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上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)を受けられる方へ
目次
- 上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)とは?
- このような方は胃カメラをご検討ください
- 胃カメラで発見できる主な病気
- 当院の検査方法:苦痛を最小限に抑え、高い診断精度を追求します
- 苦痛を軽減するための取り組み
- 検査の流れ(準備から検査後まで)
- 検査後の注意点と偶発症について
- 胃カメラ検査に関するよくあるご質問
- 中央病院 内視鏡科 消化管内視鏡を受診される皆様へ
上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)とは?
食道・胃・十二指腸を直接観察し、病気の早期発見を目指す検査
上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)は、食道がんや胃がんといった消化管がんの診断と治療の根幹をなす極めて重要な検査です。
当院では、先端に超小型の高性能カメラを搭載した内視鏡(スコープ)を用い、食道・胃・十二指腸の粘膜を隅々まで直接観察します。
当院が誇る新しい内視鏡システムでは、通常光での観察に加え、特殊な光を用いて血管や粘膜の微細な模様を強調する画像強調観察(NBIなど)や、病変を最大約125倍まで拡大して詳細に観察できる拡大内視鏡を駆使します。
これにより、通常の内視鏡では見分けることが困難な、ごく初期の小さながんや前がん病変(がんになる可能性のある状態)の発見を可能にしています。
さらに、人工知能(AI)を用いた診断支援システムの開発・導入にも積極的に取り組んでおり、より高精度な診断を追求し続けています。

このような方は胃カメラをご検討ください
以下のような症状でお困りの方は、上部消化管の疾患が疑われます。
国立がん研究センター中央病院では、こうした症状の原因を突き止め、より良い治療へと繋げるための精密検査を行っています。
- 胸やけ、呑酸(酸っぱいものがこみ上げる)が続く方
- みぞおちの痛み、胃もたれ、食欲不振が続く方
- 原因不明の体重減少がみられる方
- 食べ物が飲み込みにくい、つかえる感じがする方
- 黒い便(タール便)が出た、貧血を指摘された方
- 他院の検診や人間ドックで異常を指摘され、精密検査が必要な方
- 食道がん、胃がんの診断を受け、治療方針決定のための詳細な評価が必要な方
- がんの家族歴がある、ピロリ菌感染歴があるなど、ハイリスクとされる方
当院は、紹介状をお持ちの患者さんを中心に、より専門的な診断・治療を行っております。
胃カメラで発見できる主な病気
国立がん研究センター中央病院では、その豊富な経験と高度な技術により、下記をはじめとする多様な疾患を正確に診断し、よりよい治療へと繋げます。
食道の病気:食道がん、逆流性食道炎など
食道がん:早期発見と低侵襲治療の最前線
食道がんは、当院が最も力を入れている疾患領域の一つであり、その診断から治療に至るまで、世界をリードする診療体制を構築しています。
日本人に多い食道がんのリスクをご存知ですか?
