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超音波内視鏡(EUS)での早期膵癌診断
膵腫瘍が疑われる場面において、CTやMRI検査を行うことは必須ですが、これらの画像検査では指摘できないレベルのより小さな膵腫瘍を超音波内視鏡(EUS)では発見することができます。そして質の高い超音波内視鏡を苦痛なく行うことが早期膵癌診断に有用であると我々は考えています。超音波内視鏡の先端を胃壁や十二指腸壁にあてて観察を行うと、これらの壁のすぐ向こう側にある膵臓を至近距離で見ることができます。この近接した状態がより詳細な膵臓全体の観察を可能にします。超音波内視鏡による精査で腫瘍が描出できれば、EUS-FNAにて腫瘍の組織診断が可能となります。また超音波内視鏡では直接腫瘍を描出するだけではなく、腫瘍として捉えることのできない微小膵癌によって起きる変化(膵管の狭窄・拡張や膵萎縮)が確認できれば、ERCPで更なる精査(経鼻膵管ドレナージチューブ留置(ENPD)下の繰り返しの膵液細胞診)を行います。また膵嚢胞を持っている人の膵臓には膵癌が発生しやすいことが分かっています。膵嚢胞を持つ人が膵癌になる危険は、一般人口の22.5倍高いとの報告もあります(Tada M et al. Clin Gastroenterol Hepatol 2006; 4:1265-70)。従って膵嚢胞を有する患者さんには、できる限り早期に膵癌を発見するため6ヶ月毎の画像検査が必要です。早期に膵癌を発見できるよう、当院ではCTやMRIだけでなく超音波内視鏡(EUS)も定期的に行っています。
大きさ9.5mmの膵頭部癌
CTでは主膵管は閉塞する部位に腫瘍があります。
(黄色矢印)超音波内視鏡ではより明瞭に腫瘍を描出できます。
(黄色矢印)

超音波内視鏡下穿刺吸引法(EUS-FNA)で膵癌と診断でき切除可能でした。白い線が穿刺針です。
主膵管拡張の精査

MRCPでは膵尾部の主膵管が拡張しています。
微小膵癌によって起きる主膵管拡張の可能性があり、ERCPで更なる精査を行います。
MRCP

MRCPでは膵尾部の主膵管が拡張
しています。
拡張した主膵管微小膵癌によって起きる主膵管拡
張の可能性があり、ERCPで更なる
精査を行います。
膵管造影では主膵管の狭窄とそれより尾側の拡張を認めます。
経鼻膵管ドレナージチューブ(ENPD)留置を行い、合計6回の膵液細胞診を
行います。