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CAR-T細胞療法のご案内

更新日 : 2025年10月

CAR-T細胞療法とは

CAR-T細胞療法は、患者さん自身のT細胞に遺伝子改変を加え、がん細胞を攻撃する能力を高めたうえで体内に戻す「細胞免疫療法」です。

既存の化学療法により病勢制御が難しい、再発/治療抵抗性の悪性リンパ腫に対する有効性が報告されています。
かつては、複数種類の抗がん剤治療の後に行われていましたが、現在では、初回治療後に再発した時点で実施されるようになっています。

当院では、多くのリンパ腫患者さんに迅速にCAR-T細胞療法を受けていただけるよう様々な職種と連携して体制を整備しております。

国立がん研究センター中央病院で実施可能なCAR-T製剤

現在、当院では以下の製剤を用いたCAR-T療法を実施しています。

  • アキシカブタゲン シロルユーセル(axi-cel, イエスカルタ®)
  • リソカブタゲン マラルユーセル(liso-cel, ブレヤンジ®)
  • チサゲンレクルユーセル(tisa-cel, キムリア®)

CAR-T細胞療法の対象疾患

当院におけるCAR-T細胞療法の対象は、保険適応に準じて以下の疾患となります。

1)再発・治療抵抗性 大細胞型B細胞リンパ腫
(びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫、高悪性度B細胞リンパ腫、形質転換リンパ腫を含む)

2)再発・治療抵抗性 濾胞性リンパ腫
その他の血液がんについては治験・臨床研究での提供を含め、適応に応じて検討いたします。

診療の流れ

CAR-T療法の概略

1.紹介・受診

  • 主治医の先生からのご紹介を受けて適応を評価します。以下のリンクから、紹介状の送付をお願いいたします。
  • お送りいただいた内容を確認の上、3営業日以内に予約日を返信いたします。
  • 病状によっては、CAR-T細胞の適応とならない場合がございます。

2.リンパ球採取(アフェレーシス)

  • 専用機器を用いてT細胞を採取します。(4-5時間程度)

3.製造

  • 採取した細胞は製造施設に送られ、CAR遺伝子導入・培養を経て製剤が完成します。(約4~6週間)

4.ブリッジング治療

  • 病状に応じて、CAR-T製造期間中に病状が進行しないよう、化学療法や放射線治療を行います。

5.リンパ球除去化学療法

  • CAR-T細胞を投与する前に抗がん剤(フルダラビン+シクロホスファミド)による前処置を行います。
    CAR-T01.png

6.CAR-T細胞の投与

  • 完成したCAR-T細胞を体内に投与します。
  • 投与後はCAR-T細胞が、がん細胞と戦うことで様々な免疫反応(サイトカイン放出症候群[CRS]や神経毒性[ICANS])を引き起こすため、慎重に経過を観察します。
  • 一般的に約1ヶ月程度の入院が必要となります。

7.退院後フォローアップ

  • 治療効果判定と長期的な副作用モニタリングを行います。遠方の患者さんの場合は紹介元の医療機関と協力しながら経過観察を行います。

CAR-T細胞療法の副作用について

主な副作用としては、以下のものが挙げられます。

  • 発熱、血圧低下、酸素の低下などを伴うサイトカイン放出症候群(CRS)
  • 言葉がでてこない,日付がわからないなどの症状を伴う神経毒性(ICANS)
    (重症例では意識障害や痙攣をおこすこともあります)
  • 血球減少(白血球、赤血球、血小板の減少)
  • 感染症
副作用の程度は患者さんによって異なりますので、病状に応じて適切な対応を行います。

CAR-T細胞療法を受けるには

医療機関の先生方からのご紹介をお願いしております。
以下のリンクから必要書類をご確認の上、FAXで送信ください。

注)患者さん・ご家族からの直接のお問い合わせには対応いたしかねます。まずは主治医にご相談ください。

さいごに

CAR-T細胞療法は既存の抗がん剤で病気の制御が難しいリンパ腫患者さんにおいて治癒を目指せる可能性のある治療です。
一方で、副作用や治療制約もあります。
国立がん研究センター中央病院では国内外の最新エビデンスをもとに、安全で質の高いCAR-T療法を提供できるよう努めています。