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中央病院 皮膚腫瘍科 隆起性皮膚線維肉腫の治療について

更新日 : 2026年5月15日

目次

隆起性皮膚線維肉腫(りゅうきせいひふせんいにくしゅ/DFSP)とは

隆起性皮膚線維肉腫(DFSP)は、皮膚の深い部分(真皮)から発生する、まれな悪性腫瘍(肉腫)です。
増殖は比較的ゆっくりで、他の臓器への転移もまれな「中間悪性」のがんに分類されます。
しかし、最大の特徴は、周囲の組織にタコの足のように染み込んで広がりやすく、「局所再発」を繰り返しやすい点です。そのため、初回の治療で腫瘍を完全に取り除くことが、根治を目指すうえで最も重要となります。

DFSPの多くは、特定の遺伝子異常(COL1A1-PDGFB融合遺伝子)が原因であることが解明されています。この異常遺伝子が細胞増殖のスイッチを常にONにしてしまうことで、腫瘍が発生・増大します。

隆起性皮膚線維肉腫の症状について

初期症状は、痛みやかゆみのない、硬いしこりや盛り上がりとして現れます。
肌色から赤褐色調で、ケロイドや粉瘤(アテローム)、皮膚線維腫などと間違われることも少なくありません。

発生しやすい部位

体幹(胸、背中、腹部)が最も多いですが、四肢(腕や脚)や頭頸部(顔や首)にも発生します。

進行

数ヶ月から数年かけてゆっくりと大きくなります。

隆起性皮膚線維肉腫の診断について

国立がん研究センター中央病院では、経験豊富な専門医が連携し、正確な診断を行います。

視診・触診とダーモスコピー

専門医による診察から始まります。視診・触診が主体ですが、時にダーモスコピーという特殊な拡大鏡で皮膚の内部構造を観察し、他の皮膚腫瘍との鑑別を行います。

皮膚生検による確定診断

確定診断には、腫瘍の一部を採取して顕微鏡で調べる「皮膚生検」が不可欠です。
当院では、専門の病理医が詳細に組織を検討します。必要に応じて遺伝子検査も行い、後の治療方針をより正確に決定します。

画像検査(CT・MRI)による広がり評価

診断が確定すると、腫瘍が皮下脂肪や筋肉、骨にまで達しているか(深部浸潤)をMRIなどで詳細に評価します。
放射線診断科の専門医が読影を行い、手術計画のための重要な情報を提供します。

病期分類とチームによる治療計画

全ての検査結果を基に病期(ステージ)を決定します。
その後、皮膚腫瘍科内のカンファレンスで、個々の患者さんにとってより良い治療計画を議論します。これが国立がん研究センター中央病院が誇るチーム医療です。

隆起性皮膚線維肉腫の治療について

隆起性皮膚線維肉腫(DFSP)の治療は、腫瘍を完全に取り除く外科手術が基本です。
しかし、発生部位や大きさによっては、機能や見た目(整容性)に大きな影響が及ぶこともあります。

国立がん研究センター中央病院では、皮膚腫瘍科、放射線治療科、病理診断科、など各分野のエキスパートが密に連携し、個々の患者さんにとって「根治」と「治療後の生活の質(QOL)」を最大限に両立できる、より良い治療戦略を立案します。

1. 外科手術:根治を目指す中心的な治療

DFSPは、目に見える範囲を超えてタコの足のように染み込んでいるため、再発を防ぐには十分な範囲を切除することが最も重要です。

広範囲切除術

腫瘍の端から2~3cm以上の正常な皮膚を含めて、皮下の脂肪組織や筋膜までを一層として切除します。これはDFSPの根治を目指す上での標準的な手術方法です。
また頭頚部では、腫瘍の端から2~3cmの部分で切除すると、目や耳などの臓器が切除範囲に入ってしまうこともあります。その際は、臓器を温存するために、腫瘍の端から約1cmの縮小手術を行うことがあります。
術後は病理組織学的に評価します。もし広範に切除した辺縁の肉眼的に正常と思われていた皮膚にもがん細胞を認めた場合は、追加で切除することもあります。
当院では、豊富な経験に基づき、再発リスクを最小限に抑えるための適切な切除範囲を判断します。

再建手術(形成外科との連携)

広範囲の切除後には、皮膚の欠損部を修復する再建手術が必要です。当院では、症例に応じて再建を専門とする形成外科医がチームを組み、切除から再建までをスムーズに行います。

    • 植皮術: 太ももやお尻など、体の別の部位から薄い皮膚を採取し、欠損部に移植します。
    • 皮弁術: 血流を保ったまま、周囲の皮膚や筋肉を移動させて欠損部を覆います。より複雑な欠損や、関節部・顔面など動きや見た目が重要となる部位で用いられ、自然な仕上がりが期待できます。

