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国立がん研究センター 中央病院

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診療について

胃がんは、病気の進み具合により治療法や治癒率が大きく変わります。正確な診断に基づいて治療方針を決定するために、当院では内視鏡医、外科医、内科医が常に外来におり、相談をしながら診療を行っています。

また、胃がん病棟を共有して緊密に連携していますので、手術と抗がん剤治療の両方が必要な患者さんも、病棟を移動することなく、外科主治医と内科主治医のもとで安心して滞りなく治療を受けられます。

私たちは「治す」、「機能温存」、「低侵襲手術」を重視し治療しています。

治す

標準治療で高い生存率・低い手術関連死亡率

標準治療を胃がん治療のエキスパートが、適正に行うことにより高い生存率が得られています。当院で治療を受けた多くの患者さんが治っています。

胃がんでは、治療によりがんが消失してから5年後までに再発がない場合を「治癒」とみなします。5年経過後に生きている患者さんの割合(5年全生存率)は「治癒」の指標としてよく用いられます。胃がん以外の原因で亡くなられた患者さんが多いと全生存率は低くなってしまいますので、5年経過後に胃がんで亡くなっていない患者さんの割合(5年疾患特異的生存率)も「治癒」のよい指標になります。I期であれば100%近く、がんが進行したIIIA、IIIBでも60%前後の患者さんが治っています。

2018年度におこなった症例の手術関連死亡率は0%でした。2013年から2018年(2766例)では、手術関連死亡率 0.036% (1例)でした。安全な手術を提供することも私たちのモットーです。

表1.病期別の5年生存率(2000年から20012年手術患者)

病期(Stage) IA IB IIA IIB IIIA IIIB IIIC IV 全例
手術患者数(人) 2,757 529 432 395 403 273 117 193 5,099
全生存率(%) 95.3 93.5 87.4 80.1 66.0 54.6 33.0 22.2 88.9
疾患特異的生存率(%) 99.5 97.6 94.8 85.7 69.9 57.4 34.6 24.4 88.9

全生存率はがん以外で亡くなる患者さんもカウントされますので疾患特異的死亡率よりも低くなります。

治らなかった胃がんも治るように

図1.抗がん剤治療を手術前に行い小さくなったがん

上は内視鏡で見た胃がん、下は患者さんの体の断面を示すCT写真。
左は抗がん剤治療前、右は抗がん剤治療後

画像1 抗がん剤治療を手術前に行い小さくなったがん

CT写真で、黄色の点線で囲まれたように、胃から遠く離れた大動脈リンパ節に転移や、膵臓の周囲に大きなリンパ節転移があると、標準手術でがんがとり切れても5年生存率は5%から10%しかありませんでした。

抗がん剤治療を手術前に行うと、多くの患者さんで胃の中のがんが小さくなり、転移したリンパ節も小さくなります。抗がん剤治療後に、大動脈リンパ節を含めた拡大手術を行うことで、5年生存率は60%程度と大幅に高まりました。この手術は、難しい手術ですが、当科では経験も豊富で安全に行うことができます。

機能温存

早期胃がんの患者さんには治癒を前提として、胃の機能温存に力を注いでいます。

胃全摘を回避

胃の上部のがんには、胃の上部のみを切除し、小腸を食道と胃の間に移植する噴門側胃切除を積極的に導入しています。噴門側胃切除後に発生しやすい逆流の頻度が少ない手術です。

図2 噴門側胃切除の模式図

画像2 噴門側胃切除の模式図

幽門保存

胃の出口の幽門は胃での消化にたいせつな働きをしています。がんが幽門から離れているときは幽門保存胃切除を行っています。幽門の働きを司る神経も温存します。

図3 幽門保存胃切除の模式図

画像3 幽門保存胃切除の模式図

低侵襲手術

腹腔鏡下手術

 

腹腔鏡下手術は、腹部に数か所小さな穴を開け、そこから腹部を炭酸ガスでふくらませ、棒状のカメラや鉗子(かんし)などの器具を入れて手術をする方法です。医師は、腹部に入れた小型カメラによって、大きく映し出された映像を見ながら手術を行います(図4)。早期の癌に対する腹腔鏡下手術は、開腹手術よりも創が小さく、手術後の回復が早いこと、開腹手術と同じくらいの効果があることが証明されており、標準治療として確立しています。

図4 腹腔鏡下胃切除の模式図

二酸化炭素でお腹を膨らませ、内視鏡をお腹の中に挿入しテレビの画面を見ながら手術を進めます。

画像4 腹腔鏡下胃切除の模式図

ロボット支援下手術

ロボット支援手術は腹腔鏡下手術がさらに進化したものですが、基本的なしくみは同じです。医師は、操作システムに映し出される3Dカメラの映像を見ながら、操縦室のような場所(コンソールと呼びます)に座って、鉗子を遠隔操作します(ロボットが自動で手術をするわけではありませんし、医師は手術室の中にいます)(図5)。

図5 ロボット支援下手術
ロボット手術

鉗子は医師の操作で自由に曲げることができ、さらに医師の手の震えが器械で制御されますので、腹腔鏡下手術よりも正確な操作が可能です。胃がんに対するロボット支援手術は、安全性を確かめるための臨床試験が先進医療制度のもと国内で行われました。この試験で良好な結果が得られたため、2018年より一定の条件を満たす施設では、胃癌に対するロボット支援下手術を保険診療で行えるようになりました。当科では、ロボット支援下手術も積極的に行っています。