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中央病院 皮膚腫瘍科 有棘細胞がんの治療について

更新日 : 2026年3月25日

目次

有棘細胞がんとは

有棘細胞(ゆうきょくさいぼう)がんは、皮膚の表面を構成する表皮の中間層にある「有棘細胞」から発生するがんです。
主な原因は、長年にわたって浴び続けた紫外線による皮膚へのダメージです。
ゆっくりと進行することが多いですが、放置すると皮膚の深部へ浸潤したり、リンパ節や他の臓器へ転移したりする可能性があるため、早期の専門的な診療が非常に重要です。

図1図1:表皮の構造と細胞
出典:国立がん研究センターがん情報サービス

有棘細胞がんの症状について

有棘細胞がんの症状は、発生する部位や進行度によって様々です。自己判断は難しいため、気になる症状があれば専門医に相談することが大切です。

好発部位

長年の紫外線曝露が主な原因であるため、日光を浴びやすい場所にできやすいのが特徴です。

顔面

鼻、頬、耳、唇など

頭部

特に毛髪が薄い部分の頭皮

手足

手の甲、腕、すね


また、紫外線とは関係なく、やけどの痕(瘢痕)、治りにくい傷(慢性潰瘍)、放射線治療を受けた後の皮膚など、長期間にわたって刺激が加わった部位から発生することもあります。

様々な見た目(臨床症状)

有棘細胞がんの見た目は多彩で、一つとして同じものはありません。
インターネット上の画像だけで自己判断することは危険です。代表的な症状には以下のようなものがあります。

腫瘤(しゅりゅう)

赤みを帯びた硬いしこりができ、徐々に大きくなります。表面がカリフラワーのようにごつごつしたり、ただれて出血しやすくなったりします。

潰瘍(かいよう)

はじめは小さな傷やただれのように見えますが、薬を塗っても治らず、徐々に深くえぐれたような潰瘍になります。しばしば出血したり、悪臭を伴ったりします。

局面(きょくめん)

赤くカサカサした局面で、一見すると湿疹や乾癬(かんせん)に似ています。かゆみはほとんどなく、一般的な皮膚炎の治療では改善しないのが特徴です。


これらの症状に気づいたら、決して放置せず、できるだけ早く皮膚がんの専門医による診療を受けてください。

有棘細胞がんの診断について

当院皮膚腫瘍科では、皮膚がん診療の豊富な経験を持つ専門医が、豊富な知見と技術を駆使して正確な診断を行います。

1.専門医による診察とダーモスコピー検査

まず、患部の見た目や硬さを詳細に観察します。
ダーモスコピーという特殊な拡大鏡を用いることで、肉眼では困難な皮膚の微細な構造を画像として捉え、良性か悪性かの判断精度を高めます。

2.皮膚生検(確定診断)

診断を確定するため、局所麻酔下に病変の一部をメスで採取し、病理診断科の専門医が顕微鏡で詳細に調べる「病理組織検査」を行います。
これにより、がんの種類や悪性度を正確に評価します。

画像診断による病期(ステージ)評価

がんの広がり(深さや大きさ)、リンパ節転移、遠隔転移の有無を評価するため、超音波(エコー)、CT、MRI、PET-CTといった高度な画像検査を放射線診断科と連携して実施します。
これらの結果を統合し、治療方針の根幹となる病期を正確に決定します。

有棘細胞がんの治療について

当院の最大の特徴は、皮膚腫瘍科が中心となり、形成外科、腫瘍内科、放射線治療科など各分野の専門家が緊密に連携する「集学的治療」を実践している点です。
患者さん一人ひとりの病状やライフスタイルに応じて、より良い治療法を組み合わせます。

1.外科治療(手術):根治を目指すための第一選択

早期の有棘細胞がんであれば、手術でがんを完全に取り除くことで根治が期待できます。
当院では、根治性を追求すると同時に、整容性(見た目)や機能の温存を最大限に考慮した手術を実践します。

