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病院設置型BNCT(ホウ素中性子捕捉療法)について
更新日 : 2025年7月8日
ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)とは
通常の生体内元素の数千倍の核反応を中性子と起こすホウ素薬剤BPA(p-boronophenylalanine)を、注射により腫瘍細胞に集積させ、そこに中性子を照射し、病巣内部に限局的な核反応を起こします。核反応により生じた重荷電粒子は、従来の放射線療法と比べ、はるかに大きな線量を腫瘍細胞のみに照射することができ、これまで治療不可能であった病巣にも著しい損傷を与えることが期待できる大きな可能性を持った治療法です。
当院における共同研究
これまで、BNCTは、中性子源を原子炉に依存していたことから、広く普及させることができない現状でした。当院では2010年より株式会社CICSとの共同研究により、直線加速器を利用した中性子源を用いることによって、IAEA(国際原子力機関)の基準を指針とした、より小型で、安全な病院設置型BNCTシステムを開発しました。
RFQリニアック
ターゲットシステム
照射室写真
進捗
当院に設置された直線加速器および中性子発生のためのターゲットシステムは、2016年に原子力規制委員会から使用許可をいただき、その後、物理特性試験、生物特性試験などの前臨床試験を完了しました。
そして、皮膚がん(悪性黒色腫もしくは血管肉腫)の患者さんを対象にして、国立がん研究センターと株式会社CICSが共同開発した加速器中性子捕捉治療装置「CICS-1」とステラファーマ株式会社が開発したBNCT用ホウ素薬剤「SPM-011」を用いたBNCTの第I相臨床試験を2019年11月に、また、血管肉腫を対象とした第II相臨床試験を2022年11月に開始しました。両試験とも既に患者登録は終了しています。 更に、2024年9月より、住友重機械工業株式会社が開発した[18F]FBPA合成装置「MPS200FBPA」を用いた[18F]FBPA PETを行った上で「CICS-1」、「SPM-011」によるBNCTを行う胸部固形がん(食道がん、非小細胞肺がん、乳がん、悪性軟部肉腫、悪性胸膜中皮腫、悪性末梢神経鞘腫瘍)を対象とした第I/II相臨床試験を行っています。
詳細は下記リンクをご確認ください。
https://www.ncc.go.jp/jp/ncch/division/clinical_trial/patient/to_patients/30/T5267.html
今後、装置の医薬品医療機器法(旧薬事法)承認に向けて臨床試験を進めてゆくと同時に、より優れた治療法となるように引き続き装置開発/臨床開発を行うことで、有効性、安全性を確保し、新しいがん治療法としてのBNCTの確立を目標に、開発を進めていきます。