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研究について

病理診断科では診断に直結する外科病理学的研究も積極的に行っており、研究所、臨床各科および他施設との研究協力も積極的に行われています。2022年度における研究活動を以下に要約します。

肝胆膵腫瘍部門

膵腺房細胞性腫瘍の感度・特異度ともに高い免疫染色マーカーCPA2, CPA1を新たに開発し、切除検体・EUS-FNA/B検体での診断に有用であることを報告した。胆管発生の肝様がんとその関連腫瘍に関する臨床病理像を示した。

消化管腫瘍部門

近年注目されているH. pylori未感染胃に発生する腺窩上皮型腫瘍の解析を行い、その分子生物学的特徴と家族性大腸腺腫症随伴病変との関連を明らかにしました。大腸癌多数例の解析を通じ、HER2発現陽性例の特徴を明らかにした。 

皮膚腫瘍部門

末端型悪性黒色腫におけるAKTリン酸化が再発予後不良に関連することを報告した。転写因子SOX9の皮膚付属領域での蛋白発現レベルの差をもとに画像データからのsingle cell/ spatialな解析により領域を分離し、さらにマルチエクソーム解析を併用することにより腫瘍の多様性を具体的にする”Geno-Computed Pathology”という手法を考案し、診断に苦慮する皮膚付属器癌の本体解明を行った。

頭頸部・眼腫瘍部門

当院における47例の頭頸部粘膜悪性黒色腫の臨床的予後につて報告した。口腔粘膜黒色腫群の疾患特異的生存率は、副鼻腔粘膜黒色腫群よりも有意に良好であり、副鼻腔粘膜黒色腫は、全生存期間および疾患特異的生存期間において、独立して有意な予後不良因子であることが明らかとした。加えて口腔粘膜黒色腫患者は副鼻腔粘膜黒色腫患者よりもリンパ節転移の発生率が高いことを示した。頭頸部癌術後の再建皮弁に発症した2次性の原発扁平上皮癌21例による組織学的、予後について報告した。唾液腺明細胞癌における新規癒合遺伝子EWSR1::LARP4について報告しました。合わせて唾液腺腫瘍の高悪性度転換の機構がゲノム増幅を一因とすることを解明した。

婦人科腫瘍部門

子宮内膜間質肉腫148例のJCOG多施設後方視的研究、女性バルトリン腺でのNKX3.1発現、類内膜癌(G3)におけるCTNNB1変異の意義、子宮頸癌のADC標的(FRα及びMesothelin)、子宮体癌のリンパ節転移予測モデル、婦人科癌の原発-再発巣におけるHER3の発現変化につき論文発表し、FTMのNKX3.1発現子宮体癌、卵巣microcystic stromal tumorの腹腔内再発、PEComa様の表現型を示した平滑筋肉腫、子宮頸部ABCとACCの混合癌、の症例報告をした。

骨軟部腫瘍部門

CIC再構成肉腫の一部でERGとCD31を発現する群があることを見出し、その臨床病理像や血管肉腫との鑑別点を明らかにした。褐色脂肪腫に組織像の類似した脂肪肉腫16例の臨床病理学的解析を行い、褐色脂肪腫との鑑別点を明らかにした。ZFTA::RELA融合を有し軟骨様脂肪腫に類似した特異な脂肪肉腫を報告した。頭蓋底の脱分化型脊索腫においてH3K27me3消失と特徴的な組織像を示す一群を発見した。BPOP(Nora's lesion)にCOL1A1/2の遺伝子異常があることを国際共同研究で明らかにした。

脳腫瘍部門

ATXN1::DUX4遺伝子融合を有する中枢神経肉腫の成人症例を世界で初めて報告した。浸潤性神経膠腫のIDH1 R132H変異をdigital PCR法により検出する方法を確立した。

血液腫瘍部門

CD3陰性かつCD20陰性非ホジキンリンパ腫/白血病について病理診断方法を検討した。BCL2陰性濾胞性リンパ腫の臨床病理学的特徴や診断方法について検討した。造血器パネル検査に関する研究を関係各科と行った。

泌尿器腫瘍部門

TFEB転座および増幅とVEGFA増幅を同時に有する腎癌について報告した。

乳腺腫瘍部門

HER2低発現乳癌に関するステートメント(乳癌学会)の作成に携わった。術後補助療法を省略した早期トリプルネガティブ乳癌症例に関する報告や、トリプルネガティブ乳癌の原発巣および転移巣におけるPD-L1発現、免疫状況に関する報告を行った。

呼吸器腫瘍部門

EGFR陽性非小細胞肺がんの周術期を含めた遺伝子解析および治療に関するESMOでの有識者提言、MET陽性非小細胞がんにおけるATORG(アジア胸部腫瘍研究グループ)としての有識者提言を発表した。また、肺腺癌における組織グレードと遺伝子解析結果、臨床転機について報告したほか、胸腺腫におけるINSM1の発現、浸潤性粘液腺癌における粘液結節の遺伝子解析結果について発表した。