2. 薬物療法:進行例に対する全身療法

適応となる患者さん

    • 腫瘍が非常に大きい、あるいは重要な臓器に浸潤しており、手術での完全切除が困難な場合
    • 肺などに遠隔転移した場合

代表的な薬剤

他の肉腫で使用される薬剤(パゾパニブ、エリブリン、トラベクテジン等)や、イマチニブ(国内未承認)といった分子標的薬が選択肢です。
患者さん一人ひとりの病期、腫瘍の場所や大きさ、年齢、全身状態、そしてご本人の希望などを総合的に検討して治療を選択します。

副作用への万全なサポート

むくみ、吐き気、皮疹、血液検査値の異常などの副作用が出ることがありますが、専門の医師、看護師、薬剤師がチームで連携し、症状に応じたきめ細やかな対策を行うことで、安全に治療を継続できるようサポートします。

3. 放射線治療:再発予防と機能温存のための選択肢

高エネルギーのX線を照射して、がん細胞を破壊する治療法です。DFSPでは、外科手術の補助的な役割として重要な選択肢となります。

適応となるケース

・術後補助療法

手術で切除した組織の断端にがん細胞が残ってしまった(断端陽性)場合や、再発リスクが非常に高いと判断された場合に、再発を予防する目的で行います。

・機能・整容性の温存

広範囲の切除が難しい顔面などの部位で、切除範囲を縮小し、放射線治療を組み合わせることで、根治を目指しながら良好な整容性を保つ戦略をとることがあります。

・手術が困難な場合の代替治療としても検討されます

高精度な照射技術

当院では、IMRT(強度変調放射線治療)などの技術を駆使し、腫瘍の形に合わせて複雑な照射を行うことが可能です。
これにより、周囲の正常な組織へのダメージを最小限に抑え、副作用を軽減しながら治療効果を最大化します。

治療後の長期的な安心のために:フォローアップ

DFSPは治療後も時間を経て局所再発する可能性があるため、長期にわたる定期的な経過観察が不可欠です。
当院では、患者さん一人ひとりの再発リスクに応じたフォローアップ計画を立て、定期的な診察や必要に応じた画像検査(MRIなど)を行い、万が一の再発にも迅速に対応できる体制を整えています。

隆起性皮膚線維肉腫の研究について

臨床試験(治験)

当院は、未来のがん医療を創るための研究開発拠点でもあります。
当科では、国内外の製薬企業や研究機関と連携し、新しい治療薬や治療法の開発を目指す臨床試験(治験)を多数実施しています。

隆起性皮膚線維肉腫の療養について

安心して治療に専念できるよう、さまざまなサポート体制を整えています。

がん相談支援センター

院内に設置された相談窓口です。専門の相談員が、治療や療養生活、医療費など、あらゆる相談に対応します。患者さんご本人だけでなく、ご家族もご利用いただけます。

公的支援制度の活用

高額療養費制度や傷病手当金など、経済的負担を軽減するための公的支援制度について、ソーシャルワーカーが詳しくご説明し、手続きをサポートします。

中央病院 皮膚腫瘍科を受診される皆様へ

隆起性皮膚線維肉腫という希少がんの診断を受け、大きな不安を抱えていらっしゃるかと思います。どうか一人で悩まないでください。
当科では、各分野の専門家がチームを組み、豊富な実績に基づいて、診断から治療後の生活までを一貫してサポートいたします。手術から最新の治験まで、患者様お一人おひとりに合わせた幅広い治療の選択肢をご提案します。
私たちは、あなたの最も身近なパートナーとして共に病気に立ち向かいます。まずはお気軽にご相談ください。

受診をご希望の方へ

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メッセージ

私たちの使命は、単に腫瘍を取り除くだけではありません。治療を経て、あなたが再び安心して笑顔で毎日を送れるようになること、それが私たちの最終的なゴールです。
治療の過程では、機能や見た目のこと、お仕事やご家族のこと、そして将来のことなど、様々な不安や迷いが生じると思います。
その一つひとつに丁寧に耳を傾け、あなたにとって何が良いかを一緒に考え、納得のいく治療法を選択していくのが私たちの役割です。
希望を持って、私たちと一緒に一歩ずつ前に進んでいきましょう。

並川 健二郎 (なみかわ けんじろう)

皮膚腫瘍科長 並川 健二郎

専門医・認定医資格など:

日本皮膚科学会 認定皮膚科専門医
日本皮膚科学会 認定皮膚悪性腫瘍指導専門医
日本がん治療認定医機構 がん治療認定医

中野 英司(なかの えいじ)2022.jpg

皮膚腫瘍科医長 中野 英司

専門医・認定医資格など:

日本皮膚科学会 認定皮膚科専門医
日本皮膚科学会 認定皮膚悪性腫瘍指導専門医
日本がん治療認定医機構 がん治療認定医

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皮膚腫瘍科医員 鹿毛 勇太

専門医・認定医資格など:

日本皮膚科学会 認定皮膚科専門医

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皮膚腫瘍科医員 瀬下 治孝

専門医・認定医資格など:

日本皮膚科学会 認定皮膚科専門医