トップページ > 診療科 > 皮膚腫瘍科 > 中央病院 皮膚腫瘍科 皮膚付属器がんの治療について
中央病院 皮膚腫瘍科 皮膚付属器がんの治療について
更新日 : 2026年5月15日
目次
- 皮膚付属器がんとは
- 皮膚付属器がんの症状について
- 皮膚付属器がんの診断について
- 皮膚付属器がんの治療について
・手術(外科治療)
・放射線治療
・薬物療法 - 皮膚付属器がんの研究について
- 皮膚付属器がんの療養について
- 中央病院 皮膚腫瘍科を受診される皆様へ
皮膚付属器がんとは
皮膚付属器がんは、皮膚がんの中でも比較的まれな「希少がん」の一種です。
皮膚には、汗を出す「汗腺」、皮脂を出す「脂腺」、毛を作る「毛包」といった、皮膚の機能を支える「皮膚付属器」と呼ばれる組織があります。皮膚付属器がんは、これらの組織から発生する悪性腫瘍の総称です。
発生頻度は低いものの、非常に多くの種類が存在し、診断や治療には高度な専門性が求められます。私たち国立がん研究センター中央病院 皮膚腫瘍科は、こうした希少な皮膚がんの診療経験が豊富であり、全国から多くの患者さんを受け入れています。
主な種類
皮膚付属器がんは、発生した組織によって大きく3つに分けられます。それぞれ性質が異なり、特に薬物療法において治療戦略が変わることがあります。
汗腺がん
汗腺によく似た特徴を持った細胞のがんです。赤みを帯びた硬いしこりとして現れることが多く、頭頸部や四肢、腋窩や下腹部などの体幹によく見られます。一部のタイプは乳がんとの共通点があり、特定の分子標的薬が有効な場合があります。
脂腺がん
皮脂腺によく似た特徴を持った細胞のがんです。特にまぶた(眼瞼)に好発しますが、体のどこにでも生じます。「ものもらい」や「めばちこ」と間違われやすく、何度も再発を繰り返す場合は専門医の診察が不可欠です。遺伝性疾患との関連を示す場合があります。
毛包がん
毛包(毛根を包む組織)によく似た特徴を持った細胞のがんです。頭皮や顔面など毛の多い部分にできやすく、硬いしこりや、時に脱毛を伴うことがあります。
原因・リスク要因
ほとんどの皮膚付属器がんは、特定の原因なく偶発的に発生します。
しかし、過去に放射線治療を受けた部位からの発生や、「Muir-Torre(ミューア・トーレ)症候群」という特定の遺伝性疾患に伴って脂腺がんが発生しやすいことなどが知られています。
確立された予防法はないため、早期発見・早期治療が何よりも重要です。
皮膚付属器がんの症状について
初期症状とセルフチェック
皮膚付属器がんの初期症状は、痛みやかゆみを伴わない「しこり」や「できもの」として現れることがほとんどです。見た目は様々で、いぼのように盛り上がったり、皮膚の下に硬い塊として現れたりします。
【こんなサインに注意してください】
- 数か月~数年かけてゆっくり大きくなる、赤みや肌色のできもの
- 急に大きくなり始めた、これまであったしこり
- 治りにくい傷や潰瘍(皮膚がえぐれた状態)
- まぶたにできた「ものもらい」が治らない、または同じ場所で繰り返す
- できものから液体が出たり、出血したりする
これらの症状は、良性の腫瘍や他の皮膚疾患と見分けがつきにくいため、「ただのできもの」と自己判断せず、気になる症状があれば専門医を受診することが大切です。
進行した場合の症状
がんが大きくなると、出血や痛みを伴うようになります。また、がん細胞がリンパ管や血管を通って広がり、「リンパ節転移」や、肺・肝臓・骨などへの「遠隔転移」を起こすことがあります。
首や脇の下、足の付け根のリンパ節が腫れてきた場合は、転移のサインかもしれません。
皮膚付属器がんの診断について
診断確定までの流れ
皮膚付属器がんの診断は、以下のステップで進められます。
1.視診・触診
医師が直接できものを観察し、大きさ、形、硬さ、色調などを確認します。
2.ダーモスコピー検査
ダーモスコープという特殊な拡大鏡を使い、できものの表面構造を詳細に観察し、他の皮膚腫瘍との鑑別を行います。
