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胆道がんの治療

胆道がんとは

肝臓で作られた胆汁が十二指腸に出るまでに通る「胆道」に発生するがんをまとめて「胆道がん」と呼びます。発生した部位によって「胆管がん」、「胆嚢がん」、「十二指腸乳頭部がん」と分けられます。「胆管がん」は主たる位置に合わせて、さらに「肝内胆管がん」「肝門部領域胆管がん」「遠位胆管がん」の3つに分けられます(図1)。
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図1 胆道がんの分類
 
胆道がんの多くは、胆道が塞がり胆汁が流れなくなって「閉塞性黄疸」となります。

  • 皮膚や白目が黄色くなります。
  • 褐色尿になることがあります。
  • 便が白くなることがあります。
  • 皮膚にかゆみが出ることがあります。
黄疸の他には、みぞおちや右わき腹の痛み、発熱、全身のだるさ、食思不振、体重減少などの症状が出る場合もあります。

胆道がんの診断

血液検査で血液中のビリルビンやALP(アルカリフォスファターゼ)、γGTP(ガンマグルタミルトランスペプチダーゼ)のような胆道系酵素が増加していないかを確かめます。これらの値は胆道が塞がってくると高くなります。腫瘍マーカーは一般的にCEAやCA19-9が測定されますが、これらで確定診断ができるわけではありません。がんであっても上昇しないことや、がんでなくても上昇することがあるためです。

がんの広がりを診断するために、超音波検査、CT検査、MRI検査を行います。黄疸がある場合には黄疸に対する治療を優先的に行います。画像検査で腫瘍のように見える場合でも実際には炎症だけの場合もあるので、組織を採取して調べることがあります。内視鏡を使う検査として、超音波内視鏡検査(EUS: Endoscopic Ultrasonography)、内視鏡的逆行性胆管膵管造影検査(ERCP:Endoscopic Retrograde Cholangiopancreatography)、管腔内超音波検査(IDUS:Intraductal Ultrasonography)、経口胆道鏡検査(POCS:Peroral Cholangioscopy)があります。また遠隔転移の疑いがある場合にはPET(Positron Emission Tomography)検査を追加します。
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図2 胆道がんの検査の流れ
(日本肝胆膵外科学会 胆道癌診療ガイドライン作成委員会編「エビデンスに基づいた胆道癌診療ガイドライン 2019年(改訂第3版)」(医学図書出版)を改変)

最初に黄疸を解消します

黄疸の治療は減黄処置といい、がんの治療より優先されます。胆道が塞がったまま黄疸を放置していると、肝臓の機能が低下して外科療法も化学療法もできなくなってしまうからです。減黄処置には大きく分けて、「経皮経肝的な方法(PTBD: Percutaneous Transhepatic Biliary Drainage経皮経肝胆道ドレナージ)」と「内視鏡による経十二指腸乳頭的な方法(ENBD: Endoscopic Naso-Biliary Drainage内視鏡的経鼻胆道ドレナージ、ERBD: Endoscopic Retrograde Biliary Drainage内視鏡的逆行性胆道ドレナージ)」があります(図3)。
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図3 減黄処置の方法

外科療法の選択

胆道がんのおもな治療法には、「外科療法」と「化学療法」があります。化学療法のみで完全に治すことは難しいため、外科療法が根治的な治療となります。治療法は、がんの進行の程度と体の状態から決定します。胆道がんの外科療法は発生した部位によって術式が異なります。

遠位胆管がんと十二指腸乳頭部がん

遠位胆管は膵頭部の中を通っており、がんができると膵頭部周囲のリンパ節に転移しやすくなります。したがって遠位胆管がんに対しては膵頭十二指腸切除術が標準術式となります(図4)。十二指腸、膵頭部、胆嚢、遠位胆管の切除の後には胆管や残った膵臓、胃と小腸をつなぐ再建が必要です。この手術は複雑な手技が必要なため症例数の多い病院(high volume center)で行うことが推奨されています。肝臓からも膵臓からも離れている胆管がんは肝外の胆管切除のみで根治できる場合もあります。

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図4 膵頭十二指腸切除術の切除範囲

詳細は膵切除についてをご覧ください。

表1 十二指腸乳頭部がん、遠位胆管がん切除症例数 国立がん研究センター中央病院肝胆膵外科 2000年から2022年

十二指腸乳頭部がん術式 切除数
十二指腸乳頭部切除 9
膵頭十二指腸切除術 145

遠位胆管がん術式 切除数
肝外胆管切除 30
膵頭十二指腸切除術 176

 

肝門部領域胆管がん

肝門部領域胆管は肝臓の中心に近く、周りには肝動脈や門脈が走行しています(図5)。ここにがんができると多くの場合、肝臓の大部分を一緒に切除しなければなりません(図6)。予定する肝切除量が多い場合には、術前に門脈枝塞栓術を行います。これは肝臓内の門脈の枝に詰めものを行うことで残る予定の肝臓を肥大させて、術後肝不全のリスクを回避する方法です。

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図5 肝門部領域胆管がんと周囲の解剖

肝門部胆管がんのおもな術式

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    右肝切除

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    左肝切除

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    左三区域切除

 

肝門部領域胆管がん手術の中でも、広範囲進展がんに対して行われる左三区域切除術や、肝動脈門脈合併切除再建術、肝膵同時切除術は特に高度な術式で、高いチーム力が必要です。
手術関連死亡にいたる場合もあり、入念な準備と術後の管理が不可欠です。

表2 肝門部領域胆管がんの切除数 国立がん研究センター中央病院肝胆膵外科 2000年から2022年

術式 切除数
右三区域切除術(後区域+前区域+内側区域) 7
右肝切除術(後区域+前区域) 181
左三区域切除術(外側区域+内側区域+前区域) 42
左肝切除術(外側区域+内側区域) 154
その他 15
合計 399

 

胆嚢がん

胆嚢は肝臓に接しています。がんの広がりを正確に診断して、近くにある肝動脈、門脈、胆管や十二指腸、大腸を一緒に摘出する必要性を検討します(図7a)。
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図7a 胆嚢がん周囲の解剖

おもな術式として下記のものがあります。

  1. 周りの肝臓を一緒に切除する拡大胆嚢摘出術(図7b)
  2. 胆管も一緒に摘出し胆管と腸をつなぐ胆管合併切除術(図7c)
  3. 肝臓の右半分を摘出する右肝切除術(図7d)
  4. 十二指腸や膵頭部を一緒に摘出する膵頭十二指腸切除術(図7e)
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     図7b 拡大胆嚢摘出術

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    図7c 拡大胆嚢摘出術と胆管合併切除術

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    図7d 右肝切除術図 

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    図7e 膵頭十二指腸切除術

胆石や胆嚢炎の診断で胆嚢摘出を行った際に、胆嚢の病理検査でがんが見つかることがあります。がんの進行度によっては、追加切除をした方がいい場合もあります。

表3 胆嚢がんの切除数 国立がん研究センター中央病院肝胆膵外科 2000年から2022年
術式 切除数
拡大胆嚢摘出術 99
拡大胆嚢摘出術+胆管合併切除術 49
右肝切除術(後区域+前区域) 55
拡大胆嚢摘出+膵頭十二指腸切除術 26
その他 24
合計 253

胆道がんの化学療法

切除ができない胆道がんや術後再発した胆道がんに対しての化学療法は、ゲムシタビンとシスプラチンの併用療法(GC: Gemcitabine + Cisplatin療法)の有効性が複数発表され、標準治療とされています。体の状態が不良な場合や肝臓の機能が不良な場合、感染がおさまっていない場合には推奨されません。