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国立がん研究センター 中央病院

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高齢者の肺がん手術について

ここでは高齢者の患者さんが肺がんと診断された場合の治療方針(特に手術)について解説します。

肺がん手術を受ける患者さんの年齢について

肺がん登録合同委員会(外部サイトへリンクします)では我が国で行われた肺がん症例の登録を行っています。1994年・1999年・2004年・2010年度に行われた外科症例の解析では肺がん手術を受ける患者さんの平均年齢は次第に高くなっており、2010年度調査では平均年齢は68.3歳となっております。また手術を受けた患者さんに占める80歳を超える患者さんの割合は10.5%となっており、肺がん手術を受ける患者さんの10人に一人は80歳を超える患者さんが占めています。80歳を超える患者さんの割合は増加傾向です。

調査年度 1994年度 1999年度 2004年度 2010年度
症例数(例) 7,238 13,344 11,663 18,973
平均年齢(歳) 64.5 65.8 66.7 68.3
80歳を超える患者割合(%) 3.1 4.6 6.0 10.5
 

平均寿命・平均余命・健康寿命について

平成30年簡易生命表によると、男の平均寿命は 81.25 年、女の平均寿命は 87.32 年となっています。そのため80歳を超える患者さんが手術を受けること自体は珍しくない状況です。


平成30年簡易生命表

平均寿命の年次推移男性女性
平成2年 75.92歳 81.9歳
平成12年 77.72歳 84.6歳
平成22年 79.55歳 86.3歳
平成27年 80.75歳 86.99歳
平成28年 80.98歳 87.14歳
平成30年 81.25歳 87.32歳
 

男性の平均寿命が81歳であるため、現在80歳の方はあと1年しか寿命がないかというとそうではありません。この場合は平均余命を考慮するのがよいでしょう。

主な年齢の平均余命

現在の年齢男性女性
70歳 15.84年 20.1年
75歳 12.29年 15.86年
80歳 9.06年 11.91年
85歳 6.35年 8.44年
90歳 4.33年 5.66年
 

平均余命は、現在の年齢からあと何年生きられるかを示しています。すなわち現在80歳の男性はあと9年寿命があることになります。もちろんこの値は期待値であり、すべての方に当てはまるわけではありません。しかしながら、85歳の男性の場合、平均余命は6年、85歳の女性では8年であり、それぞれ91歳・93歳まで寿命がある計算となります。

一方、健康寿命という値があります。健康寿命は「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」と定義されており、平成28年時点で男性が72.14年、女性が74.79年となっています。平均寿命と健康寿命の差(男性で8.84年、女性で12.35年)は日常生活に制限のある「健康ではない期間」を意味します。

がん情報サービスには「年齢・全身状態別余命データ」(がん情報サービスにリンクします。)としてさらに詳しく解説されています。肺がんの治療を受けるに際して、「肺がんがなかった場合」にどのくらいの寿命が見込めるかを想定しておくことが大切です。

高齢者の肺がん手術に際して考慮されること

  1. 手術を行うかどうかは年齢だけでなく、心肺機能や採血所見を総合的に判断し決定されます。すなわち高齢というだけで手術ができないということはありません。普段元気で自立している高齢者は、他の患者さんと同じ治療を受けることも可能でしょう。

  2. 肺がんの標準手術は肺葉切除ですが、高齢者の場合には縮小手術(区域切除や楔状切除(部分切除)が選択される場合もあります。肺がん手術の根治性を保ちつつ、手術後の肺活量や体力の低下を最小限にとどめることが必要な場合は治療方針についてよく相談のうえ術式を決定することが重要です。

また、以下は肺がんに限らず高齢者のがん手術に際して考慮される事項となります。

  1. 高齢者の一人暮らしが増加しています。肺がん手術を受ける場合は手術後の生活環境の調整をあらかじめ相談しておくことが望ましいです。介護保険の申請などを考慮します。またかかりつけ医との連携を密にとります。

  2. 周りの家族の方のサポートも重要です。しかしながら、高齢の老夫婦の二人暮らしでは旦那さんが患者の場合、すべて奥さんが面倒を見ることになります。また普段お仕事をされている息子さんは患者さんの面倒を見ることが出来ず、奥さんに負担が集中する場合もあります。手術を受けた高齢患者さんの世話が、ある特定の家族に集中しないようにバランスをとることも重要です。

その他

国立がん研究センター中央病院では、ご本人やご家族が、がんの治療を受けるうえでの不安や悩み、療養生活や仕事のことについて気軽に相談していただけるよう「相談支援センター」を設置し、医療ソーシャルワーカーが課題解決のお手伝いをさせていただいております。

日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)では「高齢者肺癌手術例に対するADLの転帰を評価する前向き観察研究」(外部サイトへリンクします)を行っています。本研究では75 歳以上の臨床病期 0 期-III 期非小細胞肺がんに対して完全切除が施行された患者さんを対象に、術後の日常生活動作(Activities of daily living:ADL)が損なわれる患者さんの割合を前向きに調査します。また、ADL が高度 に低下する患者さんを予め予測できるか検討します。