3.画像検査(CT、MRI、PET-CTなど)
がんの深さや広がり、リンパ節や他の臓器への転移の有無を調べるために行います。
4.皮膚生検(組織検査)
診断を確定させるために最も重要な検査です。局所麻酔をし、できものの一部を採取して顕微鏡で詳しく調べます。この病理診断によって、がんの確定診断、そして汗腺がん・脂腺がん・毛包がんといった詳細な種類の特定が行われます。
病期(ステージ)
診断の結果をもとに、がんの進行度をTNM分類という世界共通の基準で評価します。
- T(Tumor): 原発巣(もとのがん)の大きさや深さ
- N(Node): 所属リンパ節への転移の有無と範囲
- M(Metastasis): 遠隔転移(他の臓器への転移)の有無
皮膚付属器がんのためのTNM分類が無いため、他の皮膚がんと共通の分類を使用します。
これらを総合して、Stage I(早期)~IV(進行)の病期が決定され、治療方針を決める上で重要な指標となります。
皮膚付属器がんの治療について
皮膚付属器がんの治療は、がんの種類、進行度(ステージ)、発生した場所、そして患者さんご自身の全身状態や希望を総合的に考慮して決定されます。
当院では、各分野の専門家が緊密に連携し、科学的根拠(エビデンス)に基づいた標準の治療で、患者さん一人ひとりにとってより良い選択肢を提案します。
治療方針の決定:集学的治療の実践
皮膚腫瘍科、先端医療科や腫瘍内科、放射線治療科、病理診断科などの専門家と議論を行い、個々の患者さんの治療方針を多角的に検討します。これにより、手術、放射線、薬物療法を組み合わせた「集学的治療」を実践しています。
1.手術(外科治療):根治を目指す治療の第一選択
転移のない限局性のがんに対しては、がんを完全に取り除くための手術が最も重要な治療です。
広範切除術
がんの周囲に安全なマージン(正常な皮膚を含めた範囲)をつけて切除します。これにより、目に見えないレベルで広がっている可能性のあるがん細胞も取り除き、再発のリスクを低減させます。
再建手術
切除範囲が広い場合は、皮膚腫瘍科内で適切な方法を検討したうえで、体の他の部位から皮膚や組織を移植して、機能と見た目をできる限り回復させる「再建手術」を同時に行います。
2.放射線治療:手術を支え、症状を和らげるもう一つの柱
高エネルギーのX線を照射してがん細胞を破壊する治療です。役割は大きく分けて3つあります。
術後補助療法
手術で切除した後に、再発のリスクが高いと判断された場合(断端陽性、リンパ節転移など)に行います。
根治的放射線治療
高齢や合併症などで手術が難しい場合、手術の代わりとして行われることがあります。
緩和的放射線治療
転移による痛みや出血などの症状を和らげる目的で行います。
3.薬物療法:がんの種類に応じた個別化戦略
手術で取りきれないほど進行した場合や、遠隔転移・再発した場合には、全身に効果を及ぼす薬物療法を行います。皮膚付属器がんは、その種類によって薬物療法の考え方が大きく異なります。 当科では、がんの特性を正確に見極め、一人ひとりの患者さんにより良い治療法を選択します。
免疫チェックポイント阻害薬
・概要
がん細胞によってかけられた免疫へのブレーキを外し、患者さん自身の免疫細胞(T細胞)が再びがんを攻撃できるようにする薬です。
・代表的な薬剤
ニボルマブが保険適用となっています。
・副作用(免疫関連有害事象: irAE)
免疫が過剰に働くことによる特有の副作用(皮膚障害、甲状腺機能異常、下痢・大腸炎、肝機能障害、1型糖尿病など)が起こり得ます。当院では、皮膚腫瘍科、総合内科、各臓器の専門家が連携し、副作用の早期発見と専門的な管理を行う体制を整えています。
化学療法(抗がん剤治療)
・概要
免疫チェックポイント阻害薬の効果が乏しい場合や、合併症・副作用で使用できない場合に選択されます。
・代表的な薬剤
有棘細胞がんなど他の皮膚がんに準じた治療法が行われることがあります。
・副作用
骨髄抑制(白血球減少など)、吐き気、脱毛、倦怠感などが一般的ですが、これらの副作用を軽減するための支持療法も積極的に行い、患者さんの負担を和らげます。
