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研究紹介
更新日 : 2026年4月17日
国立がん研究センター中央病院 内視鏡科 消化管内視鏡では、国際的な消化器専門誌Gastroenterologyが推進する学術情報発信の取り組みに参画しています。
本プロジェクトは、同誌に掲載された注目論文を選定し、FacebookやInstagramなどのSNSを通じて、医師向けに情報発信を行う国際的な取り組みです。
Gastroenterology誌は、アジア地域において主要な医療機関・研究機関と連携し、新しい研究成果を広く共有することを目的として本プロジェクトを推進しています。
日本国内では内視鏡分野を代表する施設が選出されており、当科もその一員として参画しています。
当科では、関口医師、豊嶋医師が中心となり、同誌に掲載された論文の抽出および日本語での紹介を担当します。
日本語での論文紹介を行うことで、国内の医療従事者にとって、より理解しやすい形で最新の学術情報を共有することを目的としています。
論文紹介:【deTXIon Study】TXIとWLIのランダム化比較試験:MAPに有意差なしも平坦病変の拾い上げに有用性を示唆
論文名
The efficacy of texture and color enhancement imaging (TXI) observation in the detection of colorectal lesions: a multicenter, randomized controlled trial (deTXIon study)
著者名
Naoya Toyoshima, Taku Sakamoto, Kensuke Shinmura, Yutaka Saito, et al
掲載誌
Gastroenterology
DOI
10.1053/j.gastro.2025.03.007
掲載日
2025 Mar
概要
本研究は、Gastroenterology誌に掲載された、日本の8施設における多施設共同ランダム化比較試験(deTXIon Study)であり、大腸内視鏡検査におけるtexture and color enhancement imaging(TXI)観察の有効性を、通常光観察(WLI)と比較して検討した研究である。大腸病変、特に腫瘍性病変の検出能向上が内視鏡の質指標として重要であるが、TXIが従来観察法に対して優位性を有するかは十分に明らかでなかった。本研究では、この点を明らかにすることを目的に、検査あたりの平均腺腫検出数(MAP)を主要評価項目として評価された。
2023年3月から10月にかけて、40~80歳の患者956例が登録され、除外後の被験者を対象に解析が行われた。全例において大腸内視鏡を盲腸まで挿入後、TXIまたはWLIのいずれかにランダム割付された観察モードで評価が行われた。主要評価項目であるMAPは、TXI群1.4(SD 2.2)、WLI群1.5(SD 2.2)であり、両群間に有意差は認められなかった(差 -0.1、95%CI -0.4~0.2、P=0.409)。また、ADRもTXI群57.2%、WLI群56.0%と有意差を認めなかった(差1.25、95%CI -5.32~7.8、P=0.705)。一方で、副次評価項目では、ポリープ検出率(PDR)および平坦型ポリープ検出率(FDR)はTXI群で有意に高値を示し、鋸歯状病変検出率(SDR)もTXI群で高い傾向を認めたが有意差には至らなかった。
以上より、TXIは腺腫検出能においてWLIに対する明確な優越性は示されなかったものの、平坦型病変の検出においては有用である可能性が示唆された。高性能内視鏡機器が普及した環境下では通常光観察自体の診断能が向上しており、いわゆる天井効果によりTXIの追加的効果が限定的となった可能性が考えられる。したがって、TXIは特に平坦病変の拾い上げ補助として臨床的意義を有する可能性があるが、その有効性は使用環境やベースラインの検出能に依存することが示唆される。(豊嶋)
参考情報
2025年7月25日 プレスリリース
『大腸内視鏡検査の新規観察法の有効性を前向き多施設共同ランダム化比較試験で検証「見逃しがん」のリスクとなる平坦型病変の発見率改善に期待』
論文紹介:内視鏡医の大腸腺腫検出率と同時内視鏡における大腸がん検出率との相関:米国173万件の大規模データに基づく検討
論文名
Association Between Adenoma Detection Rate and Prevalent Colorectal Cancer Detection Rate in a National Colonoscopy Registry
著者名
Dominitz JA, Ladabaum U, Holub JL, Issaka RB, Ko CW, Robertson DJ.
掲載誌
Gastroenterology
DOI
10.1053/j.gastro.2025.06.009
掲載日
2025 Dec
概要
本研究は、大腸内視鏡検査における内視鏡医の大腸腺腫検出率(adenoma detection rate:ADR)と同検査時の大腸がん(CRC)検出率との関連を、大規模データベースを用いて検討した米国の横断研究である。ADRは内視鏡後大腸がんのリスクと関連することが知られているが、その機序として既存CRCの見逃しか前がん病変の見逃しかは明らかでない。本研究では、この点の解明を試みるべく、内視鏡検査時のADRと有病CRC検出率との関連が評価された。
2019~2022年の米国GI Quality Improvement Consortiumデータを用い、683施設・3567名の内視鏡医による173万件以上の大腸内視鏡検査が解析された。CRC検出率は、スクリーニング内視鏡で0.3%、便潜血検査陽性に対する精検内視鏡で1.5%であった。内視鏡医のADRが高いほどCRC検出率は上昇し、ADR五分位の比較では、CRC検出数(10,000件あたり)がスクリーニング内視鏡で26.6(95%信頼区間[CI]24.4–27.9)から33.1(95%CI 29.7–33.7)、精検内視鏡で107.8(95%CI 96.2–129.4)から164.7(95%CI 140.8–188.6)へ増加した。多変量解析では、ADR最下位五分位を基準とした最上位五分位のCRC検出オッズ比は、スクリーニング内視鏡で1.27(95%CI 1.14–1.41)、精検内視鏡で1.50(95%CI 1.16–1.93)であった。大腸鋸歯状病変のsessile serrated lesion検出率(SSLDR)を考慮した解析では、高ADRかつ高SSLDRの内視鏡医と比較して、ADRが低い内視鏡医ではSSLDRの高低にかかわらずCRC検出オッズ比は低値であり(高SSLDR:0.87[95%CI 0.80–0.96]、低SSLDR:0.92[95%CI 0.85–0.98])、一方で高ADRかつ低SSLDRの内視鏡医では同等であった。
以上より、ADRは前がん病変の検出・切除のみならず、有病CRCの検出能も反映する指標であることが示唆される。低ADRの内視鏡医では既存CRCの見逃しリスクが高く、それが内視鏡後大腸がんの一因となっている可能性が示された。(関口)