので、担当医にご確認ください。
目安として「治療・検査待ち期間一覧 | 国立がん研究センター 中央病院 (ncc.go.jp)」をご覧ください。

費用について

当科で行っているロボット支援下手術はすべて保険適応となっています。ロボット支援前立腺全摘を例として示します。保険診療では高額療養費制度が利用できるため、実質の負担額は、所得区分にもよりますが多くの場合10万円程度となります。
ロボット支援腎部分切除、腎(尿管)全摘術、膀胱全摘除術も保険適応ですので、高額療養費制度を利用されれば、自己負担金額はほぼ同額です。所得区分の詳細は、別途当院スタッフにお尋ねください。食事・個室代は別途必要になります。

例)ロボット支援前立腺全摘術
入院日数:10-14日
費用:約480,000円(入院期間が月をまたがない場合)
注1)3割負担の場合です。
注2)入院費の概算に関してはこちらをご覧ください。

ロボット支援下手術の安全性・合併症について

ロボット支援下手術は低侵襲手術ではありますが、危険性が全くない手術ではありません。ロボット手術の欠点として、鉗子に触覚ないことがあげられ、術者には慣れが必要です。また、併存疾患や以前に腹部手術歴によっては、ロボット支援下手術を受けることができない場合があります。各手術についての安全性・合併症の可能性については、術前に担当医からよく説明をうけてください。

ロボット支援下手術をお受けになる方の生活について(術前から術後まで)

  • 当院でのロボット手術時に患者さんへの説明に用いる文書をお示しします。
  • 入院中の経過に関しては、通常クリニカルパスに沿った形で進んでいきます。ロボット支援前立腺全摘・膀胱全摘の標準的な入院経過をお示しします。
  • 前立腺癌の手術後の尿失禁に対しては、入院・外来を通して、当院の多職種によって構成される排尿ケアチームがサポートします。男性機能障害に関しましては、外来にて担当医にご相談いただければ、適宜内服治療などのサポートを行います。

ロボット支援下手術の術式

ロボット支援前立腺全摘

主に転移のない限局性前立腺がんの方を対象として、前立腺と精嚢を摘除し、尿道と膀胱を吻合する手術です。従来の開腹手術と比べての、以下の点が長所と考えられます。

ロボット支援下前立腺全的術の特徴
出血量 術後処置 術後回復 合併症
出血量の減少・術後早期回復 手術後の尿道カテーテル留置期間の短縮 手術後尿失禁の早期改善 勃起機能の温存、早期回復

広汎前立腺全摘+リンパ節郭清

表に示すような高リスクの患者さんでは、手術による根治性を高めるために、前立腺の周囲の臓器を含めた拡大切除と広汎な骨盤内リンパ節切除が必要と言われています。当院では豊富な開腹手術での経験をロボット支援手術に応用し、開腹手術以上に広い範囲の切除を実施しています。

放射線治療後の救済前立腺全摘

放射線治療後の局所再発に対する救済前立腺全摘除を主にロボット支援下手術で施行しています。
この手術の対象となるかどうかは術前に注意して検査を行う必要があります。悪性度が高い場合は、薬物治療だけでは、奏功期間が限られるので、手術を併用する価値があると考えています。一方で、放射線照射に伴う癒着、炎症のため、通常の手術に比べて難易度が高く、合併症率も上がりますので、手術の施行に関しては担当医とよく相談いただくこととしています。

人工尿道括約筋(AMS800)留置術

前立腺全摘後の尿失禁は、ロボット支援下手術で改善傾向にあります。しかし、一定の割合で治らない患者さんが出る現状にあります。その場合には、人工尿道括約筋(AMS800)を留置する手術を行い、機能回復を補助することもできます。

ロボット支援下膀胱全摘

主に筋層浸潤性膀胱がんの治療として行われる手術です。一部進行のリスクの高い筋層非浸潤性膀胱がんも対象となります。男性では前立腺(+尿道)を、女性では原則として子宮・卵巣・膣前壁を同時に摘除します。骨盤内リンパ節の郭清も同時に行います。膀胱を全摘除した後は、尿路変向といって、尿を排泄する経路を新たに作成します。開腹膀胱全摘除術とくらべて、がん治療効果は劣らない上に、手術中の出血量が少なく輸血の施行率が低いこと、さらに傷が小さく術後の回復が速いことなどの利点があります。

ロボット支援下腎部分切除

腎部分切除術とは、腎細胞がんを一部正常な腎実質を付けて切除する術式で、正常な腎臓自体を温存する術式です。がん制御、腎機能温存、合併症の予防といった腎部分切除で大切な3つの条件を達成するうえでロボット手術は非常に有効です。
当院では、基本的には4センチメートル以下の腎細胞がん(小径腎がん)を対象としていますが、全身麻酔が難しい方やご高齢の場合は当院では凍結治療という選択肢もあります。

ロボット支援腎摘除

がんのある腎臓を周囲の脂肪織を含めて摘出する手術です。腎部分切除術の対象とならない大きな腫瘍や、埋没型の腫瘍などが治療対象となります。腹腔鏡手術でも十分に対応可能な場合もあり、担当医と術式についてよくご相談いただきます。

ロボット支援腎尿管全摘

腎盂および尿管といった上部尿路に生じたがんに対して行う術式で、腎臓と尿管を膀胱の一部と一緒に摘出する手術です。この手術も腹腔鏡手術で十分に対応可能な場合があり、担当医と術式についてよくご相談いただきます。

腹腔鏡下手術の術式

炭酸ガスでおなかを膨らませながら、身体にあけた小さな穴からカメラや器具を挿入し、モニターに映し出された映像を見ながら手術を行う術式を腹腔鏡手術といいます。出血量が少なく、内視鏡による拡大視野により、丁寧で安全な手術が可能となります。
当院では以下の手術で腹腔鏡を用いています。

  • 腹腔鏡下副腎摘除
  • 腹腔鏡下腎摘除
  • 腹腔鏡下腎尿管全摘
  • 腹腔鏡下後腹膜腫瘍摘除

低侵襲手術ですが、手術中の操作がどうしても限定されることが多く、術者に技量が求められます。当院では、3名の日本泌尿器内視鏡学会 泌尿器腹腔鏡技術認定医の資格をもつスタッフ医師が手術を行っています。