分子標的薬(抗HER2治療)
・概要
皮膚付属器癌の一部ではHER2という分子が見られることがあり、乳がんで使われる抗HER2薬が有効な可能性があります。
当院では、がん種ごとの特徴を踏まえ、がん遺伝子パネル検査を積極的に活用し、適切な薬物療法を検討しています。
皮膚付属器がんの研究について
臨床試験(治験)
当院は、未来のがん医療を創るための研究開発拠点でもあります。
当科では、国内外の製薬企業や研究機関と連携し、新しい治療薬や治療法の開発を目指す臨床試験(治験)を多数実施しています。
皮膚付属器がんの療養について
治療後の経過観察
治療が終わった後も、再発や転移がないかを確認するために、定期的な通院が必要です。診察や画像検査(CT、エコーなど)を、がんの種類やステージに応じて計画的に行います。通常、治療後5年間は経過観察を行いますが、状態によってはそれ以降もフォローアップを継続します。
再発・転移した場合の治療
残念ながら再発・転移が確認された場合でも、治療の選択肢がなくなるわけではありません。切除可能であれば再度手術を行ったり、放射線治療や薬物療法を検討します。患者さんの希望や体の状態を最優先に考え、症状を和らげながら生活の質(QOL)を維持することを目標に、治療を継続します。
日常生活のケアとサポート
がんの治療は、身体的・精神的に大きな負担を伴います。当院では、がん専門の看護師、薬剤師、ソーシャルワーカー、心理士などがチームを組み、患者さんとご家族をサポートする体制を整えています。「がん相談支援センター」にて治療の副作用対策、医療費や生活に関する相談、心のケアなど、どんなことでもお気軽にご相談ください。
中央病院 皮膚腫瘍科を受診される皆様へ
皮膚付属器がん(汗腺がん、脂腺がん、毛包がんなど)という聞き慣れない病名を告げられ、今、大きな不安の中にいらっしゃるかもしれません。どうか、一人で悩まないでください。私たち国立がん研究センター中央病院 皮膚腫瘍科は、まさにそのような希少な皮膚がんの患者さんと共に病気に立ち向かうために設立された専門家集団です。
現在の診断や治療方針に疑問や不安がある場合、セカンドオピニオンとして当科にご相談いただくことも可能です。専門家チームの見解を聞くことで、ご自身の状況をより深く理解し、納得して次のステップに進むことができます。私たちの扉は、常に開かれています。まずは、かかりつけの先生にご相談の上、紹介状をご準備いただき、一歩を踏み出してください。
受診をご希望の方へ
メッセージ
皮膚付属器がんは、まれな病気であるがゆえに診断が難しく、どこで治療を受ければ良いか不安に思われる患者さんも少なくありません。私たち国立がん研究センター中央病院 皮膚腫瘍科は、このような希少な皮膚がんの診断から治療、研究までを一貫して行う専門施設です。
私たちの強みは、豊富な診療経験と、各診療科の専門家が結集するチーム医療にあります。一人ひとりの患者さんの病状と背景を深く理解し、議論を尽くした上で、科学的根拠に基づくより良い治療方針をご提案します。
「治りにくいできものがある」「皮膚付属器がんと診断された」など、不安を抱えていらっしゃる方は、ぜひ一度ご相談ください。私たちは、患者さんとご家族に寄り添い、希望を持って病気に立ち向かえるよう、全力でサポートすることをお約束します。

皮膚腫瘍科長 並川 健二郎
専門医・認定医資格など:
日本皮膚科学会 認定皮膚科専門医
日本皮膚科学会 認定皮膚悪性腫瘍指導専門医
日本がん治療認定医機構 がん治療認定医

皮膚腫瘍科医長 中野 英司
専門医・認定医資格など:
日本皮膚科学会 認定皮膚科専門医
日本皮膚科学会 認定皮膚悪性腫瘍指導専門医
日本がん治療認定医機構 がん治療認定医

皮膚腫瘍科医員 鹿毛 勇太
専門医・認定医資格など:
日本皮膚科学会 認定皮膚科専門医

皮膚腫瘍科医員 瀬下 治孝
専門医・認定医資格など:
日本皮膚科学会 認定皮膚科専門医