広範切除術

手術の基本は、がん細胞が周囲に広がっている可能性を考慮し、腫瘍の周りに数ミリから1cm程度の安全な距離(マージン)をつけて切除する「広範切除術」です。

機能と整容性を両立させる再建手術

がんを切除した後の皮膚の欠損部をきれいに治す「再建手術」は、治療後のQOL(生活の質)を左右する重要なプロセスです。当院では、欠損の大きさや部位に応じてより良い方法を選択します。
小さな欠損は単純に縫い合わせる「縫縮」、大きな欠損には太ももなどから皮膚を移植する「植皮術」や、周囲の皮膚を血流ごと移動させて欠損部を覆う「皮弁術」といった高度な技術を駆使し、複雑な頭皮や顔面の再建にも対応します。

センチネルリンパ節生検による低侵襲な転移診断

がんが一定以上の大きさの場合など、リンパ節転移のリスクを評価するために「センチネルリンパ節生検」を行います。
これは、がんが最初に転移する可能性のあるリンパ節(センチネルリンパ節)だけを特殊な色素や放射性同位元素を用いて特定し、摘出して転移の有無を精密に調べる低侵襲な手術です。
ここで転移がなければ、周囲のリンパ節を広範囲に切除する「リンパ節郭清」を省略でき、腕や足のむくみ(リンパ浮腫)といった後遺症のリスクを大幅に軽減できます。

2.放射線治療

手術が困難な大きさや部位のがん、ご高齢で手術が難しい場合、また手術後の再発予防などを目的に行われます。
放射線治療科の専門医がCT画像に基づき、がんの形に合わせてミリ単位で精密な照射計画を立て、副作用を最小限に抑えながら高い治療効果を目指します。

3.化学療法:進行・転移がんに対する新たな希望

術での根治が困難な局所進行がんや、遠隔転移を伴う進行がんに対しては、全身に効果を及ぼす化学療法が治療の主役となります。
近年、特に免疫療法の進歩により治療成績は飛躍的に向上しており、当院はこれらの新薬開発を主導してきた施設です。

免疫チェックポイント阻害薬

現在の化学療法の中心となる治療法です。
がん細胞は、免疫細胞(T細胞)の攻撃にブレーキをかけることで増殖しますが、この薬はがん細胞がかけているブレーキを解除し、患者さん自身の免疫力を回復させてがんを攻撃させます。有棘細胞がんに対しては、ニボルマブが保険適用となっています。
当院は治験を多数手がけてきた経験から、効果を引き出しつつ、免疫関連の副作用(免疫関連有害事象)に対する専門的な管理体制を整えています。

化学療法

免疫療法の効果が不十分な場合や、適応とならない患者さんのための重要な選択肢です。従来からある抗がん剤(プラチナ製剤など)を用いる「化学療法」があります。
患者さんの全身状態やがんの特性に応じてより良い薬剤を選択し、副作用を軽減するための支持療法を徹底することで、療養生活の質を保ちながら治療を行います。

集学的治療における化学療法

化学療法は、進行例だけでなく、手術や放射線治療と組み合わせることで治療効果を高める目的でも用いられます。
手術後の再発リスクを低減する「術後補助療法」、放射線治療と併用して効果を高める「化学放射線療法」など、当院では皮膚腫瘍科と放射線治療科が集まるカンファレンスで、一人ひとりの患者さんにより良い集学的治療プランを提案します。

有棘細胞がんの研究について

臨床試験(治験)

当院は、未来のがん医療を創るための研究開発拠点でもあります。
当科では、国内外の製薬企業や研究機関と連携し、新しい治療薬や治療法の開発を目指す臨床試験(治験)を多数実施しています。