日本人の食道がんの主な原因はアルコール(飲酒)とタバコ(喫煙)です。
特に、少量の飲酒で顔が赤くなる方は、発がん物質が体内に蓄積しやすく、食道がんの極めて高いリスク群です。
また、胸やけなどの症状がある逆流性食道炎を放置すると、胃酸で食道粘膜が変化し、そこから「腺がん」というタイプの食道がんが発生することもあります。
高い診断技術が、超早期がんを見つけ出す
初期の食道がんは自覚症状がなく、粘膜の色もほとんど変わらないため、発見が非常に困難です。
当院では、特殊な光(NBI)や拡大機能、ヨード染色などを駆使し、肉眼では見逃してしまうようなごくわずかな変化も捉えます。
特に、がんの栄養血管のパターンを詳細に分析することで、がんの存在診断だけでなく、その深さまでをも高精度に予測します。
これにより、次のステップである治療法を極めて正確に判断することができます。
体への負担を最小限に抑える内視鏡治療(ESD)
上記の精密診断で「ステージ0」の超早期がんと診断された場合、お腹や胸を切らずに、口からの内視鏡だけでがんを完全に切除する内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)が可能です。
この治療法は、食道を温存できるため、体への負担が非常に少なく、治療後の食事や生活の質(QOL)を高く保つことができます。
このESDは、当院が開発・発展を牽引してきた、世界に誇るべき治療技術です。
開発した施設だからこそ有する圧倒的な経験値と技術力で、他施設では治療困難とされた多くの難治例にも対応しています。

図1 内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD) がん情報サービス〇より引用
逆流性食道炎
胸やけの原因となる一般的な疾患ですが、長期化すると食道がんのリスクとなるバレット食道へ進展することがあり、専門的な経過観察が重要です。
胃の病気:胃がん、胃炎、胃潰瘍、胃ポリープなど
胃がん:ピロリ菌除菌後の“隠れたがん”まで見逃さない
胃がんは、ピロリ菌除菌の普及により減少傾向ですが、依然として日本人に多いがんです。
当院では、ピロリ菌感染の有無にかかわらず、あらゆるタイプの胃がんの発見に全力を注いでいます。
ピロリ菌除菌後も、定期検査が不可欠です
胃がんの最大の原因はピロリ菌感染ですが、「除菌すればもう安心」というわけではありません。
除菌後も胃がんのリスクは残ります。特に、除菌後に発生する胃がんは、正常な粘膜と見分けがつきにくく、非常に発見が難しいことが知られています。
当院では、豊富な経験を持つ専門医の眼と、高い診断技術で、こうした“隠れたがん”の発見に努めています。
最新技術が実現する高精度診断
特殊光(NBI)や拡大内視鏡、色素(インジゴカルミン)などを用いて、がんか否かの鑑別はもちろん、がんの悪性度や深さ、正確な広がりを診断します。
この精密診断が、患者さん一人ひとりにより良い治療法を選択するための重要な第一歩となります。
胃を温存する低侵襲治療「ESD」
早期胃がんと診断された場合、食道がんと同様に、内視鏡治療(ESD)によって胃を温存したまま根治を目指せます。
当院は、国内でも屈指のESD施行件数を誇り、大きな病変や技術的に難しい部位の病変など、高難度のESDにも豊富な経験を有しています。
