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国立がん研究センター 中央病院

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当センターにおけるロボット支援前立腺全摘について

ロボット支援手術について

ロボット支援前立腺全摘は既に保険適応が認められ低侵襲(ていしんしゅう)手術の期待もと、全国で実施され、当院でも2012年10月から開始しています。

ダ・ヴィンチと名付けられたロボットを使用するこの手術は、従来の腹腔鏡手術で使用する2つあるいは3つの関節をそれぞれ別個に動かすことしかできない鉗子とは異なり、7つの関節をもち遠隔操作により繊細で複合的かつ直感的に動かすことが可能な鉗子を使用して行われます。この装置を使用することで通常の腹腔鏡手術ではストレスのある作業において絶大な効果を発揮します。また最大10倍まで拡大可能なカメラは3次元に表示され、これを見ながら手術を行うことで繊細でより確実な切除ができます。開腹手術と比較しても出血が少なく傷も小さいなど低侵襲な手術が、より正確に行えます。

  • 手術中の風景

    手術中の風景

  • ロボットを操作するコンソール

    ロボットを操作するコンソール。指導医と担当医の2人で操作を切り替えることが可能

 

ロボット支援手術の注意点

低侵襲手術の前提は、腫瘍の確実な切除が行われることです。ロボットを使用すれば容易にこのような目的が達成されるか、というとそれは疑問があるのが現状です。例えば400例以上のロボット支援手術を実施している国内の施設において切除断端陽性率はT2症例において20%に起こっていると報告しています。低侵襲が期待されるロボット支援手術では完璧でないことも事実です。これにはいくつかの理由が考えられます。

前立腺の形は様々。ロボットには触覚がない

前立腺の形は様々で膀胱や尿道との間に明確な境界があるわけではありません。これが前立腺全摘において確実な切除を困難にしている原因の一つです。そのため、触診や視覚を頼りに切除境界を決めますが、ロボット手術では触診が無いため、視覚による判別が必要です。特に、膀胱と前立腺の離断が難しいという問題があります。

当院は開腹前立腺全摘において新しい技術を導入し手術成績の向上を行ってきました。触覚がないロボット手術においては最新のMRIによる3次元画像合成により術前に個体差が大きい前立腺の形を把握してそのナビゲーションを駆使して確実な切除を行っています。

画像とそれに基づくナビゲーションの例

 画像とそれに基づくナビゲーションの例


また経験を積むと本来感じることのない「重さ」を擬似的に感じるようになります。これは動かす手の動きとロボットの手の動きの違いを認識していると思っています。自分が動かした動きに対して視覚から得られるロボットの動きが通常より遅くゆっくり動くということは、重い、あるいは堅いと頭脳が認識しているのではと思われます。

リンパ節郭清にはストレスがあるが技術・経験があれば確実な摘出が可能

がんの手術においてはリンパ節を広く切除した方が治療成績がよい、という場合があります。前立腺がんにおいては、PSA値が20ng/mL以上や被膜外進展が疑われるなど(ハイリスク群と呼ばれている)においては、広汎なリンパ節切除が必要と言われています。リンパ節を切除するためには血管や神経をきれいに残しながら、その周囲にある脂肪を取り除いてくるという作業が必要です。しかし時に血管から出血が起り止血に難渋する場合があります。このような場合、腹腔鏡手術では対応がしにくい側面があり、このような広汎なリンパ節郭清は敬遠される場合があります。ロボット支援手術においては技術や経験があれば対応が可能ですがストレスがあることは事実です。
この点に対しても当院では電気メスや機器の研究などにより電圧やモードがコントロールできる最新の電気メス装置を駆使して、開腹による前立腺全摘以上に広い範囲の切除を実施しています。この結果、開腹手術で行うより、より適切なリンパ節の摘出を実現しています。

当院ではこれまで開腹手術で培ってきた技術をそのままロボット支援手術に導入され、通常の前立腺全摘では完全な切除が困難とされる被膜外進展をともなう前立腺がんでもロボット手術で開腹手術と同様の手術を実施することができています。
具体的には当院のロボット支援手術はT1cからT3aまでの局所前立腺がんを対象としていますが、既に開腹により下腹の手術を受けた方や高度な肥満がある方、などの場合には実施できない場合があります。

注3 病期(ステージ)(がん情報サービスへリンクします。)

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