*現在は募集している臨床試験(治験)はありません。

有棘細胞がんの療養について

がんの治療と向き合いながら、また治療を終えた後も、患者さんが自分らしく過ごせるよう、当院では多角的なサポート体制を整えています。

治療と並行して行う緩和ケア・支持療法

当院では、がんと診断された早期から緩和ケアを開始します。これは、痛みや倦怠感、治療の副作用、不安といった心の問題など、患者さんが経験する様々な苦痛を和らげるためのケアです。
サポートティブケアセンターや緩和医療科などがチームとなり、患者さんが安心して治療に臨み、療養生活の質(QOL)を維持できるよう支援します。

治療後のフォローアップと再発予防

治療後も、定期的な診療で再発や転移、新たな皮膚がんの発生がないかを注意深くフォローアップします。
有棘細胞がんの最大の原因は紫外線であるため、再発予防として「紫外線対策」が極めて重要です。日焼け止めの適切な使用方法、帽子や衣類による遮光など、日常生活で実践できる具体的な方法を皮膚腫瘍科の専門家が丁寧に指導します。

療養生活を支えるサポート体制

治療費や仕事のこと、日常生活での悩みなど、療養生活には様々な課題が伴います。
院内にある「がん相談支援センター」では、専門の相談員が患者さんやご家族からのあらゆる相談に対応し、問題解決のお手伝いをします。

中央病院 皮膚腫瘍科を受診される皆様へ

皮膚に気になる変化を見つけたとき、「これは何だろう」「悪いものではないか」と、大きな不安を感じるのは当然のことです。
特にインターネットで情報を検索すると、様々な画像や情報が溢れており、かえって混乱や心配が増してしまうこともあるかもしれません。
しかし、有棘細胞がんを含む多くの皮膚がんは、「早期発見・早期治療」が何よりも重要です。専門医による正確な診療を受け、適切な治療へと繋げることで、根治の可能性は大きく高まります。
私たち国立がん研究センター中央病院 皮膚腫瘍科は、診断から治療、そして治療後のケアまで、皮膚がんに関するあらゆる段階で患者さんを支える体制を整えています。
もし、ご自身の皮膚、あるいはご家族の皮膚に少しでも気になる症状があれば、どうか一人で悩まず、専門機関の扉を叩いてください。その一歩が、あなたの未来を守るための最も大切な行動となります。

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メッセージ

「皮膚にできた“できもの”や“治りにくい傷”を前に、ご不安な日々をお過ごしかもしれません。しかし、皮膚がんは“目に見える”がんであり、早期に適切な対応をすることで、多くは根治が可能です。大切なのは、専門家による正しい診断と、それに基づいたより良い治療をできるだけ早く始めることです。
私たち国立がん研究センター中央病院 皮膚腫瘍科は、皮膚がん診療のスペシャリスト集団です。診断の精度を高めることから、根治性と機能・整容性を両立させる手術、そして免疫療法などの化学療法や治験まで、あらゆる選択肢を駆使して、患者さん一人ひとりにより良い医療を提供することをお約束します。
あなたの不安を、私たち専門チームが希望に変えるお手伝いをします。どうぞ一人で悩まず、私たちにご相談ください。一緒に病気に立ち向かいましょう。」

並川 健二郎 (なみかわ けんじろう)

皮膚腫瘍科長 並川 健二郎

専門医・認定医資格など:

日本皮膚科学会 認定皮膚科専門医
日本皮膚科学会 認定皮膚悪性腫瘍指導専門医
日本がん治療認定医機構 がん治療認定医

中野 英司(なかの えいじ)2022.jpg

皮膚腫瘍科医長 中野 英司

専門医・認定医資格など:

日本皮膚科学会 認定皮膚科専門医
日本皮膚科学会 認定皮膚悪性腫瘍指導専門医
日本がん治療認定医機構 がん治療認定医

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皮膚腫瘍科医員 鹿毛 勇太

専門医・認定医資格など:

日本皮膚科学会 認定皮膚科専門医

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皮膚腫瘍科医員 瀬下 治孝

専門医・認定医資格など:

日本皮膚科学会 認定皮膚科専門医