胃炎、胃潰瘍
がんとの鑑別診断を正確に行うとともに、原因(ピロリ菌など)を特定し、適切な治療を提供します。
十二指腸の病気:十二指腸腫瘍、十二指腸潰瘍、十二指腸ポリープなど
十二指腸腫瘍:希少がんだからこそ専門施設での診断・治療が重要
十二指腸に発生するがんは比較的まれな「希少がん」ですが、だからこそ診断・治療には高度な専門性が求められます。
診断の難しい十二指腸の病気
十二指腸は壁が薄く、ヒダが深いため、観察自体に技術を要します。
特に、膵液や胆汁の出口である「十二指腸乳頭部」は、様々な種類の腫瘍が発生する複雑な部位です。
当院では、先端が横向きの特殊な内視鏡(側視鏡)や超音波内視鏡(EUS)なども駆使し、腫瘍の種類や深さを正確に診断します。
高い難度の内視鏡治療にも対応
早期の十二指腸がんであればESDによる治療が可能ですが、十二指腸の壁は非常に薄いため、穿孔(穴があく)のリスクが高く、内視鏡治療の中でも最も難易度の高い手技の一つです。
当院では、この高難度治療にも習熟した専門医が安全性を最優先に治療を行います。
また、外科手術が必要な場合でも、内視鏡科、外科、腫瘍内科が緊密に連携し、チームとしてより良い治療を提供します。
当院の検査方法:苦痛を最小限に抑え、高い診断精度を追求します
当院では、高い精密診断と、必要に応じたその場での処置・治療を可能にするため、原則として口から内視鏡を挿入する「経口内視鏡」を採用しています。
「口からの検査は苦しいのでは?」とご心配される方もいらっしゃるかもしれませんが、どうぞご安心ください。
当院では、ほとんどの患者さんに鎮静剤(眠くなるお薬)を使用し、ウトウトと眠っているようなリラックスした状態で検査を行います。
これにより、嘔吐反射などの苦痛をほとんど感じることなく、楽に検査を終えることができます。
鎮静剤の使用は、単に患者さんの負担を軽減するだけでなく、医師が検査に集中し、微細な病変も見逃さない環境を作ることで、より安全で確実な検査を実現するためにも非常に重要です。
何かご不安な点がございましたら、遠慮なく医師や看護師にご相談ください。
苦痛を軽減するための取り組み
眠っているようなリラックスした状態で検査が受けられる
国立がん研究センター中央病院では、「苦痛のない内視鏡検査」を基本方針としています。
静脈から鎮静剤を投与することで、不安や緊張を和らげ、うとうとと眠っているようなリラックスした状態で検査を受けていただく静脈内鎮静法を積極的に採用しています。
鎮静剤を使用するメリットと注意点
メリット
患者さんの苦痛をなくすだけでなく、体が動いてしまうことによる偶発症のリスクを低減し、医師が検査に集中できる環境を作ります。
これにより、微小ながん病変の見逃しを防ぎ、より安全で質の高い精密な検査を実現します。
人によって鎮静剤の効き具合は異なりますが、検査中の記憶は残りにくく、「気づいたら終わっていた」という感覚で受けることもあります。
注意点
鎮静剤の効果が完全に抜けるまで、検査後は院内のリカバリールームで30分程度お休みいただきます。
安全のため、検査当日はご自身での車・バイク・自転車の運転は固く禁止しております。
公共交通機関またはご家族の送迎でのご来院をお願いいたします。
検査の流れ(準備から検査後まで)
【検査前日】食事は20時頃までに済ませましょう
胃内を空にするため、前日の夕食は消化の良いものを夜8時(20時)頃までに済ませてください。
それ以降は絶食です。水やお茶など、糖分を含まない透明な水分は就寝まで摂取可能です。
【検査当日】食事はせずにご来院ください
検査当日は絶食です。起床後の水分摂取については、事前に看護師から指示がありますので、それに従ってください。
抗血栓薬(血液をさらさらにする薬剤), 糖尿病, 喘息, 高血圧などの常用薬については、事前に担当医の指示を必ず確認してください。
【検査中】検査時間は5~15分程度です
来院後、胃の泡を消す薬の内服などの前処置を行います。検査室にて、鎮静剤を使用する場合は点滴を開始します。
実際の検査時間は、観察のみであれば5~10分、精密検査では15~30分程度が目安です。高度な技術を持つ内視鏡専門医が迅速かつ丁寧に行います。
【検査後】鎮静剤を使用した場合はリカバリールームで休憩します
検査後は、鎮静剤の効果が覚めるまでリカバリールームでゆっくりお休みいただきます(約30分間)。
当日もしくは, 後日外来にて画像を提示しながら説明致します。
生検を行った場合は、病理診断の結果が出る約1~2週間後に、最終的な診断結果と今後の治療方針についてご説明します。
検査後の注意点と偶発症について
検査後の食事について
- 喉の麻酔が切れるまで、検査後約1時間は飲食できません。
- 1時間経過後、少量の水を飲んでむせないことを確認してから、食事を再開してください。
- 当日は消化の良い、胃に優しい食事を心がけてください。
万が一の偶発症と緊急時の対応
内視鏡検査は非常に安全ですが、出血や穿孔(消化管に穴があくこと)などの偶発症が数万件に1件程度の確率で起こり得ます。
国立がん研究センター中央病院では、こうした予期せぬ事態に対し、各診療科の専門家が連携し、迅速かつより良い対応ができる万全の緊急体制を整えています。
万が一、検査後に強い腹痛や吐血など異常を感じた場合は、直ちに当院へご連絡ください。
胃カメラ検査に関するよくあるご質問
Q. 検査費用はどのくらいかかりますか?
当院での検査は、原則として保険診療となります。
3割負担の場合、観察のみで5,000円~7,000円、組織検査(生検)を行うと10,000円~20,000円程度が目安となります。
これに診察料や薬剤費などが加わります。詳しくは会計窓口でお尋ねください。
Q. 組織を採る(生検)ことはありますか?痛みはありますか?
はい。がんや炎症が疑われる病変が見つかった場合、確定診断のために組織の一部を採取する「生検」を必ず行います。
これは、がん診療における最も重要なプロセスの一つです。消化管の粘膜には痛みを感じる神経がないため、生検の際に痛みを感じることはありませんのでご安心ください。
Q. 衛生管理は徹底されていますか?
はい。当院では、日本消化器内視鏡学会のガイドラインを遵守することはもちろん、がん専門病院として感染管理基準に基づき、内視鏡および関連器具の洗浄・消毒を徹底しています。
一検査ごとに専門のスタッフが専用の高度な洗浄消毒装置を用いて処理しており、感染リスクの心配は一切ありません。
Q. 検査後、車の運転はできますか?
鎮静剤を使用した方は、当日の車・バイク・自転車の運転は絶対にできません。
鎮静剤の影響下での運転は法律で禁じられており、重大な事故につながる危険性があります。必ず公共交通機関をご利用になるか、ご家族による送迎をお願いします。
中央病院 内視鏡科 消化管内視鏡を受診される皆様へ
国立がん研究センター中央病院 内視鏡科 消化管内視鏡は、消化器がんの診断と治療における日本のトップランナーとして、そして世界の標準治療を創り出してきたという誇りと責任感を持って、日々の診療に取り組んでいます。
「がん」という言葉は、誰にとっても重く、大きな不安を伴うものです。胃カメラと聞くと、それに加えて「苦しい検査」というイメージが先行し、検査を受けること自体に躊躇される方もいらっしゃるかもしれません。
私たちは、その両方の不安に正面から向き合います。高い技術で検査の苦痛を限りなくゼロに近づけ、同時に、がんの“芽”をいち早く見つけ出す超精密診断を追求します。たとえ病気が見つかったとしても、身体への負担が極めて少ない内視鏡治療で未来を切り拓ける可能性が、ここにはあります。
他院で診断や治療が難しいと言われた方も、セカンドオピニオンを希望される方も、決して諦めることなくご相談ください。私たちが最後の希望となれるよう、全力を尽くすことをお約束します。
メッセージ
国立がん研究センター中央病院 内視鏡科のページをご覧いただき、ありがとうございます。 「胃カメラはつらい、苦しいもの」というイメージをお持ちで、検査に不安を感じている方も少なくないと思います。しかし、私たちの施設では、鎮静剤を用いた「苦痛のない内視鏡検査」が標準です。豊富な経験を持つ専門医が、最新の医療機器を駆使し、リラックスした状態で安全かつ精密な検査を行いますので、どうぞご安心ください。
私たちの使命は、単に病気を発見することだけではありません。もし食道がんや胃がんが見つかったとしても、それが早期であれば、お身体への負担が極めて少ない内視鏡治療(ESD)で根治を目指すことができます。診断から治療まで、内視鏡医、外科医、腫瘍内科医、病理医など各分野のスペシャリストが連携する「チーム医療」で、あなたにとってより良い医療を途切れることなく提供できるのが、当院の最大の強みです。
検査に対する不安や疑問、症状に関するお悩みなど、どんな些細なことでも遠慮なく私たちにご相談ください。私たちは、患者さん一人ひとりと真摯に向き合い、信頼関係を築きながら、共に病気に立ち向かうパートナーでありたいと考えています。

内視鏡センター長 内視鏡科長 斎藤 豊
専門医・認定医資格など:
日本消化器内視鏡学会 専門医・指導医
日本消化器病学会 消化器病専門医・指導医
日本消化管学会 胃腸科専門医・指導医
日本カプセル内視鏡学会 指導医
日本内科学会 認定内科医
厚生労働省 臨床修練指導医(Certificate of Clinical Instructor)
ASGE(American Society for Gastrointestinal Endoscopy) FASGE(Fellow of the American Society for Gastrointestinal Endoscopy)